医学的・慣習的に世界中どの民族でも“タブー”とされてきた「近親婚」。
遺伝子構成が近いヒト同士から生まれた子どもは、遺伝病(劣勢遺伝)が発症しやすいとされ、自然に忌避する習慣が生まれ守られてきました。
まあ、理論的にはそうなんだろうな、程度に思ってきたところ、この衝撃的なニュースが目に入りました;
■ 豪で「近親相姦農場」見つかる、先天異常の子ら12人保護(2013年12月13日、AFP)
【12月13日 AFP】オーストラリアの地方部で、数世代にわたって近親相姦を繰り返していた農場から虐待状態にある5~15歳の子ども12人が保護されていたことが分かった。肢体の不自由な子どもや障害児もおり、同国内に衝撃が広がっている。
警察官と児童福祉当局の職員が訪問した農場には、子どもたちの他に30人ほどの成人の男女が暮らしていた。この家族は4世代にわたって、おじとおば、兄弟と姉妹が近親相姦によって子を産み、さらにその子どもたちにも近親交配で子を出産させていた。
遺伝子検査の結果、12人の子どものうち11人が近親間に生まれており、うち5人の両親は「非常に近い血縁関係」にあった。子どもたちには聴覚や視覚などにさまざまな障害が生じていた。
この家族はトレーラーハウス2台と2棟の小屋、2つのテントに分かれて住んでいた。水道や下水設備はなく、子どもたちの歯の衛生状態は劣悪で、トイレはやぶの中でしていた。女の子たちは便器やトイレットペーパーの使い方を知らず、歯ブラシを見たこともなかった。
子どもたちの話し方は非常に分かりにくく、学校に全く通っていなかった子や、たまにしか顔を出さなかった子もいた。全員に発達遅延か認知障害があり、7人は「理解可能な言葉を話すことができない」という。
農場の周囲には電気柵が巡らされていたが、子どもたちのベッドの1つにはカンガルーの子が1匹寝ていた。敷地内にはチェーンソーや大きなゴミ袋が散乱していた。
農場では他にもう1人の子どもが生まれていたが、遺伝上の問題が原因で生後2か月で死亡したという。
「動物以下」になってしまったヒト達。
一方、意図せず「近親婚」になってしまう可能性が指摘された「精子ドナー問題」;
■ 1人の精子ドナーから多数の子ども、近親相姦の危険性も(2011年10月09日、AFP)
1人の精子ドナーから数十人の子ども――SFのシナリオのような話だが、米国やカナダでは、規制が緩いために同じ父親から数十人、数百人の子どもが生まれており、専門家らが懸念を示している。
カナダ保健省によると、フランスや英国とは違い、カナダや米国には、1人の精子ドナーからつくってもよい子どもの人数を制限する法律がない。
国際的な基準では、同一の精子ドナーからの妊娠は20回が限度とされている。またデンマークでは同一ドナーからの子どもは25人までに制限されている。さらに、多くの精子バンクが独自の規制を設けている。
だが、規則は常に守られるとは限らない。「デザイナーベビー」を産もうとする家族は、特定の遺伝子や特徴、たとえば目の色やIQレベルなどを基準に、カタログからドナーを慎重に選択する。その結果、特定の人気ドナーが多くの子どもの生物学的父となっている。
カナダと米国では最近この問題が取り上げられ、いくつかの映画やドキュメンタリーも製作された。
ことし発表されたカナダのコメディー映画「スターバック(Starbuck)」は、手早く簡単に金稼ぎをするために精子を売っていた男性が、意図せずして533人の生物学的な父になっていたというストーリーだ。
また、トロント(Toronto)のドキュメンタリー制作者、バリー・スティーブンス(Barry Stevens)氏は、自分の経験をもとにした作品を制作した。
スティーブンス氏は精子提供を受けて英国で生まれたが、彼の生物学的父は、精子バンクを通じて30年間でなんと500~1000人の子どもをつくっていたという。スティーブンス氏の異母きょうだいたちは、カナダ、米国、欧州、その他に広がっている。まさに「事実は小説よりも奇なり」だ。
専門家たちは、1人のドナーに過剰に依存することで、遺伝的疾患や先天性異常が広がる危険性が高まると警告している。また、一部専門家は、異母きょうだい同士の意図しない近親相姦(そうかん)の危険性すらあると指摘する。
スティーブンス氏は「ある1人のドナーの子ども同士が出会い、セックスをして、子どもを産む可能性は除外できない。さらには、ドナー自身が、自分の娘とセックスをすることだってあるかもしれない」と述べる。
