今こそ米国干渉退けろ
投稿日: 2019年11月2日
ウラジオストクで9月、安倍総理はロシアのプーチン大統領と27回目の会談 を行ったが、北方領土に関する交渉での進展は見られなかった。
日ロ関係は両首脳の度重なる会談を経て、ロシアの炭化水素の開発促進や日本 の省エネ、再生可能エネルギー導入によるエネルギー・インフラ開発などさまざまな協力プランが進んでいる。ロシアへ自動車類を輸出し、ロシアからは石油や天然ガスなどを輸入している日本にとって、ロシアと友好関係を築くことは、安全保障はもちろん、経済面からも重要なことなのだ。
貿易を巡り中国と紛争状態にある米国は、ロシアに対しても2014年から経済制裁を科し、日本は名目的ではあるが米国に同調してきた。ここにきて米国 は、ロシアの天然ガスをドイツ経由で欧州に輸出するパイプライン計画「ノルド ストリーム2」の建設に関わる欧州企業にも制裁を科す方針を明らかにしている。
欧州のロシアへのエネルギー依存が高まると欧州の安全保障が脅かされるとい うのが制裁の理由である。中国との貿易問題にしても対ロシア政策にしても、世 界経済を不安定にし、安全保障の面でも脅威となっているのは米国であると私は 考えるが、多くのマスメディアは日本の軍事的脅威はロシアや中国であり、米国 の同盟国として振る舞うことが日本にとって最善であるかのような報道を続ける。
9月末にニューヨークで開催された国連総会で、ロシアのラブロフ外相は一般 討論演説を行い、「国連憲章において加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利お よび利益を加盟国の全てに保障するために、この憲章に従って負っている義務を 誠実に履行しなければならない」と述べ、米国がそれをしていないことを批判し た。第2次世界大戦が終わり、世界の平和と安全を維持するための集団的なメカ ニズムとして国連が設立されたが、すぐに冷戦が始まった。30年前、ベルリン の壁の崩壊によって世界は安定に向かうかと思われたが、テロや麻薬、貧富の格 差など新たな問題が山積みである。
そんな中、世界に影響力を持ち始めたのが中国である。しかし米国は世界が多 極的に発展することを認めず、自分たちの自由資本主義こそが最も優れていると して他国にも米国のルールを押し付けている。中距離核戦力全廃条約を一方的に破棄し、2021年に失効する米ロの新戦略兵器削減条約も、ロシアが延長を提案するも米国は継続に否定的だ。
冷戦時代、社会主義国でありながら対立していた中国とソ連だが、今では両国 首脳が定期的に会談し、一帯一路構想関連のさまざまなプロジェクトを共同で進 めている。橋や鉄道を造り、街を結ぶことで国が潤い、国民が豊かになるから だ。北方領土交渉が難航する裏には米国の干渉、つまり4島一括返還は日本政府 が自ら言い出したのではなく、1956年に米ダレス国務長官が日本に求めた、 という事実がある。今こそ日本は米国の干渉を退け、ロシア市場や北極海航路と いう新たなアクセスルートによる経済関係強化のためのかじ取りをするべきであ る。