喫煙の害は、本人にとどまらない社会悪です。
「これくらいは・・・」という考え方も甘い、健康被害が否定できないという報告を紹介します。
結論:「1日1本のみの喫煙でも、冠動脈疾患や脳卒中のリスクが予想以上に高い(1日20本喫煙による増加リスクの約半分)。心血管疾患に関して安全なレベルの喫煙は存在しないので、喫煙者はこれらの疾患のリスクを有意に減らすためには喫煙本数を減らすのではなくて、喫煙を止めるべきである」
「電子タバコも安全とは言えない」
※ 下線は私が引きました。
■ 安全なレベルの喫煙は存在しない
(2018年02月05日:メディカル・トリビューン)
◇ 研究の背景:喫煙本数による冠動脈疾患・脳卒中リスクの定量化
全世界で約10億人の成人が喫煙している。英国では喫煙者の26%が禁煙ではなくて喫煙量を減らしたいと希望し、2013年と2014年に喫煙者の40〜41%が以前より喫煙量を減らしたという報告がなされた。2009~14年に全喫煙者に占める1日にたばこを1〜5本しか喫煙しない人の割合が18.2%から23.6%に増加した。米国でも2005~15年に全喫煙者に占める1日の喫煙量が10本未満の人の割合が16%から27%に増加した(BMJ 2018; 360: j5855)。
一般的にニコチンやタール含有量の少ないたばこ(軽いたばこ)では、喫煙本数が少なければ比較的安全であると信じられているが、実際は間違っている。米国の成人2万4,658人の10%が「軽いたばこは有害ではない」と答え、軽いたばこの喫煙者のうち「喫煙習慣が多くの害に関連している」と考えていたのはわずか35%であった。
わが国でも「喫煙量を減らした量に比例して害が減る」と考える喫煙者が多く、「喫煙本数を減らす」、「軽いたばこに変更する」、最近では「加熱式たばこに変更する」ことで喫煙による害を減らそうとするケースがよく見受けられる。実際、肺がんでは喫煙本数を1日20本から1本に減らすことでリスクは5%に減少する(Environ Health Perspect 2011; 119: 1616-1621)と報告されている(それでもかなりリスクが高い)。しかし、これまでの研究で、喫煙本数と心血管疾患の関係は非線形であり、喫煙本数を減らしても減らした量に比例してリスクは減らないことが示されている(前掲論文、BMJ 2004; 328: 980-983、Prog Cardiovasc Dis 2003; 46: 31-38)。
今回取り上げた論文では、1日1〜5本の少ない喫煙本数における冠動脈疾患と脳卒中のリスクを定量化するために喫煙量と心血管疾患の関連を検討した(BMJ 2018; 360; j5855)。
◇ 研究のポイント:1日1本のみの喫煙でも、冠動脈疾患や脳卒中のリスクが予想以上に高い
1946〜2015年5月にMedlineに登録されたイベント数が50以上のコホート研究を検索し、141件のコホート研究を含む55報についてシステマチックレビューとメタ解析を行った。
その結果、喫煙未経験者に対する冠動脈疾患の相対リスク(RR)は、男性では1日1本で1.48倍、1日20本で2.04倍〔交絡因子調整後のRR(aRR)1.74倍、 2.27倍〕。女性では1日1本で1.57倍、1日20本で2.84倍(同2.19倍、 3.95倍)であった。1日20本の喫煙によって増加するリスクに対する1日1本の喫煙によって増加するリスクの割合(過剰相対リスク)は、男性で46%(調整後過剰相対リスク53%)、女性で31%(同38%)であった(図1)。
図1. 少量の喫煙(1日1本・5本)による冠動脈疾患および脳卒中リスクの増加( 141件のコホート研究を対象としたメタ解析)
(BMJ 2018; 360; j3984)
喫煙未経験者に対する脳卒中のRRは、男性では1日1本で1.25倍、1日20本で1.64倍(aRR 1.30倍、1.56倍)、女性ではそれぞれ1.31倍、2.16倍(同1.46倍、2.42倍)であった。1日20本の喫煙によって増加するリスクに対する1日1本の喫煙によって増加するリスクの割合(過剰相対リスク)は、男性で41%(調整後過剰相対リスク64%)、女性で34%(同36%)であった(図1)。