カルガリー大学(University of Calgary)の生命倫理学専門家、Juliet Guichon氏は、子どもたちの意図しない近親相姦は想像するよりも頻繁に発生していると指摘する。「精子ドナーを求める人は、同じ社会的・経済的地位の出身者。顔見知りだったり、同じ医師にかかっていたり、近所に住んでいたりする」
2004年以降、精子ドナーへの対価支払いを中止したカナダでは、結果として在庫が枯渇し、医療機関は米国を中心とした輸入精子に大きく依存している。
上記で出てきたドキュメンタリーの一つを以前見たことがあります;
■ “ドナー150”を探して~精子提供者と子どもたち~(2011年10月25日:NHK-BS)
原題:Donor Unknown
制作:Met Film / Redbird Production (イギリス 2011年)
ペンシルバニア州で二人の母親と暮らすジョーエレン。精子バンクから提供された精子で生まれた彼女は、会ったことのない「父親」について、あれこれ想像しながら育った。父親は<ドナー150>と番号で呼ばれ、記録には身体的特徴や学歴、職業などだけが書かれていた。やがてインターネット上で同じドナーの子どもたちをつなぐサイトに登録した彼女の元に、異母姉ダニエルからのメールが届く。人生で最も嬉しい瞬間だったとジョーエレンは振り返る。メールや電話で交流を深め、ついに対面した二人はごく自然に相手を姉妹だと感じる。
二人の出会いが新聞で紹介されたことから、「私の父親もドナー150だ」と名乗り出る人が相次ぎ、少なくとも14人の兄弟姉妹がいることがわかった。そしてついに、彼らは“父親”を探し出した。
ロサンゼルスのヴェニス・ビーチ。<ドナー150>ことジェフリーの住まいはキャンピングカーだ。ダンサー、役者、ミュージシャン、ストリッパーなどをしていたが、もっと自由に生きたいと仕事を辞め、犬やハトと暮らし始めた。若い頃、ひょんなことからドナーになり8年間、精子バンクに精子を提供して収入の足しにしていた。
ジェフリーに会うことを決意したジョーエレンたち。その生き方に戸惑いつつも、ただのドナーではなく、ジェフリーという存在とのつながりを確認する。一方、ジェフリーも、彼らとの出会いに確かな実感と今までにない感動を覚える。
これが精子ドナーではなく、色を好む男性の不倫歴の末に生まれた子どもたちだったらどうだろう・・・こんな乗りで「同窓会」を開くことはあり得ないでしょうね。
なにか釈然としないものが残ります。
すると、こんな記事も気になってきます;
■ 祖父の精子で誕生118人…体外受精、17年間で(2014年7月28日:読売新聞)
夫婦以外の卵子や精子を使った非配偶者間体外受精の実施を国内で初めて公表した諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町、根津八紘やひろ院長)は、これまでに夫婦79組が、夫の実父から精子提供を受け、118人の子どもが誕生したとする結果をまとめた。31日、東京都内で開かれる日本受精着床学会で発表する。
同クリニックによると、1996年11月から昨年末まで、夫に精子がない110組が、夫の実父(50歳代~70歳代)の精子と妻の卵子で体外受精をした。子どもを得た79組中19組が2回以上出産した。移植1回当たりの妊娠率は38%だった。
非配偶者間体外受精に関する法規定はないが、日本産科婦人科学会(日産婦)は体外受精を夫婦間に限っている。一方、厚生労働省審議会は2003年、匿名の第三者からの体外受精を認める報告書を出し、兄弟姉妹らからの提供は人間関係が複雑になりやすいなどの理由で当面は認めないとした。
匿名の第三者の精子を妻の子宮に注入する非配偶者間人工授精では、国内で49年以降、1万人以上が生まれたとされる。日産婦も97年に追認している。
国内の多くの医療機関では、精子がない夫婦が子どもを望む場合、選択肢として非配偶者間人工授精と養子縁組のみを示している。
根津院長は「身内からの提供を望む夫婦は少なくない。カウンセリングを重ねて、慎重に行っている。血のつながりがあった方が、提供者家族も含めて良好な家族関係を築きやすい、出自が明確になるという面もある」と話している。
医学的には、妻と義父との関係では近親婚にはなりませんが、社会的・倫理的な問題があります。
実際に妻が夫の父親と性行為に及ぶと不倫、子どもができると家庭崩壊という流れになるのがふつう。
それが不妊治療という目的では正当化される?
