小児アレルギー科医の視線

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レディー・ガガも苦しむ「線維筋痛症」

2017年10月06日 06時03分37秒 | アレルギー性鼻炎
 「線維筋痛症」という疾患、医師にとっても捉えにくい概念です。
 “痛み”という症状は主観的なので科学的に評価しにくい減少だからでしょうか。

■ 「線維筋痛症」(疼痛.com
■ 「線維筋痛症とは」(線維筋痛症友の会
■ 「線維筋痛症」(リウマチ情報センター

 HPVワクチンの副反応と共通している印象もあります。
 なぜかというと、「日本線維筋痛症学会」の理事長西岡久寿樹氏は、HPVワクチンの副反応を「HANS症候群」として定義したものの、その基準があまりにも非科学的なので医学界では認められていないという現実があるからです。

 漢方治療が効果があるという話も耳にしますね。

■ レディー・ガガも苦しむ線維筋痛症の実態
提供元:HealthDay News:2017/10/06
 先日、米国の人気歌手レディー・ガガが線維筋痛症に苦しんできたことをソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で明らかにした。線維筋痛症に伴う慢性疼痛などの症状を理由に、予定されていた欧州ツアーの延期も決定されている。今回のレディー・ガガのニュースをきっかけに、まだ十分解明されていないこの疾患への関心が高まっている。
 線維筋痛症を発症すると、身体の広い範囲で疼痛が持続し、疲労や睡眠の質の低下、記憶力や集中力の低下などがもたらされることもある。また、光や音への過敏性や不安、抑うつなどの精神症状を伴う場合もある。米ミシガン大学麻酔科学・リウマチ学・精神科学教授のDaniel Clauw氏によると、線維筋痛症でみられる疼痛や障害は、他のどの慢性疼痛を伴う疾患よりも深刻であることが多いという。
 これまで、線維筋痛症に関する研究を主導した経験を持つ米マサチューセッツ総合病院統合疼痛神経画像センターのMarco Loggia氏も、「研究を通じて出会った患者のほとんどが、この疾患によって大きな打撃を受けている。重い症状のため、仕事をしたり、通常の社会生活を送ったりすることが難しい患者もいた」と振り返る。
 線維筋痛症はまれな疾患ではない。米国の非営利団体である全米線維筋痛症・慢性疼痛協会(NFMCPA)によると、この疾患の有病率は世界で4%と推定されており、米国には500万~1000万人の患者がいるという。患者の約80%が女性で、小児期に発症することもあるが、中年期に診断される場合が多い。
 その原因について、米国立関節炎・骨格筋・皮膚疾患研究所は「現時点では明確には分かっていない」としている。ただ、一部の専門家は、線維筋痛症の発症には交通事故などの外傷を伴う出来事や複数回にわたる負傷の経験のほか、中枢神経系の障害、遺伝的素因などが関与しているのではないかとの見方を示している。
 さらにLoggia氏らによると、米国とドイツの研究グループが最近、一部の線維筋痛症患者では末梢の小径神経線維に異常があることが示唆されたと報告している。また同氏の研究グループも、線維筋痛症患者の多くが苦しんでいる慢性背部痛には脳の炎症が関与している可能性があることを突き止めたという。
 ただ、原因がはっきりとしていないために「線維筋痛症の痛みは気のせいだ」と信じている人も多いのが現状だ。Loggia氏は「以前から線維筋痛症患者は疑念や偏見の目を向けられがちで、患者のケアに当たるべき立場にある医師でさえ、そのような態度をとる者がいた。現在も『線維筋痛症患者の痛みは気のせいで、本当の痛みではない』とみなされることは珍しくない」と指摘する。しかし、MRIなどの脳画像検査による研究では、線維筋痛症患者が経験する痛みへの過敏性は実際に存在することが確認されているという。
 線維筋痛症に対する治療法としては、疼痛コントロールを目的にオピオイドによる治療やヨガ、認知行動療法(CBT)などが行われているが、いずれも治癒を導くことはほとんどない。Clauw氏は「線維筋痛症患者が今、一番必要としているのは、より効果的な治療法だ」と強調する。
 今回のレディー・ガガのニュースを受け、Loggia氏は「線維筋痛症患者の多くは診断されないまま症状に苦しんでいるが、レディー・ガガの場合、若いうちに診断されたのは幸いだった。彼女はレディー・ガガだから線維筋痛症であることを早期に認識してもらえ、より適切な治療を受けることができた。しかし、彼女とは置かれた環境が異なる多くの患者にとっては、診察に応じ、真剣に対処してくれる医師を見つけることさえ困難なのが現状だろう」とコメントしている。


<追記>

■ ガガさんの「線維筋痛症」 女性に多く完璧主義は注意
2017/10/20:日経Gooday
 「骨が裂けるような」痛みが特徴の線維筋痛症。実は日本でも潜在的に200万人の患者がいるといわれています
 米国の人気歌手、レディー・ガガさんが活動休止を発表し、「線維筋痛症と闘病中だ」と明かした。日本でも潜在的に200万人の患者がいるといわれながら、あまり知られていない線維筋痛症とは、一体どんな病気なのだろうか? 国際医療福祉大学教授で山王病院心療内科部長の村上正人さんに聞いた。

