平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

大河原滋 「花より男子2」

2007年01月21日 | キャラクター
 「花より男子2」の大河原滋。

 作者はふたつの意味を彼女に付加している。
 ひとつは「お嬢様らしくないお嬢様」。
 もうひとつは「つくしの分身」。(滋はつくしに「同じにおいがする」と言う)

 「お嬢様らしくないお嬢様」で読者・視聴者の先入観を裏切り面白くさせ、「つくしの分身」にすることで、恋のゆくえを混沌としたものにした。これが普通のお嬢様キャラだったら、つくしが司を掴まえるのは、よりたやすかったであったろう。

 さて、この滋のキャラ。
 ともかく行動が突飛。
 司の婚約者と発表されて「これドッキリ?」とリアクションする。
 さらに「オリジナルソング」をパーティで披露。
 「あっち向いてパン!」と言ってお嬢様たちを殴る。
 平気で「ウンコ」に行く。
 司のことを「頭のおかしい男」と言う。(これにはつくしも同意)
 司に「恋愛してやってもいいよ」と言い、「調教してやるよ」と言って殴る。
 司の耳をかじって司が真っ赤になると、「かわいいとこあんじゃん。久々にドキュンかも」と言う。

 しかし破天荒なだけでは、最初は面白くて読者・視聴者はついてきても長くは続かない。
 政略結婚させられる苦しみを表現する。
 司がダサぞうではなく、芯の通った男であることがわかり「私の人生捨てたもんじゃない」と言う。
 頭もいい。また、ある点神経も細やかだ。
 美作らは滋をデートに誘って彼女の気持ちを自分たちの方に向けようとするが、そんなことには引っかからない。ちゃんと見抜いている。
 おまけに破天荒な行動も忘れない。
 ケーキ食べ放題→絶叫コースター→焼き肉食べ放題→爬虫類の地獄のデートコース。

 そして女性らしい面も。
 素早く気持ちが変わっていくのも滋の特長だが、最初は反発でしかなかった司への気持ちがすぐに恋愛に変わる。
 恵比寿で司が誰に会うのだろうと思って、夜まで待っている。
 そして「つき合ってもいい」と司に言われて、つくしに抱きついて涙を流す。

 様々な角度から彫刻刀を入れられた見事なキャラクター造型だ。
 滋が登場したことで、この作品は大きな弾みがついた。

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花より男子2 第2・3話

2007年01月20日 | 学園・青春ドラマ
 主役の男女がすれ違ってなかなかくっつかないのは、「君の名は」(古い!)以来の伝統。
 「花より男子2」では、それをうまく作っている。

 つくし (井上真央) と道明寺司 (松本潤)の障害はこう。
★母親の妨害
★道明寺グループの社員と家族、100万人の生活
★腹を割って話せない司とつくしのプライド、意地の張り合い。
 閉ざした心(「話しても無駄じゃん」)。
★ハプニング。婚約者・大河原滋 (加藤夏希) とのキスを目撃。

 日常の小さなすれ違いから会社の大きなことまで、手を変え品を変え主人公たちに障害をもたらしている。
 視聴者は「どうしてここで誤解してしまうのか?」とか「確かに司の背負っているものは大変だよな。司はどうするんだろう?」などと思いつつ見てしまう。

 脇役もいい。
 特に花沢類 (小栗旬) 。
 つくしと司を見守っていて、的確なアドバイス。
 同時につくしに好意がある様。(静のことがあるが……)
 つくしと司のコミュニケーションを行う調整役でありながら、場合によってはつくしとくっついて、司とのバランスを崩す役も担っている。
 このふたつの役割を担っているところがいい。
 別の見方をすれば司がわがままで激しい王子様で、類は穏やかで包容力のある王子様だ。
 このふたりに見守られるつくしという図式は、女性の読者・視聴者にはこたえられない設定だろう。なぜならつくしは女性の読者・視聴者の分身であるからだ。

