小児アレルギー科医の視線

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小児科医、横井茂夫先生の便秘診療

2014年03月13日 06時14分54秒 | 小児医療
 引き続き、子どもの便秘シリーズ。

 横井茂夫先生(横井こどもクリニック院長)が「日経メディカル」という医学系情報誌に連載している「泣かせない小児診療ABC」の中でこどもの便秘を扱っているのを読んだところ、経験に基づいた説得力ある内容に目から鱗が落ちました。

 乳児期の便秘に対する綿棒浣腸の詳細な解説は診療の役に立ちます。
 これだけ具体的に説明されれば、保護者の方も不安・躊躇なく自宅でできそう。

 食事指導の内容も大変参考になりました。
 どの啓蒙書を読んでも「食物繊維を摂ろう」とは書かれていますが、子どもには馴染みのない、あるいは好まない食品が羅列されているだけで、どれをどれくらい食べればよいのか迷ってしまいがち。
 横井先生は「食べられるものを具体的に示して勧める」ことの大切さを説いており、さらに「食べてはいけない物(子どもの便秘を助長する食品)」の具体例を挙げている点が明解でわかりやすい。

 それから、牛乳の功罪。
 アレルギー専門医の間では「牛乳アレルギーが便秘の原因になる」ことが知られ、治療抵抗性の便秘には牛乳制限を試みる価値があるとされています。
 しかし横井先生は「健康な子どもに牛乳をたくさん与えると便が硬くなりやすい」と注意を喚起しています。
 ・・・初耳です。
 確かに、母乳栄養児より人工栄養児の方が便が硬い傾向はありますが・・・どうなのでしょう。
 

メモ

乳児排便困難症には綿棒浣腸
 母乳栄養児に多い症状で、便が数日間出なくて、時にうんうん唸っている、でも出るウンチは硬いわけではなく、お腹が張ったり嘔吐することもなく、食欲・体重増加良好、という状態です。病気なのかどうか、線引きが難しい。
 教科書には「自然治癒する」と書かれており、確かにほとんどの母乳性便秘は離乳食を開始すると改善・治癒しますが、横井先生は「綿棒浣腸」を勧めています。3日間排便がなければ、肛門を綿棒で刺激して排便を促すというもの。
 準備するのは綿棒(細めの綿棒よりも太めの綿棒の方が痛みが少ないためお勧め)、ワセリン(痛みを減らし、綿棒がなめらかに動くよう、潤滑油的に使用。ベビーオイルよりも綿球に吸収されないワセリンがお勧め)です。予め綿棒の先端から1cm、2cmの部位にマジックで印をつけておくと操作しやすいです。
 綿棒の先にワセリンをつけ、それを右手に持ちながら、左手で子どもの両脚を持ち上げます。続いてゆっくりと肛門から綿棒を2cm挿入し、一度引き抜いて綿棒の先に便が付着している(大便が直腸下端に来ている)のを確認します。
 もう一度綿棒をゆっくり2cm肛門へ挿入し、大きく「の」の字を描くよう動かします。4~5回、丸く肛門を広げるように描くと便が出てきます。
 このとき、左手で持った両下肢を腹部にやや強めに押しつけると和式トイレに座るポーズとなり、腹圧がかかって便が出やすくなります。

子どもの便秘に有効な生活指導は?
1)牛乳摂取を多くする
2)水分摂取を多くする
3)朝食後にトイレに座らせる
4)食物繊維の摂取を多くする
5)野菜ジュース摂取を多くする
→ 正解は3と4です。

<解説>
1)日本人は年をとると共に乳糖分解酵素の活性が低下するため、高齢なほど牛乳摂取により便が軟化します。しかし子どもでは、牛乳多飲により逆に便が硬化しやすくなります。
2)脱水のない健康状態では水分摂取による効果はありません。
3)朝食後は、食事を摂った刺激で「胃結腸反射」が起きるので原意を催しやすくなります。それを利用して5~10分間トイレに座らせて排便を促すのは正しい対応です。排便できたときは褒めて、排便できなくても叱らないのがポイントです。
5)便秘症の子どもには野菜嫌いが多く、野菜の代わりに野菜ジュースを飲ませている母親もいますが、野菜ジュースには食物繊維はほとんど含まれていません。

子どもの便秘に有効な食生活指導~食物繊維を効果的に増やそう
 便秘がちの子どもの食事内容を調べると、大抵次のような特徴が見られます;
・大好きなものは牛乳や甘いヨーグルト、アイス。
・食物繊維の多い野菜は嫌いで、野菜を食べないのを母親が心配して果汁100%の野菜ジュースを飲ませている。
 一般書には食物繊維の多い海藻や野菜、冷たい牛乳が推奨されていますが、便秘や遺糞症の症例には野菜嫌いの偏食で牛乳を多飲している子どもが多いのが特徴です。
 つまり、「野菜嫌いなので野菜ジュースを、便が出ないので牛乳を」が間違った食生活なのです。本人の食事内容を聞き取り、好きなものを食物繊維の多いものに交換するよう薦めましょう。
 具体的には、生野菜のサラダではなくサツマイモ、カボチャ、ニンジン、納豆、枝豆、ソラマメ、トウモロコシ、海苔などが便秘によい食材です。おやつには小豆やあんこ、焼き芋、寒天、リンゴ、バナナを薦めます。
 ウンチが硬くなる原因となる牛乳は止めて、無糖のヨーグルトにキウイ、バナナ、コーンフレーク、干しぶどうを入れます。ジュース、アイス、甘いヨーグルトは極力控えて果物そのものを食べさせるよう指導します。麺類好きには日本そば(そば粉)やスパゲッティ(セモリナ粉)もお薦めです。
 食物繊維の代表としてはキノコ類、海藻、干し大根が薦められがちですが、せっかく保護者が料理をしても子どもが食べなければ効果はありません。手軽に手に入り、子どもが食べやすいものをセレクトして薦めるのがコツです。

不適切な食事・食品例
 米飯、うどん/ラーメン、牛乳、市販の野菜ジュース、ゼリー、ケーキ、ポテトチップス
お薦めの食事・食品例
 麦混じりの米飯、日本そば/スパゲッティ、プレーンヨーグルト、手作りジュース、寒天、あんこ、焼き芋

繊維の多い食べ物; 
 納豆、焼き海苔、ミックスベジタブル、サツマイモ、サトイモ、カボチャ、ニンジン、リンゴ、バナナ、枝豆、トウモロコシ、大豆、小豆
食べてはいけない物
 プリン、生野菜、アイスクリーム、牛乳、市販のジュース

横井先生お薦めのレシピ
「納豆、リンゴ、焼き芋、寒天の4種から3つを2週間食べさせてください。例えば、朝食はご飯に納豆と海苔、おやつはリンゴ、焼き芋、寒天という感じです。10日目からウンチが変わってきますよ。寒天には子どもの好きなジュースを入れると喜んで食べます。毎日必ず4つの食べ物から3つを選んでくださいね。牛乳は給食のみにしてください。」

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