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2012年12月03日 | Weblog

先週の三連休に時間をみつけて博多千年煌夜の会場である東長寺と承天寺を拝観してきた。夜空を背景に照らし出される寺社や庭園がみせる幽玄の美は、国内外に不安を抱き、この国の行く末を案じる多くの人々の心にしばらくの癒しを与えてくれていたように思う。

 

第46回衆議院議員総選挙が明日12月4日に公示(12月16日投開票)される。不安定でありそして拠り所のない社会に生きる我々は、この選挙に何を期待すればよいのだろうか。世界でもトップクラスの経済大国であり多くの優良企業を抱える先進国でありながら、この国にはなぜか元気がない。元気がないどころか、この国に生きる我々は日々何かしらの新たな“不安”に直面しながら暮らしているといっても過言ではないだろう。

 

戦後日本は世界でも類を見ない経済成長を経験してきた。当時とは比較にならないほど生活は豊かになり、社会基盤は他国と比較しても十分に整っていると言える。しかし我々は現状をどうやら幸せとは感じていないようである。いや、正確には幸せとは“感じなくなった”と言うべきだろうか。

 

「経済成長が一定の水準を超えると、国民の所得の増加は幸せの増加に対して影響を与えなくなる」。経済が成長していくことと我々が幸せと感じることが必ずしも比例しているわけではないことを示すこの理論のことを、提唱したリチャード・イースタリン教授の名からイースタリン・パラドックス(イースタリンの逆説)という。イースタリン・パラドックスは幸せとは何かを考える際の出発点となる。

 

「各種経済指標では心の中のことである国民の幸福度をはかることはできない」と考えられていた時代があったが、“経済成長だけが全てなのか”その意味が問われるようになった今、この考えに変化がおきつつある。OECDが使っているYBLI(より良い暮らし指標)やブータン王国のGNH(国民総幸福量)など、GDPの補完指標が脚光を浴びるようになってきた。国内においても内閣府が毎年国民生活選好度調査を行いその経年変化を調べている。

 

経済成長から幸福度へ。脳科学者の茂木健一郎氏は、「この変化はビジネスの現場にも影響を与えることになる」、「ビジネスを、“幸福のソリューション”を提供する活動だととらえれば、そこには無限の可能性が広がっていることになる」と説いている。(PRESIDENT 2012年9月17日号)。人が幸せについて考える時、そこにはフォーカシング・イリュージョンという偏向がかかっているという。「学歴がないと幸せになれない」とか「結婚しないと幸せになれない」、または「正社員になれれば幸せになれる」など、このような特定のポイントに自分が幸せになれるかどうかの分岐点があると信じてしまう偏向のこと、これがフォーカシング・イリュージョンである。実際には“幸せに至る多種多様な道筋がある”にもかかわらず、フォーカシング・イリュージョンの罠にはまるとその道筋が見えなくなってしまう。

 

ビジネスを“幸福のソリューション”を提供する活動だととらえるならば、我々の間口は一段と広がるだろう。監査時にこのように仰った経営者の方がいる。「利益のことは一番には考えんでいい。もちろん売り上げとか利益も大事やけど、一番に考えんといけんのはお客様が幸せかどうかやけんね。それを考えんといけん。そしたら売り上げも利益もついてくる。何のために商売しよるんか忘れたらお終いやもん。」と。なるほどまさにその通りかもしれない。皆様の会社・医院においてはどうだろうか。ビジネスを幸福のソリューションととらえた場合にどのような景色が見えてくるのだろうか。

 

弊所には、当初より税務以外の部分にも力を入れてきたという実績と強みがある。資金面での安心が、お客様へ提供できる幸せの基礎のひとつだとするならば、その基礎の上にどのような幸せを築くかはお客様によりまさに“千差万別”である。弊所の商品でもって、その千差万別である“幸せの多様性”に目を開くためのお手伝いをできたならば、その時には幸福のソリューションを提供できたことになるのかもしれない。

 

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事務所立ち上げ当初から掲げてきた言葉である。税務会計だけではない。お客様を真に傍からサポートできる体制を強化し、先の見えないこの時代の案内人となれればと、今一度気を引き締めなおしこの年末を迎えようと思う。

 

果たして“幸せとは何か”。年の瀬にして、この問いへの解は複雑すぎて一朝一夕の経験では未だ確信を得られそうにはない。

 

■参考リンク

OECD東京センター より良い暮らし指標

http://www.oecdtokyo.org/theme/macro/2012/20120522bli2012.html

外務省 わかる!国際情勢 Vol.79 ブータン~国民総幸福量(GNH)を尊重する国

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol79/index.html

 

監査部一課 原浩恭