米巨大企業の毒牙に蹂躙される日本の農業
2015年4月19日 日刊ゲンダイ
昨年11月の沖縄県知事選挙で現知事の翁長雄志の応援をした菅原文太は、那覇の集会で、「政治の役割は2つあります。ひとつは国民を飢えさせないこと。安全な食べものを食べさせること。もうひとつは絶対に戦争をしないことです」と訴えた。
その2つともを安倍政権は壊そうとしている。先ごろ、農協のトップが突然辞任したが、安倍が強行しようとしている「農協改革」は農協破壊であり、農業破壊である。農協がTPPに反対しているから、何としても「改革」の名で破壊したいのだ。
この本のオビには大きく「次の標的はTPP協定の日本だ!」とある。アメリカはTPPを結ばせて、日本に遺伝子組み換え作物を輸入させたい。その先兵として、この「遺伝子組み換え種子の世界一の供給会社」であるモンサントがある。というより、アメリカの政府はこの巨大企業に動かされてTPPを結ばせようとしているのだということが、この本を読むと、よくわかる。つまり、TPPは「安全な食べもの」を安全でなくするのであり、日本がモンサントの毒牙に蹂躙されることになるのだ。
〈モンサントは、20世紀初めにサッカリンの生産会社として設立されたが、第一次世界大戦の間に、爆弾や毒ガスの製造に使われる化学製品を売ることによって、利益を100倍に増やした〉
そして、PCBや枯れ葉剤、特にベトナム戦争で使われたオレンジ剤という名の除草剤等で巨大になった後、遺伝子組み換え作物にその手を広げたのである。
学者はもちろん、政府やメディアを巻き込み、「規制」をつぶしていくやり方は日本の原発マフィアとそっくりだ。
インドの農民は「あの会社の連中は毒薬と同じです。やつらは、死に神のように人間の命を奪っていきます」と叫んでいるが、メキシコ、アルゼンチン、パラグアイ、ブラジル等が次々にこのモンサントに襲われた。
フランスのジャーナリストである著者に、北インドの農協組合のスポークスマンはこう言ったという。
「モンサントを調べてください。あのアメリカの多国籍企業は、要するに世界中の食糧を独占するつもりです」
利益のために安全を無視するモンサントがTPPの推進役なのである。★★★
(選者・佐高信)
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「モンサント」マリー=モニク・ロバン著 村澤真保呂ほか訳(作品社)