「骨が裂けるような」激しい全身の痛みが特徴
 線維筋痛症とは、全身の激しい痛みが特徴的な病気だ。痛みは急に発症し、慢性化する。患者の痛みの訴えは「筋肉がひきつれるような」「骨が裂けるような」「全身をガラスの破片が巡っているような」などと表現され、重症な場合には、「痛みで失神してしまう」「布団が背中に当たるのが痛くて、1年も横になって眠れていない」「ものを飲み込むと喉が痛くて食事がとれない」といったケースもあるそうだ。
 「筋肉は骨膜という骨の膜についていて、関節周辺の筋肉が収縮するたびに骨膜を引っ張るため、骨が裂けるような激しい痛みを感じるのです。健康な人でも似たような痛みを一時的に経験することは珍しくありませんが、それが何年も回復せず、全身に起こるのですから、非常につらい病気です」(村上さん)
 骨格筋だけでなく、内臓なども含めて、深いレベルまで全身の筋肉がけいれんのようにひきつれるため、胃腸障害や月経困難症、排尿障害、血流不全など全身に不調をきたす。痛み以外にも、慢性的な疲労感、眠れない、しびれ、こわばり、口の渇き、頭痛、光がまぶしいなど多彩な症状が見られ、うつ病、強迫性障害など精神疾患の合併も少なくない。
 男女比は1対5~8、年齢では30~50代と中高年の女性に多く、国内でも潜在的に200万人の患者がいると推定されているが、そのうち医療機関にかかっているのは5万人程度だという。治療を受けている人が少ない背景には、セルフケアでなんとか付き合っている軽症の人も多いことや、多くの科に関わる多彩な症状が表れることからなかなか診断にたどりつかない、治療がうまくいかずに病院から遠ざかる人もいる、といったことが考えられる。
 他の病気との鑑別という意味でも、各科に横断的な知識を踏まえて総合的な診断が求められる。一般的に次のような米国リウマチ学会の線維筋痛症分類基準(1990年)に沿って診断されるが、2010年にも新しい予備診断基準が発表され両方の基準を参考に診断されている。

・広範囲の痛みが3カ月以上続く
・18カ所の圧痛点(図)を指で押すと11カ所以上で激痛が走る
・原因となるほかの病気が認められない

(c)alila-123rf

■痛み信号を増幅する脳のシステム異常
 線維筋痛症の原因はまだはっきりとは解明されていないが、脳の痛みを感じるシステムに何らかの異常があるのではないかと考えられている。
 「痛みに対する脳の過敏性があり、その背景に中枢神経系の神経細胞の炎症があるのではないかという説が有力です」(村上さん)
 線維筋痛症の患者には、アロデニアと呼ばれる、触覚が痛覚に変わる現象が見られることがあり、ちょっとした接触、服のこすれ、気圧や気温、音や光などの外的刺激を激痛と感じてしまう。このように痛み刺激に過敏になるだけでなく、通常では局所に限定されるはずの痛みが全身に広がる。ということは、「痛み刺激を繰り返し体験することで脳の中枢の炎症が慢性化して、入力された痛みの信号を増幅させるような指令が出されている可能性がある」と村上さんは言う。

■発症や予後には心のクセが関係する?
 線維筋痛症の発症には、2つの段階があると考えられている。多くの場合、最初の段階として、何らかの身体的外傷(手術、事故などの外傷、オーバーワークによる肉体的負荷など)や心的外傷(虐待やショックな体験によるトラウマなど)を負っているという。
 2つ目の段階が、過去の外傷からある程度経過した後に、新たな外傷やストレスが加わることだ。それをきっかけに発症することが多く、背景には、自分の体に負荷をかけ続ける行動パターンになりやすい「過剰な几帳面さ」「強迫性」「完璧性」といった気質が関係しているという。
 「だからこの病気は活動性の低い人には起こりません。患者には共通して、厳しい世界で完全性を求めたり、運動などでも徹底的に鍛えるといった、完璧主義で活動性が高い一面があります」(村上さん)