 さて、今回の各論だが、まず第2話では誕生パーティのシーンがいい。
 リアクションでキャラクターを描くということのお手本のようなシーンだ。

 誕生パーティでピアノを演奏することになる滋とつくし。
 ここで滋のリアクション。
 何と自分の作詞・作曲した曲を披露してしまう。ここでショパンなどを演奏してしまったら、ただのお嬢様キャラになってしまう。
 そしてつくしのリアクション。
 当然ピアノは弾けない。
 「パーティを壊してしまったら」という類のアドバイスを受けてメチャクチャに弾く。これでつくしのキャラが出る。
 おまけにこれに対する滋のリアクションがいい。
 「ファンキーじゃん!」
 招待客たちが皆顔をしかめる中、滋だけが違うリアクション。
 これで滋のキャラをさらに描いた。
 また、同時につくしと滋の人間関係も描いたリアクションでもあった。
 これをきっかけに滋はつくしを認め、友だちになる。(つくしは心の開ける友だちだとは思っていないが)
 そして次のシーンで滋がつくしの所に遊びに行っても不自然ではない。
 実にうまいリアクション表現である。

 第3話では司の心の動きが見事にせりふで表現されていた。
 前半で司は滋に言う。
「俺はおまえとは違う女と運命を共にしたいんだよ」
 しかし中盤では
「つき合ってくれ。おまえを好きになるように努力する」。
 つくしとのすれ違い、道明寺グループの社員と家族のこと、「滋はお嬢様には珍しくいい人だ」と言ったつくしの言葉を踏まえての発言だ。
 見事な変化。

 つくしと司の仲はさらに大きく広がった様だが、どの様にまとめあげるのか?
 作劇では問題をどんどん広げて拡大するのはたやすい。
 しかし物語は最終回がなくてはならぬ。
 広げに広げた問題をどう収拾して解決するかは作者の手腕である。
 次回以降が楽しみだ。

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アテンションプリーズ SP

2007年01月19日 | 職業ドラマ
 美咲洋子(上戸彩)が帰ってきた。
 今回は国際線のCAの訓練を受けてハワイへ。
 相変わらず。
 犬のフンを踏んづけて空港では麻薬犬に吠えられて取り調べ。
 犬のフンを踏んづけた靴はさらに意味を持ってきて、地面に残された靴から「美咲さんが誘拐された~」
 それは日本のや弥生(相武紗季)たちにも伝わって大騒ぎ。
 事件が雪だるま式に大きくなっていく。
 まさにギャグの王道。
 ギャグと言えば、浮気と聞いてキャラが豹変する関山ちゃん(大塚ちひろ)もいい味を出していました。
 キャラクターギャグですね。

 そして、このシリーズの大きなテーマは洋子の成長。
 物怖じすることなくストレートに人にぶつかっていけるのは洋子の才能、いい所。(物怖じするのは航空整備士の翔太(錦戸亮)に対する時だけ)
 そんな才能も手伝ってか、仕事は見事にこなしている様子。
 当然、自信満々になる洋子。
 しかし、洋子に足りないものがある。
 人を深く理解すること。
 人を理解しようとして努力すること。
 表面上楽しくやれるから、人の深い気持ちに気がつかない。
 自分のやり方だけで人に対しようとする。
 それで翔太(錦戸亮)とぶつかった。
 フラダンスを教えてもらっているリサ(原田夏希)とぶつかった。
「おまえ、人を怒らせる天才だな」
 落ち込む洋子。
 そこへ三神(真矢みき)登場。
「仕事は人間関係と同じ、相手を理解しようとすることから始まるんです」
 先入観なくフラダンスをするリサを見つめる洋子。
 ダンスから伝わる哀しみ、人を愛する心。
 それは今まで洋子が見えなかったこと。
 表面的なつき合いでは見えなかったこと。
 洋子はリサを理解し、彼女のために行動を開始する。 

 解決の仕方はいささかパターンだったが、洋子というキャラがよく描けている。
 洋子というキャラだからこそ、生まれた軋轢、葛藤。
 これが弥生や関山ちゃんだったら、別の葛藤がドラマになっていただろう。
 最後は洋子、優等生の発言。
「この仕事に終わりはないんですね。様々な人がいて、人の数だけサービスがある」

 この作品はCAものだが、実は学園ドラマ。
 主人公は毎回、先生から何かを学び成長する。
 誰が誰のことが好きで、恋の発展状況をウワサし合う。
 まさに学校のノリ。
 それにしても洋子誘拐の知らせでハワイまで行ってしまう翔太って……。

