▲首相が狂気なら国はどうなる アベノミクス失敗後の悲惨
日刊ゲンダイ2013/10/3
「俺のおかげで増えた税収だから、どう使うかは俺が決める」
消費増税と企業優遇の経済対策を決めた安倍首相は、こう周囲に話しているそう
だ。きのう(2日)の一部朝刊が報じている。
耳を疑う発言ではないか。なんという思い上がりだろう。税金の使い道を決める
のは国会だ。安倍ではない。もしも総理大臣が勝手に動かせるのだとす れば、
この国は北朝鮮と同じである。民主主義もヘチマもない独裁国家ということだ。
安倍が独断で進めているのは、税の分配だけではない。食文化や商習慣、平穏な
暮らしが損なわれる、と専門家が危惧するTPP参加にも前のめりだ。 「食の安全
安心を守る」「ISD条項は合意しない」など、国民に約束した6条件はどこへや
ら。甘利TPP担当相はきのう、訪問先のバリ島で「権 限を持った閣僚で合意に道
筋をつけたい」と強調した。こちらも周囲の不安に耳を貸さず、一方的に決めて
しまう構えである。
もはや安倍は正気を失っているとしか思えない。政治評論家の山口朝雄氏が言う。
「党内に反発する勢力がなく、野党の存在は希薄で、メディアも批判しない。か
つては首相ですら口出しできなかった自民党税調をも、『反対するな ら総入れ
替えだ』と黙らせた。もしかすると安倍首相は、『俺のやることが正義だ』とい
う気分なのかもしれません。ちょっとした独裁者です。これほ ど好き勝手に振
る舞うとは、開いた口がふさがらない。これまでいろんな内閣がありましたが、
過去と比べても、今の安倍内閣は異常ですね」
それでもだれも声を上げない。言論界も国民も傍観している。倒閣の動きは、影
さえ見えないような状態だ。
爆竹を鳴らして目先を変えるイベント経済
このまま政権が代わらなければ、いったい、この国はどうなるのか。安倍は3年
後の衆参ダブル選を視野に入れているとされる。それまで狂気の政 治が続くな
ら日本は悲惨だ。国民は暮らしていけない。
まず、日本経済は3年後に破綻している恐れが強い。大量の国債発行と財政のバ
ラマキに依存する経済政策は短命で、神通力も失われている。それを 取り繕う
のにあくせくすれば、状況は悪くなる一方だ。
同志社大教授の浜矩子氏(国際経済学)が言う。
「アベノミクスなるものの本質はイベント経済です。次々と催事をブチ上げて目
先を変え、景気の浮揚感を演出するやり方。異次元だ何だと3本 の矢を振りかざ
して注目を集め、株価が下がれば4本目の矢とか言って企業減税を打ち出す。最
近は、オリンピックの威も借りている。風向きが怪し くなるたびに爆竹を放り
投げて騒ぎを起こすのです。でも、足元の問題は何も解決していない。非正規雇
用は増え続け、格差は広がり、地方の疲弊も大 きくなっている。本来は、こう
した問題を解決し、日本経済を立て直さなければダメなのに、逆に解雇しやすい
特区までつくる始末。この先3年も、 こんなやり方で経済が回るわけがありません」
マジックはネタが尽きれば終わり。国民やマーケットをだまし続けるのは不可能だ。
インフレ目標の達成から始まる生活崩壊
黒田日銀がやっている異次元の緩和も、この国と国民の暮らしをぶち壊す。
「なにせ異次元の世界です。普通の世界まで帰ってくるのは簡単ではありませ
ん。向こう2年で2%というインフレ目標が達成されたときが危ない。基 準となる
消費者物価指数は、特定品目のサンプル調査で算出されます。円安で軒並み物価
が上がっている中、サンプルの取り方によっては目標をク リアする可能性があ
る。そうなると日銀は帰り支度を始めなければなりません。買い手を失うことに
なる国債は暴落でしょう。それを恐れて我々の次元 に戻らないとすれば、財政
の赤字ファイナンスということになる。緩和の目的は赤字国債の発行ではない、
と言ってきた日銀は信頼を失う。いずれにし てもカネは円からも国債からも逃
げていきます」(浜矩子氏=前出)
それによって安倍や黒田が困るだけなら自業自得ということだが、国民も巻き込
まれるのだから見過ごせない。通貨の信頼がなくなれば、物価は暴騰す る。ハ
イパーインフレで庶民生活は破綻だ。その上、国債発行もままならないから、積
み上げられた財政赤字は国民が返すしかない。ベラボーに 高い税金を払って埋
めるのだ。
こうなれば、日本中が大混乱である。価値が失われる前に使おうとすれば、銀行
は取り付け騒ぎだ。デモ、暴動もいたるところで発生。国民の不満は 爆発し、
怒りは政府に向けられる。
そうなると何が起きるのか。歴史をひもとけばひとつの答えにたどり着く。国民
が窮乏し不満がたまれば、政府は外に敵を作るようになる。戦争で活路 を見い
だそうとするのだ。
世界制覇の野望を掲げて戦争に突き進む
東条英機やナチスドイツのヒトラーなど、打つ手がなくなった独裁者は必ず、国
民に銃を握らせる。積極的平和主義とか言って、地球の裏側まで自衛 隊を派遣
しようと画策する安倍は、彼らと同じにおいがする。
「安倍首相は世界制覇の野望を抱えているのではないか。例えば6月に行った成
長戦略第3弾に関するスピーチです。彼は『世界』という言葉を37 回も使ってい
る。『世界で勝つ』『世界を席巻する』『また世界の中心に躍り出なければ』と
いう具合。一方で『人間』というフレーズは一度だけ。 それも大阪万博の『人
間洗濯機』を紹介したときです。『格差』『貧困』『地域』はゼロで、一度も出
てきません。人々の暮らしには無関心で、ひた すら世界制覇の野望を掲げ、解
釈改憲にも踏み込もうとしている。そんな異様な姿が浮き彫りになる演説です。
経済がニッチもサッチもいかなくなった ときに、戦争でご破算にしようという
短絡的思考にとらわれる恐れは高いでしょうね」(浜矩子氏=前出)
6年前、安倍は何もせずに病院に駆け込み、政権の幕を引いた。だが、今回は
黙って退陣しない。「勝負に出てからでないと、引くに引けないだろう」 (政界
関係者)とみられている。
狂気の首相は日本を破滅に導くのだ。
(転載終わり)