ルイガノ旅日記

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思い出の一枚〜《サン=ラザール駅》 クロード・モネ

2021年09月25日 | 絵画や音楽
秋分を迎え、北九州でも朝夕はめっきり涼しくなってきました。日中の気温も26~27度くらいまでしか上がらず、まさに「暑さ寒さも彼岸まで」を実感する今日この頃です。
さて思い出の一枚、今日はモネの《サン=ラザール駅》です。


2013年4月、テレビ東京の『美の巨人たち』でこの絵が取り上げられ、パリのサン=ラザール駅や当時の時代背景などについて知る機会がありました。
この絵が描かれた1877年は、イギリスで始まった産業革命の波がフランスにも押し寄せ、フランス全土に鉄道網が広がりつつある時代。「駅」という概念が生まれて間もない時期で、金属やガラスを多用したサン=ラザール駅は、蒸気機関車とともに、時代の最先端を象徴する存在でした。当時、家族とともにアルジャントゥイユに住んでいたモネは、ラザール駅周辺に部屋を借りて移り住み、この駅をテーマに12枚の連作を残しました。この《サン=ラザール駅》はそのうちの一枚で、パリのオルセー美術館が所蔵しています。

サン=ラザール駅でモネが描こうとしたのは、駅構内に充満する蒸気機関車の煙や水蒸気、ガラスの天井を通して降りそそぐ太陽の光、響き渡る様々な音や人々の喧騒だった……というような解説をうっすらと憶えています。
『美の巨人たち』のナレーションは、俳優の小林薫さん。落ち着いていながら親しみやすく、聞く者を惹きつけてやまないソフトな語り口が、今も耳に残っています。番組では数々の名画が紹介されましたが、なかでも《サン=ラザール駅》は最も印象深い絵のひとつでした。モネは光や風、空気感を描いた画家だと言われますが、《サン=ラザール駅》はそんなモネの意欲作だったのでしょう。


この《サン=ラザール駅》への思い入れが強かったので、帰国後、絵画複製会社に依頼して描いてもらったレプリカです (^-^)ゞ


駅の構内だけではなく、その周辺を描いた作品もあります。こちらは12枚のサン=ラザール駅連作の一枚、《ヨーロッパ橋 サン=ラザール駅》。マルモッタン美術館所蔵ですが、2016年1月、福岡市美術館で行われた『モネ展』で原画に接することができました。(写真はその時に買った絵葉書です)


こちらは、現代のサン=ラザール駅。1837年に開業したパリで最も古い歴史を持つターミナル駅で、ノルマンディー方面への列車が発着するほか、5本のメトロが連絡しています。パリで1週間滞在したホテルが、メトロ12号線で一駅隣りのトリニテ駅近くだったのも、この絵が結んだ縁のように感じられて思い出深いです。


駅構内にも入ってみました。モネが描いた《サン=ラザール駅》のプラットフォーム。ガラスを組み込んだ三角屋根が印象的ですね。


こちらは、今日の一枚を所蔵するオルセー美術館(セーヌ川クルーズで船上から撮った写真です)。セーヌ川を挟んで向かい側には、ルーヴルやオランジュリー美術館があります。
元々この建物は、1900年のパリ万国博覧会に際して、オルレアン鉄道が建設したオルセー駅。その後、様々な用途に使用されましたが、美術館としてオープンしたのは1986年。19世紀美術の展示、わけても印象派の作品を多く収蔵することで世界的に名を知られるオルセー美術館ですが、開館したのは意外と最近だったんですね。
新型コロナの影響で休館していたましたが、今年5月19日から営業を再開したそうです(日時指定の事前予約が必要)。


海外の多くの美術館では作品の撮影が認められていますが、どういう訳か当時のオルセーは撮影禁止でした。(撮影禁止だったのはわずか数年で、この後すぐに撮影OKになったようです)
駅舎の面影が残る吹き抜けが印象的なオルセー美術館の内部。館内スタッフの方にフロアの写真はOKと確認して、ここだけ撮らせてもらいました。


オルセー美術館には巨大な壁かけ時計が二つあります。セーヌ川に面した時計越しに見えるのは、対岸のルーヴル美術館。この翌日は、まる一日かけてルーヴルを観て歩きました。