■心の持ち方を含めた多面的アプローチが重要
 治療は対症療法で、まずは症状に合わせた薬によって痛みを和らげる。神経障害性疼痛(とうつう)緩和薬(プレガバリン)、抗うつ薬、抗けいれん薬などが使われる。
 「一時期に比べれば、何年も病名が分からず苦しむというケースは減って、早めに治療が受けられるようになってきました。しかし、薬物療法の効果は病気全体の6割くらいまで。残りの4割を埋めるには生活全般にわたる改善が関わってきます」(村上さん)
 薬以外には、運動療法や認知行動療法、リハビリテーションなどが行われる。個人個人に合わせた多面的なアプローチが必要だ。
 「運動が効果的と聞くと、休まず徹底的に頑張ってしまう人もいます。症状や背景を総合的に理解して、根本的な心の持ち方から見直していくことが大切です」(村上さん)
 先述のように、痛みの刺激が慢性的に繰り返し脳に伝達されることで、中枢の神経細胞に炎症が起きると考えると、一度痛みが出たときに放置せずしっかりケアをして、悪循環を断ち切ることが大切になる。ケアをしないまま無理に負荷をかけ続けてしまうと、脳に痛み刺激を与え続けることになり、発症につながる。
 ガガさんは病気の公表に当たって「病気の啓発と患者同士の出会いにつながることを願っている」と述べたという。自分はこの病気ではないから関係ないと思っているあなたの中にも、頑張り過ぎる一面や、「完璧にしなければ」「もっと努力しなくちゃ」といった行動上の特性はないだろうか。
 線維筋痛症という病気から、オーバーワーク、オーバートレーニングの危険性を学ぶことができる。ときには立ち止まって自分をいたわることも大切なことだ。特に長引く痛みがあったら要注意。痛みが3カ月以上続く、徐々に強くなる、全身に広がる、一般的な鎮痛薬が効かない、といったことがあったら、早めに受診しよう。線維筋痛症を診療している医師は日本線維筋痛症学会のホームページから検索できる。



■ 線維筋痛症GLが4年ぶりに改訂 〜新たに抗うつ薬(SNRI)、弱オピオイド薬を強く推奨
2017年10月26日:メディカル・トリビューン
 線維筋痛症診療ガイドライン(GL)が4年ぶりに改訂、2017年版が刊行された。2014年に日本医療機能評価機構の医療情報サービス(Minds)が国際的な動向に歩調を合わせた形でGLの定義を変更したことや、臨床で使用できる薬剤が拡大したことなどに対応した。
・新たな治療薬としてセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)デュロキセチン、三環系抗うつ薬アミトリプチリンが最も推奨度の高い「実施する」とされた。
・弱オピオイド薬のトラマドール、トラマドール-アセトアミノフェン配合薬も「実施する」と記載された
ーことなどが主な変更点だ。

アルゴリズムにはEULAR2016を採用
 第9回日本線維筋痛症学会(10月14~15日)で桑名市総合医療センター(三重県)リウマチ膠原病内科の松本美富士氏が「線維筋痛症診療ガイドライン2017」の内容を紹介した。同GLは、MindsのGL作成の手引きに従いGRADE Systemを用い、AGREEⅡによる評価を考慮して国際標準に耐えうるものとして作成された。同学会が日本医療研究開発機構(AMED)研究班と合同で作業を進め、市民・患者代表も参加した。47のクリニカル・クエスチョン(CQ)の他に、疾患の解説とトピックス、診療上必要な資料集も盛り込み、線維筋痛症の教科書として活用できるようにしてある。疾患概念そのものの理解が必ずしも進んでいない現状を配慮し、GLのCQとしては珍しく疾患概念が掲載された。
 診断には、米国リウマチ学会(ACR)の分類基準(1990年)、ACRの診断予備基準(2010年)、Wolfeらの改訂基準(2011年および2016年)が挙げられ、日本人での有用度も高いとされた。新しい基準ほど簡便で使いやすいものの、疼痛よりも随伴症状に重点を置いてあるため、診断には慢性疼痛や精神疾患との鑑別が必要になることに注意が必要だという。
 診断と治療のアルゴリズムに関しては欧州リウマチ学会(EULAR)が2016年に公表したGLのものを採用。治療に関してはまず、患者・家族への教育、情報提供を行い効果が見られなかったときに物理療法を行い、さらに効果不十分なときには個別化治療を追加する流れになっている(図)。

図. 診断と治療のアルゴリズム
1710067_fig1.jpg
(EULARガイドライン2016)

GL普及で均てん化した地域完結型医療の実現に
 疼痛に対する薬物療法では、前回GLと同様、プレガバリンが「実施する」、ガバペンチンは2番目に高い推奨度の「提案する」とされた。抗うつ薬では、アミトリプチリン、デュロキセチンが新たに「実施する」とされたが、ミルナシプランはエビデンスの強さが最も高い「A」だが、わが国では保険適応がないため「提案する」とされた(表)。

表. 薬物療法、非薬物療法のエビデンスと推奨度

薬物療法
1710067_tab1.jpg

非薬物療法
1710067_tab2.jpg
(図、表とも松本美富士氏提供)

 非薬物療法で「実施する」とされたのは、認知行動療法と運動療法。「提案する」には、鍼灸と「WAON(和温)療法」が含まれた。
 線維筋痛症を診療できる医療機関はまだ限定的だが、GLを作成した日本線維筋痛症学会は200万人とされる患者に対して、均てん化した地域完結型医療を実現するために同GLの普及を図りたいとしている。
 松本氏は「数年ごとの改訂のために常設委員会の設置も検討していく。また、GL作成メンバーが固定化してきているので、若い学会員の参加を促していきたい」と今後の課題を挙げた。
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