これからの時期に思うこと

2017年11月27日 | 日々のできごと

 あと数日で12月に入ります。今年も残すところあと1ヶ月ほどになりました。この時になると何かと気忙しくなりますが、みなさま如何お過ごしでしょうか。

私ども、税理士業界に身を置く者は関与先のみなさまへの年末調整のアナウンスや準備の依頼等がはじまり、これから年明け3月半ばの確定申告が終わるまでの繁忙期に突入していきます。例えるなら「嵐の前の静けさ」のような時期と言えるかもしれません。

どんな仕事でもお客様があっての仕事、といえる部分があるかと思います。たくさんの仕事を抱えていると、業務スケジュールを滞りなく進めることが優先されがちです。スケジュールをこなすことが優先されてくると、それぞれのお客さまの個別の事情を十分汲取ることかできなくなるリスクが生じてきます。そのようにならないよう、ひとりひとりのお客様のニーズにあった柔軟性のある対応しつつ、業務スケジュールを滞りなく進めていくのが一流のビジネスマン、と言えるのでしょう。

私にとってこの一週間は、まさにジェットコースターに乗っているような、とても変化の激しいものでした。一流のビジネスマンを目指して仕事に向き合ってはいますが、スケジュール管理を優先する思考パターンに陥っていたようです。お客様にお叱りの言葉を頂戴いたしました。

この失敗をしてから、いろいろなことを考えてみました。まだこの仕事に就く前、税理士になることを考え始めた学生時代のこと。この業界に入って間もない時期に感じたこと、考えたこと。そしてその頃の自分がとった行動。業界の仕事に慣れてきて、この仕事でしか感じることのできない幸せに気が付いてきはじめた頃のこと・・・

さまざまなことを考えたり思い出したりしながら、ふと以前聞いたことのある印象的な言葉を思い出しました。

私は学生の頃、経済学部に所属していました。所属していたゼミには将来、税理士や公認会計士を目指すことを決めている、とまでは言えませんが、自分が目指す職業としてある程度、意識している学生が集まるゼミでした。ある日のゼミで指導教授が私たちに話してくれた言葉です。確か次のような話だったと思います。

「君たちは、経済学部の学生なんだ。経済学とは?ということをしっかり説明できるようになってもらいたい。まずは“経済”の意味を考えてもらいたい。“経済”の語源は中国の古典に出てくる“経世済民”という言葉なんだ。経世済民とは、“世を治(経)め、民を救(済)う”の意味だ。人が望むできるだけ多くのことを叶えるには、ヒト・モノ・カネ・時間といった限られた資源をできるだけ有効に利用して、少しでも多くの欲求の実現するためにはどのようにすればよいか?ということを研究する学問だ。」

いろいろな見方、いろいろな説明ができるのだろうけれど、当時の私は“経済学とは、限りある資源を最も有効に利用し最大の効果を発揮することを目的に、これを数字というモノサシを使って計っているのだろう”といったようなことをボンヤリ考えたことを覚えています。

また、先日とある雑誌にこんなことが書いてありました。それもどこかの大学教授が書いた記事だったように思います。

「経済学は、経済的な利益と損失を検討しつつ各種の計算に基づくことを前提としている。しかし、経済計算だけがすべてで、これだけに基づくものではない。そこには冷静な頭脳と温かい心の両方が備えられていなければならない。--- Cool heads but Warm hearts --- むろん温かい心だけをもって自分の考えや気持ちを主張してもこれは不十分である。物事を主張し相手を説得するには理論が必要となる。逆もまた真なり。」

経済学と、私ども税理士事務所が主戦場とする税務・会計の分野は異なります。しかし、隣接分野であり多くの点で密接にかかわっています。今回、ひとつのお叱りの言葉を頂戴し、自己を振り返ってみたなかで思い出した言葉ですが、改めて考えてみると今の自分にとっては、どちらの言葉もとても示唆に富んでいます。

遠い昔、学生時代だったころ、あの指導教授に出会っていなければ、今こうしてこの仕事に就いていなかったでしょう。M先生、ありがとうございました。先生がいつか話してくれた“世の中に有意な人材”になれているかどうか自問自答の日々ですが、何事にも真摯に取り組みます。

これからの繁忙期、業務に忙殺されがちですが、このふたつの言葉を胸に刻んですべてのお客様と関わっていく、そう誓ってこの繁忙期に臨もうと思います。

 

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監査部 第2課

波多江正暁


確定申告とサラリーマン

2017年11月20日 | 税務情報(個人関係)