結論として、1日1本のみの喫煙でも、冠動脈疾患や脳卒中のリスクが予想以上に高い(1日20本喫煙による増加リスクの約半分)という結果となった。心血管疾患に関して安全なレベルの喫煙は存在しないので、喫煙者はこれらの疾患のリスクを有意に減らすためには喫煙本数を減らすのではなくて、喫煙を止めるべきである。
◇ 私の考察:健康のためには禁煙は必須
1.1日1箱(20本)の喫煙に比べて1日1本の喫煙では脳卒中リスクは半減するのみ
前述の通り、肺がんでは喫煙量を減らした比率に応じてリスクが減る(喫煙量を1日20本から1本にすればリスクは5%に減少)ことが報告されている(図2)。同様に心血管疾患でも、喫煙量を1日20本から1本に減らすと心臓発作や脳卒中リスクが5%(20分の1)に減ると考えがちだが、今回のメタ解析では1日1本では20本に比べてリスクの増加が半減するだけであることが示された。
図2. 喫煙によるPM2.5曝露量および喫煙本数と肺がん死亡率、虚血性心疾患・ 心血管疾患・心肺死亡率の相対リスク
(Environ Health Perspect 2011; 119: 1616-1621)
また過去には、たばこ煙曝露量と虚血性心疾患の用量反応関係は線形ではないと報告されており(図2、3)、今回、冠動脈疾患とともに脳卒中でも同様の結果が示された。
図3. たばこ煙曝露と虚血性心疾患の用量反応関係
(Prog Cardiovasc Dis 2003; 46: 31-38、BMJ 2004; 328: 980-983、)
多くの喫煙者は、軽いたばこに変更する、喫煙本数を減らすことでたばこの害を減らせると信じているようだが、禁煙を推奨する心血管疾患領域の専門家の間では軽いたばこへの変更や喫煙本数の減少は、喫煙者が期待しているほどのリスク軽減にならないと考えられてきたことが、さらに確実になった。1日1本のたばこでも冠動脈疾患と脳卒中の発症リスクが非常に高くなることを喫煙者に理解してもらう必要がある。
2.加熱式たばこのharm reductionは証明されていない
喫煙量をわずかに減らしても有意義な健康上の利益はもたらされず、一方でたばこと電子たばこ(わが国ではニコチン入りの電子たばこは発売されていない)あるいは加熱式たばこの二重使用は心血管リスクを上昇させる。「harm reduction」というキーワードを使って加熱式たばこの販売を促進すべきではない。さらに"電子たばこは禁煙率を低下させる"と主張し、"より安全である"と銘打ったたばこ製品(加熱式たばこやニコチン入りの電子たばこ)のマーケティング手法は、若い世代をニコチン依存症に導いてしまう可能性が高い。
安全な喫煙レベルというものは存在せず、リスク低減商品と銘打った加熱式たばこに変更すれば長期的な冠動脈疾患や脳卒中の健康被害のリスクがほとんどなくなる、または完全になくなると勘違いすべきではない。
わが国ではニコチン入りの電子たばこの発売は認可されていないため、加熱式たばこが相次いで発売されている。すなわち、わが国は加熱式たばこの実験場となっていると考えられる。米国では米食品医薬品局(FDA)が加熱式たばこを認可しておらず、FDA科学諮問委員会は、IQOSが紙巻たばこ喫煙より害が少ないというフィリップモリスの主張を5対4で否定した。
3.禁煙のポイント
正しい禁煙法と禁煙でやってはいけないことを以下に示す。
<正しい禁煙方法>
① 期日を決めて一気に禁煙を実行する。完全に禁煙する
② ある程度の禁断症状(ニコチン離脱症状)を覚悟する
③ 吸いやすい「行動」をやめる
④ 吸いやすい「環境」をつくらない
⑤ 吸いたくなったら「代わりの行動」を取る
⑥ 自力でできない場合は禁煙補助薬を使用(禁煙外来)
<禁煙でやってはいけないこと>
① だんだんと減らそうとすること
② 軽いたばこに変えること
③ 加熱式たばこ・電子たばこに変えること
④ 「1本くらいなら」と甘く見ること
能動喫煙も受動喫煙も安全なレベルは存在しないことが証明されているので、健康のためには禁煙は必須である。受動喫煙も軽い喫煙の別の形態であることも考えて受動喫煙防止法を早期に成立させる必要がある。
もう一つ、タバコ関連の記事を。
タバコによるがんのリスクを非喫煙者と同等まで下げるためには「男性で21年以上、女性で11年以上禁煙」という報告。
■ 日本の喫煙者のがんリスク、禁煙何年で喫煙歴ゼロと同じに?
