平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

終戦の日~石橋湛山の『小日本主義』をあらためて考える。朝鮮、台湾、満州を棄てろ、と湛山は説いた。

2023年08月15日 | 事件・出来事
 本日は終戦の日。
 今回は政治家・石橋湛山の『小日本主義』について語りたい。

『小日本主義』とは次のようなものだ。

 世界列強の流れに乗ってそれを真似るべきは愚かである。
 例えば満州を棄てる、山東を棄てる。
 その他、志那が我が国から受けつつありと考えうる一切の圧迫を棄てる。
 その結果はどうなるか?
 また例えば、朝鮮に台湾に自由を許す。
 その結果はどうなるか?
 英国にせよ米国にせよ、非常の苦境に陥るのであろう。
 彼らは日本にのみかくの如き自由主義を採られては世界における、その道徳的地位を保つを得ぬに至るからである。
 その時には志那をはじめ世界の小弱国は一斉にわが国に向かって信頼の頭を下ぐるであろう。
 インド、エジプト、ペルシャ、ハイチ、その他の列強属領地は、一斉に日本の台湾・朝鮮に自由を許した如く、我にもまた自由を許せと騒ぎ起つだろう。
 これ実に我が国の地位を九地の底より九天の上に昇せ、英米その他をこの反対の地位に置くものではないか。
 ここにすなわち「身を棄ててこそ」の面白味がある。
 遅しといえども、今にしてこの覚悟をすれば、我が国は救われる。
 この道は、同時に我が国際的位地をば、従来の守勢から一転して攻勢に出でしむるの道である。
                           『石橋湛山評論集』(東洋経済新報社)


 要約すると、こういうことだ。

・日本が植民地にしている朝鮮、台湾、満州などを棄てろ。
・そうすればアジアなどの国々は日本を支持し、尊敬するだろう。
・欧米も居心地が悪くなり、最終的に自分の植民地を手放すだろう。

 なかなかの卓見である。
 引き算の発想であり、仏教的発想でもある。
 人は何を持つから執着する。
 持つから、もっともっとと欲しくなる。
 一方、棄てれば自由になれるし、新しい道が開ける。

 もちろん、これだと夢・空想の政治理論になってしまう可能性がある。
 だが、湛山は具体的な数字をあげる。

 さらにそれらを棄てていかに日本を守るかという事であるが、経済・貿易の観点から見て、
 朝鮮・台湾・関東州、この三地合わせて九億円の商売をしたに過ぎない。
 これに対し、米英その他の国との貿易は二十四億円を超える。
 朝鮮・台湾・樺太を領有し、関東州を租借し、志那・シベリアに干渉する事が我が経済的自立に欠くべかざる要件などという説が全く取るに足らざるは明白である。


 つまり、
 植民地経営より、欧米などと貿易した方がよりはるかに経済的に豊かになる、ということだ。
 植民地経営にはコストもかかるし、他国との紛争も起こるし、実は効率的でない。

 植民地拡大より経済優先。

 実際、現実は石橋湛山の言ったとおりになった。
 戦後の日本だ。
 さまざまな国と貿易をして、戦後日本は経済大国になった。
 経済一本に専心した結果、高度経済成長を成し遂げることができた。

 小日本主義と大日本主義。
 戦争突入前の日本にはふたつの道があった。
 残念ながら小日本主義は少数派で、日本は拡大路線を歩み、1945年8月15日に破滅するのだが、
 2023年の現在、改めて石橋湛山の小日本主義を考えてみる必要があると思う。

 つまり軍事費拡大よりも貿易・経済。
 12兆の軍事費拡大で、日本はどんどん疲弊していくだろう。
 ていうか、アジアの国々は日本よりはるかに少ない軍事予算で何とかしている。
 要はアメリカの代わりに、日本が「アジアでの世界の警察官」をやるということなのだろうが、
 日本にそんな余裕があるのだろうか?
 もっとやるべきことがある気がする。


コメント (13)    この記事についてブログを書く
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13 コメント

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Unknown (2020-08-15 21:07:49)
2023-08-16 07:51:00
日本が世界中から「スゴい」と尊敬されているとすれば、3つ理由があると思います。
1.西洋の植民地主義に異を唱えた(しかし、自分たちも植民地主義政策をとって、アジアの開放とごまかしていたので、それを反省していることが大前提)
2.戦後の日本は安直に軍事力に訴えなかった
3.日本の文化力の高さ