 最後に成田空港で「ありがとうございました」と三上に頭を下げた洋子のお辞儀はきれいだった。
 洋子はちゃんとCAになっているのだ。

★追記
 「アロハ」の心とは?
 「優しさ」「人を気持ちよくすること」「謙虚」「忍耐」。
 人に対する時の基本。

 
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のぞき屋

2007年01月18日 | コミック・アニメ・特撮
 次々と問題作を発表し続ける山本英夫。
 「のぞき屋」もその山本英夫の作品。

 「のぞき屋」は探偵。
 人の隠された心の裏を探る。
 主人公の見(ケン)は、探偵業よりこの人の心をのぞくことに情熱を傾けている。

 まずのぞいたのは女子高生のレイカ。
 父親の娘の素行を調べてほしいという依頼により調査を始めたのだが、驚くべき素顔が。
 援交の斡旋をやっている。
 友人に援交を斡旋し、わずかな手数料をもらう。
 しかしそれはお金が目的ではないらしい。
 レイカは援交が行われるホテルに盗聴器を仕掛けている。
 彼女は男と女のことを盗聴して、そこで繰り広げられる人間の愚かさを楽しんでいるのだ。
 そこに主人公の見は惹かれる。
 見が「のぞき屋」をやっている理由も「人間の愚かさ」を見てみたいからだ。
 見にはこんな考え方がある。
 「今の人間はうわべだけ繕って、仮面を被って生きている」
 よき家庭人、よき社会人、よき生徒。
 でも、それは嘘だろうと思っている。
 心の奥底にはもっとドロドロした欲望を隠しているだろうと。
 それを見は見てみたいのだ。

 アンチ・ヒーローである。
 今まで「正義の味方」の言ってきたことは、みんな嘘だと見は思っている。
 しかし、それだけだとドラマ性・エンタテインメント性に欠けると思ったのか、作者は面白い仕掛けを加えた。

 先程のレイカの時はこうだ。
 レイカの素行調査を依頼した父親。
 実はとんでもない変質者だった。
 娘のレイカを愛しているがそれは父親としてではなく男として。
 娘のスカートの中をのぞき、身体に触れてくる。
 レイカは「理想の家族」を演じることがトラウマになっていて、それが分かっていても拒絶出来ない。
 父親はレイカをスキーに誘い、夜、別荘で娘の身体を奪おうとする。
 そこに見が助けに来るというわけだ。

 通常のドラマなら、対象となる人物(今回はレイカ)の心の中を覗いて終わりになる所を父親のことを入れて、よりエロチックでサスペンス溢れるドラマにした。
 もうひとり心の闇を持つ人物を登場させることによって、ドラマをさらに盛り上げた。
 この作劇手法は以後のエピソードでも続き、例えば第2話のエレベーターガールのエピソードでは、自分の美貌を使い6人の男と遊ぶエレベーターガール美咲の心の闇を描きつつ、部屋中にゴキブリを飼っているストーカー男を絡ませた。
 通常なら美咲のエピソードとゴキブリ男のエピソードは別の話にしてもよかったのだが、いっしょにすることでさらに面白くなった。
 ドラマ+ドラマ。
 参考にしたい作劇手法である。

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今週、妻が浮気します

2007年01月17日 | ホームドラマ
 すごく難しい作品である。
 コメディなのかシリアスなのか?
 スタッフはその両方を目指した新しいジャンルの作品を意図している様だが、それが受け入れられるまで視聴者はついて来るか?
 第1話では違和感だけが残った。

 そして妻・陶子(石田 ゆり子)の浮気。
 恐らく陶子の浮気は現実なのだろう。
 もし、「イイ女になるためにエステ通いし、メールの男にはイイ女になるためにアドバイスをもらっていた」みたいなオチだったら、視聴者はこんなオチのために12話つき合わされたのかと思ってしまう。
 さてどんな展開になるか?
 吉田智子さん脚本、フジテレビ・共同テレビの製作作品だけにこのまま終わるとは思えない。
 あっと言わせてくれることを期待して次回も見るつもり。

