平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

セレブリティ

2007年09月26日 | 洋画
 主人公リー・サイモン(ケネス・ブラナー)は40歳。
 旅行ライター。英語教師ロビンの夫。
 このまま終わっていいのかと思っている。
 ロビンとのセックスはきまじめで物足りない。美女と最高のセックスをしたい。
 そこでリーが決心したのは今までの人生を「トイレに流すこと」。
 ロビン(ジュディ・デイヴィス)と離婚をする。
 セレブリティの仲間入りがしたくて芸能ライターになり、自分の脚本を売り込む。
 小説家にもなろうとする。しかし他の圧倒的才能の前に怖じ気づく。批評が怖い。腰を据えて書くことが出来ない。

 ウディ・アレンの主人公たちに共通する「現状に満足できない人間」だ。
 そして彼らはあがく。
 それが悲喜劇になる。
 映画俳優ブランドン(レオナルド・ディカプリオ)への脚本売り込み。
 ブランドンの奔放・無軌道な生活(コカインパーティ)についていけない。自分は彼の様なセレブになりたいが果たしてなれるのか?と思う。
 売り込みの脚本もおざなり。ブランドンはギャンブルやボクシングに興味があるようだ。
 自分の求めた世界が違うのではないかと思ってしまう。
 恋人とも別れた。
 別の女性を好きになってしまう。それは恋人が自分の部屋に移ってきた日。
 恋人は出ていき、彼が腰を据えてやっと完成した小説も海に捨てられる。
 また新しい恋人とも別れてしまう。
 相手を独占した気持ちといっしょにいる時間が楽しければいいじゃないと言う相手。彼は嫉妬し喧嘩してしまう。

 彼は自分の理想の生活を求めて、結局すべてを失ってしまう。
 別れた妻ロビンはニュースキャスターとして成功し、新しい伴侶に恵まれて幸せそうだ。
 この皮肉。
 ラスト「HELP」の文字が描かれた映画の画面を見る彼の表情が何ともフクザツだ。


 ウディ・アレンは「現実に満足できない人間」を様々な形で描いてみせる。
 喜劇・悲劇。
 時には「マッチポイント」の様な殺人事件でも。
 そして、その根底にあるのは「愛を求める孤独な人間」の姿だ。


※追記
 主人公リーと対極にあるのが元妻のロビン。
 彼女は現実を完全に肯定する。
 新しい恋人との結婚。
 彼女は「幸せすぎて罪の意識を感じる。他の人たちは皆迷って孤独なのに申し訳ない」と言って結婚式の当日、逃亡したりする。
 無器用ながらも少しずつ自分を変えて行こうとする。
 セックスへのコンプレックス。
 カトリックの家に育てられ、セックスの最中に考えているのは「磔にされたキリスト」。
 そんな彼女が新しい恋人のためにプロに「男を喜ばせる方法」を習う。
 もともとは学校の教師でニュースキャスターなんかになれないといいながら、人キャスターになってしまう。
 すべてを失う主人公リーとあらゆる者を得ていくロビン。
 ふたりの違いは「現実を幸せに思えるか否か」「無器用ながらも前進していく努力が出来るか否か」。
 この辺に人生を幸せに生きる奥義があるのかもしれない。



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