(2017/11/14:ケアネット)
日本人のがん罹患リスクは、男性で21年以上、女性で11年以上禁煙すれば、喫煙歴のない人と同レベルまで低下することが、東京大学の齋藤 英子氏らによる研究で明らかになった。男性では、20 pack-year※以上のヘビースモーカーにおいても同様の結果であるという。早いうちに禁煙することが、がん予防への近道であると考えられる。Cancer epidemiology誌オンライン版2017年11月2日号の報告。
東アジアは世界有数のタバコ普及地域であるが、喫煙や禁煙ががんに及ぼす影響についての前向き研究はほとんどない。そこで著者らは、日本における8つの前向きコホート研究(参加者32,000人以上)のデータを用いて、全がんおよび喫煙関連がん罹患リスクに対する禁煙の影響を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・潜在的な交絡因子の調整後、ベースライン以前に21年間以上禁煙していた男性の全がん罹患リスクは、喫煙歴のない人と同じレベルまで低下することが示された(ハザード比:1.01、95%CI:0.91~1.11)。
・20 pack-year以上のヘビースモーカーであった男性でも、21年間以上禁煙した場合、全がん罹患リスクが低下することが示された(ハザード比:1.06、95%CI: 0.92~1.23)。
・ベースライン以前に11年間以上禁煙していた女性の全がん罹患リスクは、喫煙歴のない人と変わらなかった(ハザード比:0.96、95%CI:0.74~1.23)
※pack-year:生涯喫煙量の単位。1日に何箱のタバコを何年間吸い続けたかをかけ合わせて計算する。1 pack-yearは、1日1箱を1年、または2箱を半年吸った量に相当。
<原著論文>
・Saito E, et al. Cancer Epidemiol. 2017 Nov 2.
「これくらいは・・・」という考え方も甘い、健康被害が否定できないという報告を紹介します。
結論:「1日1本のみの喫煙でも、冠動脈疾患や脳卒中のリスクが予想以上に高い(1日20本喫煙による増加リスクの約半分)。心血管疾患に関して安全なレベルの喫煙は存在しないので、喫煙者はこれらの疾患のリスクを有意に減らすためには喫煙本数を減らすのではなくて、喫煙を止めるべきである」
「電子タバコも安全とは言えない」
※ 下線は私が引きました。
■ 安全なレベルの喫煙は存在しない
(2018年02月05日:メディカル・トリビューン)
◇ 研究の背景:喫煙本数による冠動脈疾患・脳卒中リスクの定量化
全世界で約10億人の成人が喫煙している。英国では喫煙者の26%が禁煙ではなくて喫煙量を減らしたいと希望し、2013年と2014年に喫煙者の40〜41%が以前より喫煙量を減らしたという報告がなされた。2009~14年に全喫煙者に占める1日にたばこを1〜5本しか喫煙しない人の割合が18.2%から23.6%に増加した。米国でも2005~15年に全喫煙者に占める1日の喫煙量が10本未満の人の割合が16%から27%に増加した(BMJ 2018; 360: j5855)。
一般的にニコチンやタール含有量の少ないたばこ(軽いたばこ)では、喫煙本数が少なければ比較的安全であると信じられているが、実際は間違っている。米国の成人2万4,658人の10%が「軽いたばこは有害ではない」と答え、軽いたばこの喫煙者のうち「喫煙習慣が多くの害に関連している」と考えていたのはわずか35%であった。
わが国でも「喫煙量を減らした量に比例して害が減る」と考える喫煙者が多く、「喫煙本数を減らす」、「軽いたばこに変更する」、最近では「加熱式たばこに変更する」ことで喫煙による害を減らそうとするケースがよく見受けられる。実際、肺がんでは喫煙本数を1日20本から1本に減らすことでリスクは5%に減少する(Environ Health Perspect 2011; 119: 1616-1621)と報告されている(それでもかなりリスクが高い)。しかし、これまでの研究で、喫煙本数と心血管疾患の関係は非線形であり、喫煙本数を減らしても減らした量に比例してリスクは減らないことが示されている(前掲論文、BMJ 2004; 328: 980-983、Prog Cardiovasc Dis 2003; 46: 31-38)。