ところが、今「愛国的」「日本スゴい」とおっしゃる人たちはどうでしょう
1.戦前の日本は、西洋植民地主義からの解放を唱えながら、日本自身も植民地主義的な行動を取ったわけですが、日本自身の行動には触れずにダンマリ
2.戦後の日本が安直に軍事力に訴えなかったことを「戦後憲法が日本人を骨抜きにした」「みっともない」と、トンチンカンな解釈をして否定する
3.文化を支える組織や機関を切り捨て、文化にカネを出すことを惜しむ。科学博物館が光熱費を払えず、東京芸大が学生用のピアノを売り払うありさま

これからの日本は、もう世界から尊敬されなくなるかもしれないと思います。
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おそらく同じ意味でおっしゃってるのだと思いますが (コウジ)
2023-08-16 09:27:30
2020-08-15 21:07:49さん

いつもありがとうございます。

ほとんど合意ですが、一点、少し認識が違う点があります。
おそらく2020さんも同じ意味でおっしゃってるのだと思いますが、

>西洋の植民地主義に異を唱えた
これは侵攻を正当化するための「大義名分」「建前」だと思います。
本音は、日本の経済的に行き詰まりを打開するための植民地拡大。

もし植民地解放という目的で戦争したのなら、解放した時点で、その国の独立を認めるはずです。
しかし、現実は2020さんが書いていらっしゃるとおり、「日本自身も植民地主義的な行動を取った」。
シンガポールを陥落させてもマレー半島はマレー人の手に戻らず、シンガポールは「昭南市」に。

あるいは視点を変えれば、他国の解放のために莫大な戦費を使い、自国の兵を犠牲にする、お人好しの国がどこにあるでしょうか?
その裏には必ず経済的な理由があるはずです。

もちろんインドのチャンドラ・ボーズといっしょに戦った日本人などは「アジア解放」の理想を持っていたと思います。
戦争中ではありませんが、孫文を支援した宮崎滔天などの右派もそれを掲げていました。
しかし、それは少数派。
彼らの理想は俗物どもに利用され、空洞化され、日中戦争あたりから変質しました。

人間の行動原理って、「理想」や「理念」よりは「経済的動機」の方が大きいんですよね。
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ホンネとタテマエ (2020-08-15 21:07:49)
2023-08-16 10:03:39
>>西洋の植民地主義に異を唱えた
>これは侵攻を正当化するための「大義名分」「建前」だと思います。
本音は、日本の経済的に行き詰まりを打開するための植民地拡大。

補足ありがとうございます。その通りです。
考えてみればわたしの初めてのコメントは3年前の8月15日で、そのときにも、おっしゃるような「ホンネとタテマエ」について、しかも「当時の日本人は社会上層部のエリートになるほど、東亜の開放というタテマエを信じていなかった」と書き込んでいました。

おっしゃるとおりです。
返信する
一寸ズレてますが… (半沢)
2023-08-16 18:18:57
コウジさん今日は
記事の作成お疲れ様です

余談ですみません、昨日は終戦記念日でしたね。
そんな中 また閣僚に依る靖国神社参拝と言う暴挙。
此の施設は先の大戦の侵略戦争を美化・正当化する悍ましい場所です。日本会議の
連中も参拝したのだろう。近隣諸国から反発を招く事は当然です。馬鹿な輩…
ま、A級戦犯も祀られているどころか そうあの戊辰戦争に依る新政府軍の
戦没者が合祀されている野蛮な施設。
私達 会津藩は絶対に許さない
返信する
もう3年になるんですね (コウジ)
2023-08-16 22:04:41
2020-08-15 21:07:49さん

やはりそうでしたか。
もう3年になるんですね。
今後ともよろしくお願いいたします。
返信する
戦没者は何を思う? (コウジ)
2023-08-16 22:15:47
半沢さん

X(ツイッター)に昨日の靖国の画像がUPされていました。
内容はお腹の出たおじさんの日本兵コスプレや国旗をもったおじさん、おばさんの行進など。
彼らにとっては年に一度の楽しいイベントなんでしょうね……。
祀られている人達は何を思うのでしょう?

靖国の食堂では、特攻の母の親子丼と会津の蕎麦セットが1628円だとか。
「なぜ会津?」とツッコミを入れている人がいました。
返信する
アジアアフリカ人か?名誉白人か? (2020-08-15 21:07:49)
2023-08-17 05:13:36
タイトルにも書きましたが、ウクライナ戦争以来、日本の政府は「西側諸国とともに、自由と民主主義社会を守る」といった言葉をしきりに唱えるようになりました。
自由と民主主義自体に異議はありません。専制主義に比べればなんぼかマシです。
ただ、日本がそんなにエラそうに「自由と民主主義」を言える社会かというと、近年そうとも思えなくなってきたんですね。
以前のコメントにも書きましたが、台湾社会には「台湾は中国系住民のものではない、台湾原住民のものだ」と言える自由があるようです。でも日本で「沖縄は米軍のものではない、沖縄県民のものだ」というと、ネット上では「現実社会を見ろ」とか「中国の手先」とか「売国奴」といった罵声があふれます。現実社会では、そこまでひどいことになっていないのが救いですが、ネット愛国者が現実社会にもじわじわ侵み出してきたように、このままでは時間の問題と思います。

