ニキビの治療は近年、大きく進歩しました。
昔はイオウカンフルローションと抗菌薬程度しか治療薬が存在せず、
それでお茶を濁していた感が否めませんでした。
現在でも皮膚科医は抗菌薬を常用していますね。
近年、外用薬(ぬり薬)のターゲットが「化膿病変」から「ニキビ肌改善」へシフトしています。
つまり、できたニキビを治すのではなく、ニキビができにくい肌にしよう、という考えです。
小児科医の私も、悩める思春期男子・女子を対象にニキビの治療をしています。
外用薬は上記の通り、抗菌薬とニキビ肌改善薬を併用し、
かつ漢方薬を内服してもらいます。
漢方では赤ニキビ(炎症性皮疹)と黒ニキビ(非炎症性皮疹)で効く薬が異なり、使い分けます。
赤ニキビに対しては熱を冷やしたり、溜まった膿を排泄する生薬が入ったモノ。
結構苦いのですが、飲み続けている中学生もいるので、
手応えがあるのでしょう。
さて、以下の記事が目に留まりました。
日本の治療薬とどんなところが違うのか、興味を持って読みました。
ポイントを列挙します;
・ニキビに関する200件以上の論文を解析し、ニキビ治療薬37種類の優劣を検討した。
・最も効果的な治療法は「経口イソトレチノイン(商品名:アキュテイン・・・日本未発売)である。
・2位以下は複数薬剤の併用療法であった。
・外用薬を3剤使うことはコンプライアンスが悪化する可能性があり現実的ではない。
第一位の薬が使えない日本では、2位/3位の選択枝しかありません。
小児科医は抗菌薬を長期使用することに躊躇します。
それは耐性菌をつくってしまうからです。
しかし皮膚科医は1ヶ月単位で処方しています。
ニキビ菌には耐性ができないのでしょうか?・・・不思議です。
■ にきびに対して最も効果的な治療法とは?
(2023年08月10日:Medical Tribune)より抜粋;
生活の質(QOL)に大きな影響を与えかねないにきび(ざ瘡)に対する最も効果的な治療法は何なのだろうか。台大病院(台湾)のChung-Yen Huang氏らによる200件以上の研究を対象にしたレビューから、その答えは、経口イソトレチノイン(商品名アキュテイン)であることが明らかになった。
・・・(Abstract/Full Text)
Huang氏らは、にきびに対する薬物療法に関する包括的な比較を行うために、論文データベースを用いて2022年2月までに発表された関連論文を検索し、221件の臨床試験を含む210件の研究論文(対象者の総計6万5,601人、平均年齢20.4歳)をレビュー対象として抽出。これらの研究で検討されていた37種類のにきび治療法を、総皮疹数、炎症性皮疹数、非炎症性皮疹数の減少率に基づき比較した。対象とした37種類のにきび治療法には、外用と経口の抗菌薬、外用レチノイド、経口イソトレチノイン、過酸化ベンゾイル(BPO)、アゼライン酸、ホルモン治療薬の単剤療法と併用療法が含まれていた。治療期間中央値は12週間だった。
解析の結果、総皮疹数、炎症性皮疹数、非炎症性皮疹数のいずれについても、最も効果的な治療法は経口イソトレチノインであることが示された。イソトレチノインは、皮脂腺を縮小して皮脂分泌を抑制するとともに抗炎症作用も持つ。
効果的な治療法は、総皮疹数と非炎症性皮疹数に対してはいずれも、
1.経口イソトレチノイン
2.外用の抗菌薬・BPO・レチノイドの3剤併用療法、
3.経口抗菌薬・外用BPO・外用レチノイドの3剤併用療法
の順であった。
炎症性皮疹数に対しては、
1.経口イソトレチノイン
2.外用抗菌薬と外用アゼライン酸の2剤併用療法
3.経口抗菌薬・外用BPO・外用レチノイドの3剤併用療法
であった。
また、単剤療法に関しては、経口または外用抗菌薬と外用レチノイドは炎症性皮疹数に対して同等の効果があるが、抗菌薬は非炎症性皮疹数に対してあまり効果のないことが示された。
・・・
皮膚科医であるJulie Harper氏は、「経口イソトレチノインは、にきびの治療薬として最も効果が期待できる薬だ。イソトレチノインを服用した多くの人で、にきびが消えるだけでなく、その状態を長期にわたり維持できる」と言う。
ただし、副作用として肝障害や抑うつ症状などが生じたり、妊娠中の女性では胎児に重篤な先天異常をもたらす可能性もあるため、誰もが服用できる薬剤ではないことも同氏は指摘している。
また、米ボストンの皮膚科医であるEmmy Graber氏は、「臨床試験参加者は、外用の抗菌薬・BPO・レチノイドによる3剤併用療法を処方されても遵守する可能性が高いが、実臨床で患者に複数の外用薬を1日に何度も使わせるのは困難だ」と指摘する。そして、「外用薬でも優れた効果を得ることはできるが、そのために重要になるのがコンプライアンスと併用だ」と述べ、「3剤併用療法では、内服薬を含める方が外用薬だけを3種類用いるよりも効果的だろう」との見方を示している。
一方、米Acne Treatment & Research Center(にきび治療研究センター)のメディカルディレクターを務めるHilary Baldwin氏は、「全ての外用レチノイドが同じように作られているわけではないのに、この研究では、外用レチノイドとしてまとめられている。外用レチノイドの強さを一括りにして評価することは不可能だ」と研究の限界点に言及する。同氏はさらに、「にきびは、その数だけでなく、病変の大きさ(赤み)も評価して、重症度を判断するべきだ」と主張する。さらに、「患者ごとにパラメーターは大きく異なっており、にきびの治療成績は、治療の遵守、皮膚の敏感さ、ライフスタイルの特徴など多くの要因に左右されるものだ」と説明している。