これは、日本であらかじめ購入しておいたミュージアム・パスとセーヌ川クルーズのチケットです。パリの街は観光客で溢れており、美術館などの各種施設は大混雑&大行列があたり前。チケット窓口での行列を回避できるミュージアム・パスは、実に頼もしい存在でした。

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11 コメント

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オルセー美術館 (tango)
2021-09-25 09:08:50
十数年前に行きましたルーブル美術館
オルセー美術館
遠い記憶になりました!
海外に行く機会もなくなりましたが,いけるときに
いっておく・出来るときにやっておく・・
今頃の時世になり過去に海外に行けたことを
幸せにありがたく思います。ルーブルは並びましたが
オルセーはわりに楽に見学ができた記憶があります。
記憶が薄れていくことが残念!プラド―の美術館の
記憶。オランダの美術館(真珠の首飾り)・・・
何処で何を見たか忘れつつあありますよ~~
秋の気配が濃く過ごしやすいいい季節です(^^♪
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Unknown (tkgmzt2902)
2021-09-25 11:37:49
久しぶりに思い出しました。何回行っても飽くことのないパリ。
こうした芸術に支えられた深い歴史を内包しているからですよね。
ジベルニー、フォンテーヌブロー、ベルサイユと個人旅行をしやすいところです。
感動を共有しているだけで、とても親近感を覚えるのも芸術のいいところですね。
返信する
re:オルセー美術館 (Duke)
2021-09-25 14:41:58
tangoさん、おはようございます〜 (^-^)ゞ
私もフランスは7年前になります🇫🇷
パリとボルドーだけに絞って、ゆっくり見て回りました。
どちらの都市も、歴史や伝統文化の重みを感じさせる素晴らしい街並みでした。
もう一度訪ねてみたい場所はたくさんありますが、パリも間違いなくそのひとつです。
本当に行ける時に行っておかないと、情勢や環境がどう変わるかわかりませんね。
年齢とともに、旅のスタイルも変えざるを得ない時もくるでしょう。
そうしたことも受け止めながら、柔軟に旅を楽しみたいと思います。
そのためにも、コロナが早く収束してくれるといいですね。

ここ数日で秋の空気に入れ替わったような気がします。
気持ちの良い季節が長続きするといいですね。
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Unknown (Duke)
2021-09-25 14:57:42
tkgmzt2902さん、こんにちは (^-^)ゞ
何度もパリを訪ねていらっしゃるのですか?
それは羨ましい限りです。
私はこの時が初めてで、それ以来訪ねる機会がまだありません。
飽きることのないパリの街、わかるような気がします。
素晴らしい芸術や文化を育んできた歴史が、今のフランスのバックボーンになっているのでしょう。
だからこそ、何度行っても違う顔を見せてくれるのだと思います。
飲兵衛の私は、パリ滞在間2日ほどボルドーに行き、シャトーめぐりをしてきました (^-^)ゞ
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ステキ (hirorin)
2021-09-26 11:08:18
私は昔にルーブルに行っただけで、もうその記憶も薄れかけています。
オルセー美術館所蔵展は、日本でするといつも満員ですね。
日本は印象派が大好きですもん。

モネと言えば「睡蓮」ばかりが連想されますが、このような駅の絵も!
蒸気の様子にモネっぽさが感じられます。
ヨーロッパの古い駅舎っていいですよね。本当に映画に出てくるワンシーンのまま。
どうして日本は駅舎を新しくするんだろう。
大阪地下鉄御堂筋線の駅は、レトロで素晴らしいのに変な改築案が出て、よく反対運動がされてます。

「美の巨人たち」前のナレーションは小林薫さんで渋かったんですが、今は色々な人がやっています。
うちは「びわ湖放送」で、見るんですがかなりずれての放送になります。
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re:ステキ (Duke)
2021-09-26 14:35:15
hirorinさん、こんにちは〜 (^-^)ゞ
ルーブルもオルセーもすごいの一言ですね。
好きな絵を一枚でも観ることができたら大満足なのに、次から次に名画のオンパレード!
しかも、日本で観るのと比べたら圧倒的に人が少ないいですよね。(ルーブルでも、モナリザとミロのヴィーナスの部屋はそれなりに混雑してましたが……)
日本人、印象派好きですよね〜
恥ずかしながら、私もその一人なんです(笑)
この絵の水蒸気や煙、光の表現は、モネが一番描きたかったものだと思います。

