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■格差加速貧困ライン底なし <o:p></o:p>憲法二五条の生存権を今、司法の場で真正面から問う意義は、国に「健康で文化的な生活を営むための最低ライン」を明らかにさせ、底を割り続ける貧困ラインを食い止めることにある。 <o:p></o:p>
昨年の小泉政権時代に発表された政府の「骨太の方針」は、二〇〇七年度から五年間で社会保障費を一兆一千億円削減すると決定。この方針を受けて、生活保護の認定基準が厳格になり、老齢加算の廃止に続き、子どもがいるひとり親世帯を対象にした母子加算の廃止も打ち出されている。 <o:p></o:p>
国の一方的な通知によって〇四年度から老齢加算を削られた生活保護受給者には不満が渦巻く。だが、不服申立件数は全国で千六百件にすぎない。 <o:p></o:p>
その要因として、不況を背景に所得格差が広がり、生活保護受給者よりも困窮した低所得層が膨らんだ“ねじれ”現象は見逃せない。国税庁の調査では年収二百万円以下の世帯の割合が20%を超え、日銀の調査では無貯蓄世帯の割合も20%を超えたとの結果もある。 <o:p></o:p>
国はこれまで、一般世帯の生活水準を生活保護基準の算出に反映させてきた。この基準は、最低賃金や就学援助などの算出の目安にもされてきた。好況の時代には基準が引き上げられ、問題は生じなかった。 <o:p></o:p>
しかし、〇五年度には生活保護の受給世帯が百万を突破。財政難を理由として、増大した低所得層の生活水準に合わせるように基準を一方的に下方修正した国には、国民的合意もなく「健康で文化的な最低限度の生活ライン」を引き下げた“越権行為”の疑いがある。受給者にとって不利な変更にどんな正当な理由があったのか、厳しく問いただす必要がある。 <o:p></o:p>
金沢誠一・仏教大教授(社会政策)は「格差の固定化は、弱者対立を生み出す。社会規範が崩れ、人らしく生きるために連帯し、協調するよりもバラバラになる傾向が強まる」と、基準の切り詰めによる社会の不安定化を憂慮する。 <o:p></o:p>
さらに「年金は目減りし、健康保険の自己負担率が上がる。障害者自立支援法のように公的扶助を後退させ、自助を増やす政策ばかりが続けば、もはや低所得層は持ちこたえられない」と指摘している。 <o:p></o:p>
(佐藤直子) <o:p></o:p>
■「生存権」関係条文 <o:p></o:p>
憲法二五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 <o:p></o:p>
生活保護法一条 この法律は、日本国憲法第二五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。 <o:p></o:p>
同三条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。 <o:p></o:p>
<メモ>老齢加算 1960年、原則70歳以上を対象に生活費相当の生活扶助費に上乗せする形で支給が始まった。東京23区など大都市部では2003年度まで月額1万7930円。しかし、04年度9670円、05年度3760円と減額され、同年度末に廃止された。厚労省によると、廃止前の05年7月時点で、70歳以上の生活保護受給者は約31万4000人。<o:p></o:p>
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