 第1話は、堂々ハジメ(ユースケ・サンタマリア)のひとりで自己完結してしまっている部分が引っかかって、主人公に感情移入できなかった。
 妻の浮気疑惑。
 どういうことなのか聞けば済む話なのにそれをしない。
 結婚式のビデオを見たりして感傷に浸り、ひとりで悩みドツボにはまっている。
 偶然が多いのも気になる。
 接待の後、街で偶然に出会う。(陶子は送別会ということで背中の開いたドレスに丁寧な化粧)
 天体望遠鏡で見ると、男に送られてくる陶子の姿。
 いずれも偶然だ。
 妻の浮気に疑念を持つきっかけも携帯電話の取り違え。
 偶然の連続はドラマを興ざめさせる。
 また、今回のトラブルもハジメの自己完結だ。
 国際的な音楽家の独占インタビューの交渉を行うハジメ。
 しかし妻の浮気のことが気になって遅刻、おまけにマネージャーと喧嘩。
 結果、同じ出版社の人気雑誌「BUONO」にも迷惑をかけてしまう。
 ハジメは雨の中、土下座してトラブルは解決するが、このトラブルのそもそもの原因はハジメ。
 自分で問題を起こして自分で解決して。
 主人公がトラブルメーカーになる作品は他にもあるが、その解決に脇役がほとんど絡んでこないのが気になる。
 ユースケ・サンタマリアさんのキャラがなければ見ていてつらい主人公だったろう。
 気になること、引っかかることの多い第1話だった。
 
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東京タワー 第2回

2007年01月16日 | ホームドラマ
 東京に呑み込まれてしまった中川雅也(速水もこもち)。
 大学の仲間たちは皆、優秀に見える。
 劣等感、笑われたくない。バカにされたくない。
 やっと仕上げた絵には教授から「人に何かを伝えたいという気持ちがあるのかね」と批判される。
 もともと東京に来ることが目的で、絵の基礎も情熱もなかったから当たり前だ。
 大学に居場所がなくなる雅也。
 残された雅也の居場所は下宿。
 劣等感を抱え、貧乏でぱっとしない人たち。
 雅也にとっては劣等感を感じずに済む人たち。
 人は放っておくと易きに流れる。
 麻雀三昧。
 大学の仲間を坊ちゃんばかりでつまらないと言う大学に行かない言い訳。
 一方、金には苦労しているから一攫千金を求めて先物取引に手を出す。

 そんな雅也と同時並行で、息子を信じて懸命に働くオカン・栄子(倍賞美津子)の姿が描かれるから、観ている我々は「雅也、バカ野郎。しっかりしろよ」と言いたくなってしまう。
 大学を卒業して息子が立派な画家になることが夢だったオカン。
 そんな母に「大学を辞める」と言って悲しませた雅也に「何の努力もせずにそんなことするな」と言いたくなってしまう。

 それは雅也にいる人物たちも同じだった様だ。
 アパートのフリーライターは言う。
「東京に出て来たことがゴールになっている」
「大学の坊ちゃんたちの方が踏んばっているんじゃないのか?」
「ゴミだめにいる俺たちだって踏んばっている。食べていくために必死で手に職をつけようとしている。貧しい実家のためにやりくりして金を送っている。おまえといっしょにするなよ」
 風疹の看病でやって来た母も言う。
「何を弱気なこと言ってるの」

 栄子は基本的に甘い母親だが、言うべき時は言う。
 そうでなければ物語のバランスが崩れる。
 視聴者は思ってしまう。
「雅也は確かに弱い子だが、そうなったのもあなたが甘やかせたせいだろう」
 そうなっては今後の物語は成り立たない。
 非常にデリケートな作劇。

 それにしても今回見事だったのは、佐々木まなみ(香椎由宇)の雅也への言葉だ。
 東京タワー。
 雅也は初めて見た時が「一番輝いていた」と言うが、まなみは言う。
「そうかな。東京タワーを見ると、私はここからスタートしたんだなって思う」
 東京に呑み込まれ、すべてが色褪せてしまった雅也。
 それに対してまなみは、その後東京タワーだけでなく、様々な輝くものを見つけたのだろう。
 自分のまわりにどんどん輝くものが増えていったのだろう。
 この対照的な人物を描いて、180度違うリアクションを描いて、雅也を描き出した。
 雅也にとっては、どんな忠告よりも心に染みた言葉だったかもしれない。