私には是非の判断ができかねる問題です。
遺伝子構成が近いヒト同士から生まれた子どもは、遺伝病(劣勢遺伝)が発症しやすいとされ、自然に忌避する習慣が生まれ守られてきました。
まあ、理論的にはそうなんだろうな、程度に思ってきたところ、この衝撃的なニュースが目に入りました;
■ 豪で「近親相姦農場」見つかる、先天異常の子ら12人保護(2013年12月13日、AFP)
【12月13日 AFP】オーストラリアの地方部で、数世代にわたって近親相姦を繰り返していた農場から虐待状態にある5~15歳の子ども12人が保護されていたことが分かった。肢体の不自由な子どもや障害児もおり、同国内に衝撃が広がっている。
警察官と児童福祉当局の職員が訪問した農場には、子どもたちの他に30人ほどの成人の男女が暮らしていた。この家族は4世代にわたって、おじとおば、兄弟と姉妹が近親相姦によって子を産み、さらにその子どもたちにも近親交配で子を出産させていた。
遺伝子検査の結果、12人の子どものうち11人が近親間に生まれており、うち5人の両親は「非常に近い血縁関係」にあった。子どもたちには聴覚や視覚などにさまざまな障害が生じていた。
この家族はトレーラーハウス2台と2棟の小屋、2つのテントに分かれて住んでいた。水道や下水設備はなく、子どもたちの歯の衛生状態は劣悪で、トイレはやぶの中でしていた。女の子たちは便器やトイレットペーパーの使い方を知らず、歯ブラシを見たこともなかった。
子どもたちの話し方は非常に分かりにくく、学校に全く通っていなかった子や、たまにしか顔を出さなかった子もいた。全員に発達遅延か認知障害があり、7人は「理解可能な言葉を話すことができない」という。
農場の周囲には電気柵が巡らされていたが、子どもたちのベッドの1つにはカンガルーの子が1匹寝ていた。敷地内にはチェーンソーや大きなゴミ袋が散乱していた。
農場では他にもう1人の子どもが生まれていたが、遺伝上の問題が原因で生後2か月で死亡したという。
「動物以下」になってしまったヒト達。
一方、意図せず「近親婚」になってしまう可能性が指摘された「精子ドナー問題」;
■ 1人の精子ドナーから多数の子ども、近親相姦の危険性も(2011年10月09日、AFP)
1人の精子ドナーから数十人の子ども――SFのシナリオのような話だが、米国やカナダでは、規制が緩いために同じ父親から数十人、数百人の子どもが生まれており、専門家らが懸念を示している。
カナダ保健省によると、フランスや英国とは違い、カナダや米国には、1人の精子ドナーからつくってもよい子どもの人数を制限する法律がない。
国際的な基準では、同一の精子ドナーからの妊娠は20回が限度とされている。またデンマークでは同一ドナーからの子どもは25人までに制限されている。さらに、多くの精子バンクが独自の規制を設けている。
だが、規則は常に守られるとは限らない。「デザイナーベビー」を産もうとする家族は、特定の遺伝子や特徴、たとえば目の色やIQレベルなどを基準に、カタログからドナーを慎重に選択する。その結果、特定の人気ドナーが多くの子どもの生物学的父となっている。
カナダと米国では最近この問題が取り上げられ、いくつかの映画やドキュメンタリーも製作された。
ことし発表されたカナダのコメディー映画「スターバック(Starbuck)」は、手早く簡単に金稼ぎをするために精子を売っていた男性が、意図せずして533人の生物学的な父になっていたというストーリーだ。
また、トロント(Toronto)のドキュメンタリー制作者、バリー・スティーブンス(Barry Stevens)氏は、自分の経験をもとにした作品を制作した。
スティーブンス氏は精子提供を受けて英国で生まれたが、彼の生物学的父は、精子バンクを通じて30年間でなんと500~1000人の子どもをつくっていたという。スティーブンス氏の異母きょうだいたちは、カナダ、米国、欧州、その他に広がっている。まさに「事実は小説よりも奇なり」だ。
専門家たちは、1人のドナーに過剰に依存することで、遺伝的疾患や先天性異常が広がる危険性が高まると警告している。また、一部専門家は、異母きょうだい同士の意図しない近親相姦(そうかん)の危険性すらあると指摘する。
スティーブンス氏は「ある1人のドナーの子ども同士が出会い、セックスをして、子どもを産む可能性は除外できない。さらには、ドナー自身が、自分の娘とセックスをすることだってあるかもしれない」と述べる。