今回取り上げた論文では、1日1〜5本の少ない喫煙本数における冠動脈疾患と脳卒中のリスクを定量化するために喫煙量と心血管疾患の関連を検討した(BMJ 2018; 360; j5855)。
◇ 研究のポイント:1日1本のみの喫煙でも、冠動脈疾患や脳卒中のリスクが予想以上に高い
1946〜2015年5月にMedlineに登録されたイベント数が50以上のコホート研究を検索し、141件のコホート研究を含む55報についてシステマチックレビューとメタ解析を行った。
その結果、喫煙未経験者に対する冠動脈疾患の相対リスク(RR)は、男性では1日1本で1.48倍、1日20本で2.04倍〔交絡因子調整後のRR(aRR)1.74倍、 2.27倍〕。女性では1日1本で1.57倍、1日20本で2.84倍(同2.19倍、 3.95倍)であった。1日20本の喫煙によって増加するリスクに対する1日1本の喫煙によって増加するリスクの割合(過剰相対リスク)は、男性で46%(調整後過剰相対リスク53%)、女性で31%(同38%)であった(図1)。
図1. 少量の喫煙(1日1本・5本)による冠動脈疾患および脳卒中リスクの増加( 141件のコホート研究を対象としたメタ解析)
(BMJ 2018; 360; j3984)
喫煙未経験者に対する脳卒中のRRは、男性では1日1本で1.25倍、1日20本で1.64倍(aRR 1.30倍、1.56倍)、女性ではそれぞれ1.31倍、2.16倍(同1.46倍、2.42倍)であった。1日20本の喫煙によって増加するリスクに対する1日1本の喫煙によって増加するリスクの割合(過剰相対リスク)は、男性で41%(調整後過剰相対リスク64%)、女性で34%(同36%)であった(図1)。
結論として、1日1本のみの喫煙でも、冠動脈疾患や脳卒中のリスクが予想以上に高い(1日20本喫煙による増加リスクの約半分)という結果となった。心血管疾患に関して安全なレベルの喫煙は存在しないので、喫煙者はこれらの疾患のリスクを有意に減らすためには喫煙本数を減らすのではなくて、喫煙を止めるべきである。
◇ 私の考察:健康のためには禁煙は必須
1.1日1箱(20本)の喫煙に比べて1日1本の喫煙では脳卒中リスクは半減するのみ
前述の通り、肺がんでは喫煙量を減らした比率に応じてリスクが減る(喫煙量を1日20本から1本にすればリスクは5%に減少)ことが報告されている(図2)。同様に心血管疾患でも、喫煙量を1日20本から1本に減らすと心臓発作や脳卒中リスクが5%(20分の1)に減ると考えがちだが、今回のメタ解析では1日1本では20本に比べてリスクの増加が半減するだけであることが示された。
図2. 喫煙によるPM2.5曝露量および喫煙本数と肺がん死亡率、虚血性心疾患・ 心血管疾患・心肺死亡率の相対リスク
(Environ Health Perspect 2011; 119: 1616-1621)
また過去には、たばこ煙曝露量と虚血性心疾患の用量反応関係は線形ではないと報告されており(図2、3)、今回、冠動脈疾患とともに脳卒中でも同様の結果が示された。
図3. たばこ煙曝露と虚血性心疾患の用量反応関係
(Prog Cardiovasc Dis 2003; 46: 31-38、BMJ 2004; 328: 980-983、)
多くの喫煙者は、軽いたばこに変更する、喫煙本数を減らすことでたばこの害を減らせると信じているようだが、禁煙を推奨する心血管疾患領域の専門家の間では軽いたばこへの変更や喫煙本数の減少は、喫煙者が期待しているほどのリスク軽減にならないと考えられてきたことが、さらに確実になった。1日1本のたばこでも冠動脈疾患と脳卒中の発症リスクが非常に高くなることを喫煙者に理解してもらう必要がある。
2.加熱式たばこのharm reductionは証明されていない