 また作劇上の話になるが、
★直接的でない言葉で主人公に何かを伝える。
(まなみは自分の言ったことで雅也をどうこうしようとは思っていない。東京タワーの感想を述べただけである)
★180度違うリアクションを描いて主人公を描き出す。
 このテクニックは覚えておきたい。

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華麗なる一族 第1話

2007年01月15日 | その他ドラマ
 人間群像劇「華麗なる一族」。

 万俵鉄平(木村拓哉)と万俵大介(北大路欣也)の葛藤がメインのドラマだが、各登場人物それぞれがドラマを抱えているのがいい。
 そして鉄鋼と金融再編を素材にしながら高度経済成長が始まる60年代という時代を描いているのがいい。
 各人物のドラマはこうだ。
★万俵鉄平
 自分の会社の技術を信じ、TOYOTA、ソニーなどと共に自分の会社が発展していけることを信じている。
 情熱溢れる経営者。
 父親には「夢を見ることができなければ発展はありません」と言う。
 しかし障害が。
 自分の利権を守る帝国製鋼。
 自分を疎ましく思っている父親。
★万俵大介
 創業者の父への劣等感。大介は切り開くというよりは慎重派。
 父親似の鉄平に対する確執。
 自分の会社の社員と家族を守るという思いと金融再編を乗り切ろうという思い。
 妻と愛人の奇妙な関係。
★万俵銀平(山本耕史)
 自分に目をかけてくれる父親と父親に愛されていない鉄平との間にある葛藤。
★高須相子(鈴木京香)
 愛人という立場で万俵家で疎まれている立場。
 閨閥拡大、政略結婚。万俵家を取りしきりたいという政治への意思。
★万俵寧子(原田美枝子)
 華族の出。相子に強いられている屈辱的境遇。
★万俵二子(相武紗希)
 相子への反感。政略結婚させられそう。
★美馬中(仲村トオル)
 利用し利用される大介との関係。官僚的冷たさ。
★三雲祥一(柳葉敏郎)
 志の高い経営者を応援したい銀行家としての思い。
 しかし大蔵省からの天下りで頭取になった身。大同銀行の生え抜きからは疎まれている。
★大川元通産大臣(西田敏行)、永田大蔵大臣(津川雅彦)
 ふたりとも次期総裁候補で確執がありそう。
 
 これらの人物のドラマが絡み合って、ドラマはどこに流れていくのか?
 群像ドラマの醍醐味である。

 また、今回印象的だったのは、鉄平の高炉を見つめる目。
 高炉を持つ帝国製鋼に銑鉄(鉄成分だけを抽出した、純度の高い鉄の塊)をわけてもらっている現状。
 帝国製鋼が支配する製鉄業界に風穴を開けるには、自分のところが高炉を持ち、帝国製鋼の従属から脱却しなければならない。
 1シーンで鉄平の熱い思いを表現した見事なシーンだった。

 あと印象的だったのは三雲の頭取就任パーティ。
 政治家、官僚、経営者などが入り乱れて展開される野望と欲の世界。
 このパーティシーンは実にエキサイティングだった。 

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刑事コロンボ 殺しの序曲

2007年01月14日 | テレビドラマ(海外)
 コロンボが珍しく自己主張。
 犯人はオリバー・プラント。
 著名な会計士。
 シグマクラブというIQが高いメンバーの集まるクラブの会員でもある。
 そんなIQの高いオリバーにコロンボは言う。
「あたしだって時間をかけてねばり強くやれば、あなたたちに勝てるんじゃないかって思うんですよ」
 これがコロンボの決めた自分の生き方。
 彼の捜査の泥臭さ、しつこさの理由がよくわかる。
 これに「殺人を憎む心」「刑事の仕事が好きで好きでたまらない心」を加えれば、コロンボになる。

