かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

また好きだった作家が一人、逝ってしまった。

2005-06-13 22:18:49 | Weblog
私の場合、小説を書いている最中、中盤の切所に当たるところで、いくら時間をかけても終わりそうにないという錯覚に囚われます。もとより筆ならぬキーボードを叩く手が遅いがために遅々として進まぬお話に自分でやきもきしているだけなのですが、「早くクライマックスを書きたい」「早く終盤を書きたい」と思う余り、なかなか先へ進まない自分の書きっぷりに苛立ちを覚えているのです。それなら先に終盤を書いておけばいいようなモンなんですが、何故かこれだけはゆずれないのですよ。おかげで今日も中盤の泥沼をせっせとかきわけかきわけ地道に前に進んでおります。

作家の倉橋由美子(くらはし・ゆみこ)が10日、亡くなったそうです。それが判ったのが13日の今日だったとか。享年69歳。合掌。
倉橋由美子と言っても知っている人はどれくらいいるか判りませんが、「大人のための残酷童話」というベストセラーも著書にありますから、結構有名なんじゃないかと思います。私はこの人の作品では「ポポイ」という、美少年の首だけを愛でる娘の物語が好きでした。新潮文庫の、確か全文100ページほどの薄っぺらい本でしたが、これを読んで以来、私はこの不気味でアブノーマルでエロチックで幻想怪奇趣味的な作品の数々に魅せられたのでした。前は澁澤龍彦などと一緒に並べていたのですが、今は多分ラヴクラフト辺りと一緒にどこかへ埋まっているでしょう。これは是非発掘して読み返してみたくなりました。追悼と言うほど真摯な積もりもないですが、好きだった作家が亡くなったときくらいは少しまじめに読み返しても罰は当たらないかな、と思います。
 ところで何故「ポポイ」から読み始めたかというと、もちろん倉橋由美子という名前も知らない時代のことなのですが、私は中身も見ずに「題が変わってて面白いから」とか、「表紙のデザインが気に入ったから」と言う理由で本やレコードを求めることをよくやっておりました。もちろんどうしようもなく自分とはあわないものもたくさんありましたが、中にはこの「ポポイ」のように、見事に琴線に響く掘り出し物があったりしたもので、そう言うちょっと御馬鹿な買い方が止められなかったりしたものです。確か澁澤龍彦もそうやって手にしたんだと思います。何となく、「マリみて」の鳥居江利子様がやるような買い方だな、と今書きながら思いました。なんのことか判らない方は、是非「マリア様がみてる」をお読み下さい(笑)。
戯れ言はともかく、今の作家さんの中に、そういう風に食指をそそる方が出てくればいいんですが、残念ながら私の好きな方々は、ほとんど三途の川の向こう岸にいらっしゃるようです。
コメント (3)
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