カルガリー大学(University of Calgary)の生命倫理学専門家、Juliet Guichon氏は、子どもたちの意図しない近親相姦は想像するよりも頻繁に発生していると指摘する。「精子ドナーを求める人は、同じ社会的・経済的地位の出身者。顔見知りだったり、同じ医師にかかっていたり、近所に住んでいたりする」
2004年以降、精子ドナーへの対価支払いを中止したカナダでは、結果として在庫が枯渇し、医療機関は米国を中心とした輸入精子に大きく依存している。
上記で出てきたドキュメンタリーの一つを以前見たことがあります;
■ “ドナー150”を探して~精子提供者と子どもたち~(2011年10月25日:NHK-BS)
原題:Donor Unknown
制作:Met Film / Redbird Production (イギリス 2011年)
ペンシルバニア州で二人の母親と暮らすジョーエレン。精子バンクから提供された精子で生まれた彼女は、会ったことのない「父親」について、あれこれ想像しながら育った。父親は<ドナー150>と番号で呼ばれ、記録には身体的特徴や学歴、職業などだけが書かれていた。やがてインターネット上で同じドナーの子どもたちをつなぐサイトに登録した彼女の元に、異母姉ダニエルからのメールが届く。人生で最も嬉しい瞬間だったとジョーエレンは振り返る。メールや電話で交流を深め、ついに対面した二人はごく自然に相手を姉妹だと感じる。
二人の出会いが新聞で紹介されたことから、「私の父親もドナー150だ」と名乗り出る人が相次ぎ、少なくとも14人の兄弟姉妹がいることがわかった。そしてついに、彼らは“父親”を探し出した。
ロサンゼルスのヴェニス・ビーチ。<ドナー150>ことジェフリーの住まいはキャンピングカーだ。ダンサー、役者、ミュージシャン、ストリッパーなどをしていたが、もっと自由に生きたいと仕事を辞め、犬やハトと暮らし始めた。若い頃、ひょんなことからドナーになり8年間、精子バンクに精子を提供して収入の足しにしていた。
ジェフリーに会うことを決意したジョーエレンたち。その生き方に戸惑いつつも、ただのドナーではなく、ジェフリーという存在とのつながりを確認する。一方、ジェフリーも、彼らとの出会いに確かな実感と今までにない感動を覚える。
これが精子ドナーではなく、色を好む男性の不倫歴の末に生まれた子どもたちだったらどうだろう・・・こんな乗りで「同窓会」を開くことはあり得ないでしょうね。
なにか釈然としないものが残ります。
すると、こんな記事も気になってきます;
■ 祖父の精子で誕生118人…体外受精、17年間で(2014年7月28日:読売新聞)
夫婦以外の卵子や精子を使った非配偶者間体外受精の実施を国内で初めて公表した諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町、根津八紘やひろ院長)は、これまでに夫婦79組が、夫の実父から精子提供を受け、118人の子どもが誕生したとする結果をまとめた。31日、東京都内で開かれる日本受精着床学会で発表する。
同クリニックによると、1996年11月から昨年末まで、夫に精子がない110組が、夫の実父(50歳代~70歳代)の精子と妻の卵子で体外受精をした。子どもを得た79組中19組が2回以上出産した。移植1回当たりの妊娠率は38%だった。
非配偶者間体外受精に関する法規定はないが、日本産科婦人科学会(日産婦)は体外受精を夫婦間に限っている。一方、厚生労働省審議会は2003年、匿名の第三者からの体外受精を認める報告書を出し、兄弟姉妹らからの提供は人間関係が複雑になりやすいなどの理由で当面は認めないとした。
匿名の第三者の精子を妻の子宮に注入する非配偶者間人工授精では、国内で49年以降、1万人以上が生まれたとされる。日産婦も97年に追認している。
国内の多くの医療機関では、精子がない夫婦が子どもを望む場合、選択肢として非配偶者間人工授精と養子縁組のみを示している。
根津院長は「身内からの提供を望む夫婦は少なくない。カウンセリングを重ねて、慎重に行っている。血のつながりがあった方が、提供者家族も含めて良好な家族関係を築きやすい、出自が明確になるという面もある」と話している。
医学的には、妻と義父との関係では近親婚にはなりませんが、社会的・倫理的な問題があります。
実際に妻が夫の父親と性行為に及ぶと不倫、子どもができると家庭崩壊という流れになるのがふつう。
それが不妊治療という目的では正当化される?
私には是非の判断ができかねる問題です。