 キャラクターがドラマを作ると言うが、今回はまさにそんな話だった。
 自分が一番頭がいいと思っているオリバーは、シグマクラブの別の人間が立てたトリックの仮説をそんな単純なものではないと言って、真相を話してしまう。もちろん、そこにいたるまでコロンボはオリバーの行った殺人の実際(レコードプレーヤーを使って爆竹を爆発させ銃声を装ったこと、凶器の銃と爆竹の残がいを黒のコウモリ傘に隠したこと)を推理するのだが、被害者が倒れる音をどういうトリックで作ったのかが明確でなかった。それをオリバーに語らせたのだ。
 自信過剰であるがゆえに墓穴を掘った犯人。
 この墓穴が作者の作為に見えてしまう作劇上の弱さがあるが、この犯人の人間像は面白い。
 凶器となった銃を公園で捨てようとする時、突然コロンボが現れて慌てて隠すシーンなど、コミカルなサスペンスシーンもあった。

 最後にオリバーがコロンボに出したIQの問題をひとつ。

★問題
 金貨の入っている袋が3つある。
 だが、ひとつの袋には偽の金貨が入っている袋。
 その袋を秤を1回だけ使って当てよ。
 なお、金貨の重さは100g、偽の金貨の重さは110gである。

★答え
 ひとつめの袋から金貨を1個取り出し、
 ふたつめの袋からは2個、
 みっつめの袋からは3個取り出し、合計6個の金貨を秤に乗せる。

 ひとつめの袋が偽金貨の入っている袋ならば、重さは610g。
 ふたつめの袋が偽金貨の入っている袋ならば、重さは620g。
 みっつめの袋が偽金貨の入っている袋ならば、重さは630g。 

 なるほど、頭のいい人は発想が違う。
 そしてコロンボは、この問題の答えを彼のかみさんが導き出したという。
 作者の皮肉・ユーモアを感じさせるエピソードだ。
 また、こういうフリをすることで視聴者はその答えを知りたくて最後まで見てしまう。そう言えば、古畑任三郎の「赤いポスト」のオチは何だったのだろう?すごく気になる。

 
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LOST 第1話・2話

2007年01月13日 | テレビドラマ(海外)
 まずは冒頭の主人公ジャックの見せ方がいい。
 飛行機が墜落。
 みんながパニック・呆然自失している中、ジャックは動きまわる。
 機体に挟まれた人を救助し、陣痛の女性を診て大丈夫だと言う。人工呼吸のやり方も適切だ。
 これで視聴者は主人公ジャックに惹きつけられる。
 おまけにジャックは怪我をしていた。
 ケイトに縫い物の糸と針で傷口を縫ってほしいと言う。
 糸の色は何色がいいというケイトの質問にもユーモアで返し、自分が研修医時代パニックに陥った時の対処法なども伝授する。
 主人公にはいろいろなタイプがいる。
 「海猿」や「ブラックジャックによろしく」の主人公の様に自分の弱さと闘って現実に対処していくタイプ。
 「のだめ」の様に全くダメダメタイプ。
 そしてスーパーヒーロー。
 差詰めジャックはスーパーヒーローになるだろうが、研修医時代のエピソードなど人間味もある。彼は経験豊富で知識も十分なプロフェッショナルなのだ。

 そんなジャックが主人公だから、脇役は様々だ。
 第1話・2話を見ただけの範囲だが、
 ケイトは護送されていた囚人であったらしい。(それまでの勇気ある女性として描かれていたケイト像とは180度違う。観客を見事に裏切ってくれた)
 チャーリーはバンドメンバーだが、クスリ中毒であるらしい。(ミュージシャン=クスリというのはステロタイプか?)
 サイードは軍にいた経験があり、通信のことなどで有能ぶりを発揮するが、イラク人。早くも確執が生まれた。
 また東洋人の夫婦は何やら変な関係。妻の肌の露出に夫は異常に気にする。
 そして妊婦、ジャックの治療で意識を取り戻した刑事。
 生存者は48名だそうだが、48人も集まれば問題児も出て来る。
 これをどうドラマにしていくか? どう描き分けていくか?
 ここがこの作品の面白い所であり、シナリオライターの腕の見せ所でもある。

 仕掛けとしては飛行機墜落時の回想シーンが面白い。
 墜落して気を失うまでのわずか1分を、登場人物ひとりひとりが折に触れて回想していく。
 それぞれは記憶の断片でしかないが、それらを繋ぎ合わせると墜落までのひとつのストーリーになりそう。
 まさにジグソーパズル。
 きっとパズルの全体像が見えた時、驚くべき事実がわかるのであろう。