そもそも「欧米西側社会」は、つい80年から100年くらい前まで「自由と民主主義は白人由来のもので、有色人種にはそんな高級な概念は理解できないし、民主主義社会など運営できないだろう」と見下していました。
アジアアフリカ諸国の人たちは、それを覚えているからこそ「西側国際社会が唱える自由と民主主義」に冷ややかな目を向けているわけですが、日本社会はそれを理解しているでしょうか。
日本は今、かなり危うい立場に立っているように思います。
アジアアフリカ諸国の人たちの気持ちを理解しながら「自由と民主主義」を提唱するのか、それとも、白人でもないのに白人のつもりになって「名誉白人」的に西側社会に盲従していくのか…

それでなくても、欧米西側社会の一部には「アラブの春は失敗した。やはり有色人種に民主主義は無理だったんだ」とする見方もあるようですし、もともとロシアやウクライナを「ビザンチン帝国的で政教が癒着した遅れた連中」と考える見方もあるようです。
こういう人たちから見れば、ロシアもウクライナも「正教会の後進国」といった見方になるでしょう。

実際の国際社会は「正義の西側先進国連合と独裁国家連合」といった単純なものではないようです。
本当に大丈夫なんでしょうか…
返信する
中国的な(儒教的な)靖国神社 (2020-08-15 21:07:49)
2023-08-17 05:38:07
以前のコメントにも書きましたが、初めて靖国参拝に行った戦中派の父親が、軍服コスプレのお兄さんたちを見て愕然として、「あんなふざけた連中を放置しているのはけしからん。二度と行くか」と、立腹して帰ってきました。
まあ、マジメに考えればそうなりますよね。

ところで、タイトルにも書きましたが、一部の歴史学者や社会学者が指摘しているようです。
つまり「靖国神社は日本神話や日本的アニミズムとはつながっていない特異な状態。戦死者をまつるというが、実際は忠君という基準で選別されており、その基準は儒教的中国的な概念に近く、古来の神道からは外れている」ということなんですね。

恥ずかしながら指摘されるまで気がつかなかったわけですが、いわれてみればなるほどです。
返信する
形ばかりの民主主義 (コウジ)
2023-08-17 09:26:21
2020-08-15 21:07:49さん

日本に民主主義は根づいていない気がします。
GHQから与えられたもので、自ら勝ち取ったものではありませんし、学校でも積極的に教えません。
自民党の保守系議員は世襲ばかりで、いまだに戦前の国体を引きずっている様子。
だから西欧から「民主主義を理解していない」と言われても仕方ないかもしれませんね。
一応、民主主義の体裁はとっていますが、三権分立は機能していませんし、中身は空っぽです。

ネットでよくあるのは「選挙で勝ったのは与党なんだから与党のやることに文句を言うな」という言説。
でも、民主主義って「少数者の意見も取り入れて、政策をより良いものにしていく」というシステムなんですよね。
例にあげていらっしゃった沖縄の件もそうですが、日本人の知性の劣化はかなり進行しているようです。

「嫌中」がじわじわ浸透して来ているのは僕も感じます。
一般の方でも、ネトウヨさんほど過激ではありませんが、その傾向が強くなっている様子。
だから行く時には一気に社会が国家主義に行ってしまう気がします。

この状況を打開するには──
国民が国家主義の怖ろしさを実感し、グレート・リセット=壊滅的打撃を経験するしかない気がします。
つまり1945年8月15日の状態に戻るということです。
それでやっと生まれ変われますし、民主主義も根づく気がします。
最悪の道ではありますが……。

靖国神社は、もともとは東京招魂社。
神道の系譜から外れている神社なんですよね。
創設目的が「国家のために殉じた人物を祀る神社」なので、儒教的な色合いが強くなるのでしょうね。
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Unknown (象が転んだ)
2023-08-17 13:51:01
満州事変で勢いに乗り、日中戦争(日華事変)でも図に乗り、勢いと妄想だけで邁進した結果、アメリカにやられるべくしてズトンとやられた。
(欧米の列強のマネをして)中国大陸や朝鮮半島に侵略するではなく、自国の防衛だけを考えてればよかった。
小さい日本、そんなに武装してどこへ向かうって感じですよね。
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