ヨーロッパの駅舎、どっしりとした重厚感があって素敵ですね。
やはり石造りの文化なので、根本的に建て替えの発想はないのでしょうか。
アパートなんかも、内装を変えるだけで構造はそのままですものね。

美の巨人たちは、ビデオに撮って欠かさず観てました。
小林薫さんのナレーション、よかったですね〜♪
最後の方は、蒼井優さんや神田沙也加さんも出ていました。
「新美の巨人たち」も初めは観ていたのですが、番組の趣旨が変わったので、今は見ていません (^-^)ゞ
昔の美の巨人たちが懐かしいです〜♪
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思いでも薄れてますが、、、 (chorus-kazeアッコ)
2021-09-28 21:21:34
こんばんは
私は、オルセー美術館が修復中の1986年に
主人の会社の仕事で同伴が、初めての海外で
パリ2週間でした。
主人が日中仕事の時、勇気を出して一人で
修復中のオルセー美術館を
人に尋ねながら行きましたが
その時の記憶は
人気のない道をひたすら歩いて行ったことや
板張りの入り口から入ったことしかなく
定年退職まえから病気をした主人が、その後快復して
2006年にリハビリ旅行として、ロンドンと
ウォータルー駅からTGVでパリに行き
サンラザール駅も乗り降りで行きました。
この時、1986年には観ることができなかった
新しいオルセー美術館を見学しましたが
駅構内をリフォームしたという
時計のあるガラス壁が印象深く思い出されます。
ルーブル美術館も、1986年にはなかった
ガラスのピラミッドが設置されていて驚きました。

86年の時に、ルーブルという地下鉄の駅に
美味しいラーメン屋さんがあったのが
オーナーが変わり、味も変わり残念なことでした。
行ける時に行っておいて良かったとつくづく思いますね。
長々とお邪魔しましたm(_ _)m
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Unknown (chorus-kazeアッコ)
2021-09-28 21:27:30
1984年に行って修復中でした。その2年後には
綺麗な美術館になっていたのですね。
34歳の時に行きました。歳バレていますが、、。
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re:思いでも薄れていますが、、、 (Duke)
2021-09-28 22:37:28
chorus-kazeアッコさん、こんばんは♪
慣れない土地、しかも初めての海外でお一人で行動するのは勇気がいったでしょうね。
不安なお気持ち、お察しします。
それでも好きな絵画を観たいという思いが優ったのですね。
オルセー美術館の開館は1986年とされていますが、仮設のような状態で展示されていた期間があったのは知りませんでした (^-^)ゞ

ご主人様の容態が快復され、ロンドン〜パリの旅行ができて本当によかったですね。
TGVでの移動など、素晴らしい思い出を残してくださったことと思います。
いま調べてみると、ユーロスターを使った場合、ロンドン〜パリの所要時間は2時間30分だそうです。
パリからボルドー(TGV)は3時間40分かかりましたから、ずっと近いのですね。

私もルーヴル美術館に行った時は、ミュゼ・デュ・ルーヴル駅を利用しました、
ルーヴルのカルーゼル入口に直結しているので、地上に出ることなく最短距離で美術館にアクセスできて便利でした。
ラーメン屋さんには気づきませんでしたが……(笑)

懐かしいお話を聞かせていただき、私もパリのいろんな風景を思い出すことができました。
ありがとうございました。
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追記です (chorus-kazeアッコ)
2021-09-29 01:35:46
記憶が混在してしまって、、
TGVではなく「ユーロスター」でしたね(笑)
食事をしながら、美しい自然の景色を見ながら
パリまで行ったことを思い出しました。
クリスマスの時期で、ロンドンに着いた時は
お昼の3時だというのに雨で真っ暗でした。
ロンドンも、パリの街中も、エッフェル塔も
シャンゼリゼ通りも、イルミネーションが
ほんとに綺麗でした!
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