喫煙量をわずかに減らしても有意義な健康上の利益はもたらされず、一方でたばこと電子たばこ(わが国ではニコチン入りの電子たばこは発売されていない)あるいは加熱式たばこの二重使用は心血管リスクを上昇させる。「harm reduction」というキーワードを使って加熱式たばこの販売を促進すべきではない。さらに"電子たばこは禁煙率を低下させる"と主張し、"より安全である"と銘打ったたばこ製品(加熱式たばこやニコチン入りの電子たばこ)のマーケティング手法は、若い世代をニコチン依存症に導いてしまう可能性が高い。
安全な喫煙レベルというものは存在せず、リスク低減商品と銘打った加熱式たばこに変更すれば長期的な冠動脈疾患や脳卒中の健康被害のリスクがほとんどなくなる、または完全になくなると勘違いすべきではない。
わが国ではニコチン入りの電子たばこの発売は認可されていないため、加熱式たばこが相次いで発売されている。すなわち、わが国は加熱式たばこの実験場となっていると考えられる。米国では米食品医薬品局(FDA)が加熱式たばこを認可しておらず、FDA科学諮問委員会は、IQOSが紙巻たばこ喫煙より害が少ないというフィリップモリスの主張を5対4で否定した。
3.禁煙のポイント
正しい禁煙法と禁煙でやってはいけないことを以下に示す。
<正しい禁煙方法>
① 期日を決めて一気に禁煙を実行する。完全に禁煙する
② ある程度の禁断症状(ニコチン離脱症状)を覚悟する
③ 吸いやすい「行動」をやめる
④ 吸いやすい「環境」をつくらない
⑤ 吸いたくなったら「代わりの行動」を取る
⑥ 自力でできない場合は禁煙補助薬を使用(禁煙外来)
<禁煙でやってはいけないこと>
① だんだんと減らそうとすること
② 軽いたばこに変えること
③ 加熱式たばこ・電子たばこに変えること
④ 「1本くらいなら」と甘く見ること
能動喫煙も受動喫煙も安全なレベルは存在しないことが証明されているので、健康のためには禁煙は必須である。受動喫煙も軽い喫煙の別の形態であることも考えて受動喫煙防止法を早期に成立させる必要がある。
もう一つ、タバコ関連の記事を。
タバコによるがんのリスクを非喫煙者と同等まで下げるためには「男性で21年以上、女性で11年以上禁煙」という報告。
■ 日本の喫煙者のがんリスク、禁煙何年で喫煙歴ゼロと同じに?
(2017/11/14:ケアネット)
日本人のがん罹患リスクは、男性で21年以上、女性で11年以上禁煙すれば、喫煙歴のない人と同レベルまで低下することが、東京大学の齋藤 英子氏らによる研究で明らかになった。男性では、20 pack-year※以上のヘビースモーカーにおいても同様の結果であるという。早いうちに禁煙することが、がん予防への近道であると考えられる。Cancer epidemiology誌オンライン版2017年11月2日号の報告。
東アジアは世界有数のタバコ普及地域であるが、喫煙や禁煙ががんに及ぼす影響についての前向き研究はほとんどない。そこで著者らは、日本における8つの前向きコホート研究(参加者32,000人以上)のデータを用いて、全がんおよび喫煙関連がん罹患リスクに対する禁煙の影響を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・潜在的な交絡因子の調整後、ベースライン以前に21年間以上禁煙していた男性の全がん罹患リスクは、喫煙歴のない人と同じレベルまで低下することが示された(ハザード比:1.01、95%CI:0.91~1.11)。
・20 pack-year以上のヘビースモーカーであった男性でも、21年間以上禁煙した場合、全がん罹患リスクが低下することが示された(ハザード比:1.06、95%CI: 0.92~1.23)。
・ベースライン以前に11年間以上禁煙していた女性の全がん罹患リスクは、喫煙歴のない人と変わらなかった(ハザード比:0.96、95%CI:0.74~1.23)
※pack-year:生涯喫煙量の単位。1日に何箱のタバコを何年間吸い続けたかをかけ合わせて計算する。1 pack-yearは、1日1箱を1年、または2箱を半年吸った量に相当。
<原著論文>
・Saito E, et al. Cancer Epidemiol. 2017 Nov 2.