 そしてこの作品のもうひとつの面白さは「謎」。
 「サバイバル」「島からの脱出もの」の体裁をとっているが、この物語「謎」の解明が大きなプロットになっている様だ。
 今回示されたのは島に住む謎の生物。それは人を襲い殺すと、モズのように木の枝にくくりつける。
 生物はそれだけではなく赤道直下の島に北極熊がいる。
 なかなか飼い主のもとに戻らない犬の存在も気になる。
 そして謎の救援通信。
 フランス語で繰り返されるその通信は16年に渡って発信されているという。

 主人公の魅力と遭難した人間どうしのドラマ。
 そして次第に明らかにされていく人物たちの謎と島の謎。
 これらはまさにエンタテインメント!
 今後が大いに楽しみだ。

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アザース 理由

2007年01月12日 | 洋画
 クライマックスで大逆転する作品がある。
 今まで描いてきたことが180度変わるような。

 ニコール・キッドマン主演の「アザース」がそう。
 古い洋館。
 グレース(ニコール・キッドマン)、ふたりの子供と暮らしている。
 ふたりの子供たちは光アレルギーということで、いつもカーテンは閉め切られていて。
 そして彼らは時々男の子やその親の幽霊を見る。
 幽霊たちは様々ないたずらをして、カーテンを開けっ放しにしたり、カーテンをすべて取り去ったり。
 そんな洋館にやって来る使用人3人。
 ある時、使用人がすべていなくなってしまったからグレースは求人広告を出したのだが、彼らがやって来たのは広告が出される前。しかも昔、この屋敷に雇われていたのだと言う。
 不思議な出来事。
 謎の多い使用人たち。(彼らは何かを知っている様)
 そしてグレースの頭の中にある過去の記憶の断片・子供たちへの虐待。

 これらの謎がある真実を突きつけられて一気に明らかになる。
 世界が180度逆転する。
 ネタバレになるので書かないが、真実がわかるきっかけは洋館の外にある3つの墓に刻まれた名前。

 もうひとつ、クライマックスで逆転する作品を見た。
 ショーン・コネリー主演の「理由」。
 黒人嫌いの警官により無理やり拷問され、少女レイプ殺人事件の犯人にされたというボビー。
 冤罪事件だ。
 ボビーは死刑廃止論者で過去に弁護士もやっていたポール・アームストロング(ショーン・コネリー)に冤罪を晴らすよう依頼する。
 ポールは学者肌で現実を相手にするより、理論を構築する方が得意な人物だが、検事だった妻が過去この事件を担当し、冤罪の可能性があることに悩んでいたことがわかり、真実を追究していく。
 実際、警察の捜査、裁判の手順は杜撰なものだった。
 まず犯行時に被害者が抵抗して噛みついてできたとされるボビーの手の歯形は照合がされなかった。担当したのは著名な監察医。しかし、監察医は自供しているからという理由で疑問を持たず、照合を行わなかった。
 少女を乗せたとされるボビーの車を目撃したという証人は、車の実物ではなく写真を見せられて確認したものだった。
 そして厳然としてある黒人差別。 
 弁護士は「町中がボビーへの復讐を求めていた。もし無罪にしていたら私はどうなっていたと思う?」と言って、あまり真剣に弁護しなかったことを悪びれず言う。
 そして決定的だったのが、ボビーでない犯人が現れたこと。
 ボビーと同じ刑務所で服役している殺人鬼の死刑囚ブレア・サリヴァン。
 少女を殺したことをボビーはサリヴァンから聞かされたという。
 ポールはサリヴァンを尋問し、凶器の在処を示した謎を解く。
 これでサリヴァンの犯行であることが明らかになる。
 ボビーは晴れて釈放へ。
 ところが……。
 キイワードは「我々」。
 「すべて我々のねらいどおりだ」とサリヴァンは死刑の前に告白する。

 クライマックスで状況が逆転する作品はまさにアイデア勝負。
 そして観客をうまく騙してくれるほど面白く、逆転の角度が180度に近ければ近いほど、その衝撃は大きくなる。
 今回の場合は「死者と生者」「無実の人間と犯人」。
 いずれも180度の角度がある。

 
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