消費税やめMMTを
投稿日: 2019年10月11日
10月1日から消費税率が10%に引き上げられた。飲食料品などに8%の軽減税率が適用されるとはいえ、住宅や高額品の顕著な駆け込み需要の増加が見られなかったのは、増税分がわずか2%だからではなく、国民の所得が低迷し、購買力が弱体化しているためだ。
9月、台風が千葉県に大きな被害をもたらしたが、東日本大震災はじめ多くの人が近年発生したさまざまな自然災害の復興途上にある。消費を罰するような増税に国民が不安と怒りを覚えて当然であろう。政府統計でも、8月末に発表された7月分の小売り業販売額(税込み)は前月比2.3%減と、昨年12月から減少が続いている。厚生労働省の勤労統計調査では7月の実質賃金は前年比0.9%減と、これも前年同月を7カ月連続で下回っている。
増税に当たり安倍政権は、キャッシュレス決済による「ポイント還元」を導入したが、停電になればキャッシュレス決済は利用できない。昨年9月の北海道胆振東部地震や千葉の停電などを見れば明らかなように、災害時、決済システムは機能不全となる。携帯電話の充電もできずクレジットカードや電子マネーを持っていても決済する店舗が電源喪失すれば意味を成さない。ポイント還元で「景気後退対策」などに費用を投じるなら、増税などしなければよいだけの話だ。
そもそもなぜ増税かといえば、日本は赤字国債を増発したため財政赤字が突出している、だから消費税を上げる必要があると言う。もし財政赤字を心配しなくてよいのなら、消費税は増税どころか撤回してもよいはずだ。そのような主張をしているのがMMT(現代貨幣理論)である。今年1月、米国で史上最年少議員として話題になったアレクサンドリア・オカシオコルテス議員が支持していることで脚光を浴び、また最近日本でも、MMTの第一人者、L・ランダル・レイ著「MMT現代貨幣理論入門」(東洋経済新報社)が出版された。
MMTの主張は、日本のように自国通貨を発行できる政府では債務不履行は起きないので、財源の心配をせずにいくらでも支出ができる、というものである。もちろん財政支出を拡大し過ぎればインフレになるので、その場合は税金を 課すなどして、消費や投資を抑える必要がある。また好ましくない行為に課税すればそれを減らすこともできる。環境のために炭素税を課せば温室効果ガスが抑制できる、高額所得者に高い税金をかければ所得格差が是正できる、などである。しかし財政赤字が問題でなくなれば、消費税を増税する理由はなくなってしまうため、政府や多くの専門家はMMTを「異端」であり、認められないと言う。
1989年に3%の消費税を導入し、5%、8%へと増税を続けた日本は30年間デフレに苦しんでいる。また同じことを続けて景気が良くなるはずはない。安倍政権がデフレ脱却、インフレ率2%という目標を達成したいのなら、消費税をやめ、社会保障や、自然災害に遭った国民のために政府が財政支出をする、そんな異端のMMTを試してみる価値はある。