寒さが一段と強くなってきました。予防接種等の事前準備で今年の冬も健康に乗り切りたいと思っています。

 

今年ものこりわずかとなり、サラリーマンの方はお勤めの会社で年末調整を済ませるかと思います。給与所得のみであれば年末調整で所得税の計算は完了しますが、以下の事柄があてはまる方はサラリーマンでも確定申告をすると所得税が還付となることがあります。

 

    医療費控除を適用したい。

平成29年中に一定額以上の医療費の支出があった場合、医療費の支払額に応じて所得控除を受けることができます。

    ふるさと納税の寄付をした。

ふるさと納税の寄付をした場合、確定申告をすることによって所得控除を受けることができます。ワンストップ納税を適用されているのであれば、確定申告は必要ありません。

    住宅ローンを使ってマイホームを購入した。

住宅ローンを使ってマイホームを購入すると、住宅借入金特別控除を適用することができます。初年度のみ確定申告が必要となります。

    年末調整での控除漏れがあった。

年末調整で保険証書等を提出し忘れ、後日発見した場合、確定申告で漏れた控除を追加することができます。

 

年末調整は便利ですが、自分で計算をしないため、自身の収入の状況が見えにくくなってしまうこともあるかと思います。ふるさと納税や医療費控除など取り組みやすいいまだからこそ確定申告をしてみるのも面白いかと思います。

監査部 尾方 鼓


医療費控除の改正

2017年11月13日 | 税制改正

みなさま、おはようございます。

早いもので今年も残り50日を切りました。年末にバタバタしなくて済むように残りの一日一日を大事に使っていきたいと思う今日この頃です。

さて、確定申告時に準備する書類で手間のかかるものと言えば医療費控除の集計ではないでしょうか。

この医療費控除、今年分の確定申告から大きな変更があります。

今日はその変更点を纏めてみます。

 

(ポイント)

①従来の「医療費控除」の改正

②新しく創設された「セルフメディケーション税制」

③両者比較

 

①従来の「医療費控除」の改正

変更点は1点、医療費控除の明細書の提出が必要になったことです。その代りに領収証の提出が不要になりました。

また、以前より発行されているにも関わらず控除証明書類として認められなかった健康保険組合が発行する医療費のお知らせが控除証明として使うことが出来るようになり、添付することで医療費控除の証明書への記載を省略することができます。

医療費のお知らせは、毎年2月ごろに前々年10月~前年9月診療分が記載されたものが届きますので、これをきっちり保管しておけば前年の10月~12月診療分だけ明細を作成すれば良いので便利かと思います。

(平成29年分から平成31年分までの確定申告については、従来の領収書を添付する方法によることもできます。)

医療費控除の明細書は国税庁のホームページからダウンロードできます。

https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref1.pdf

 

領収証は提出不要となりましたが、税務署から求められたときは提出する必要があるので5年間保管する必要があります。

 

 

②新しく創設された「セルフメディケーション税制」

上がり続ける医療費。これを健康の維持増進や疾病の予防へ取り組むことにより抑えようという目的で、平成29年1月1日以降に薬局で購入できるスイッチOTC医薬品(医療用として病院の処方箋が無いと購入できなかった薬が、ドラッグストアで購入できるように一般用に転用したもの)を購入した場合は一定の金額について医療費控除を受けることが出来るようになりました。①とは対象が異なりますので医療費のお知らせや病院で受け取った領収証は対象外です。

 

こちらは①では認められないインフルエンザ予防接種も予防への取り組みですから認められています。また人間ドックや各種健診は健康保険組合や市区町村国保等が実施するものに限って認められています。

薬局で購入した医薬品がスイッチOTCに該当するかどうかはレシートを見れば区分記載されるようになっていますので、該当するのかどうかの判断は不要です。

 

医療費控除を受けるにあたっては、セルフメディケーション税制の明細書と一部領収証(健診やインフルエン予防接種の領収証)の添付が必要です。スイッチOTC医薬品の領収証は不要です。

こちらも提出しなかった領収証は5年間の保管が必要です。

セルフメディケーション税制の明細書は国税庁のホームページからダウンロードできます。

https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref2.pdf

 

 

③両者比較

対象医療費と控除金額の比較は下記の通りです。

 

従来の医療費控除

セルフメディケーション税制

対象医療費

一定の診療代等

(セルフメディケーション税制よりも適用範囲は広い)

一定のスイッチOTC医薬品に限定

控除金額

10万円を超える部分

(上限200万円)

12,000円を超える部分

(上限88,000円)

本人分だけでなく、生計を一にしている配偶者その他の親族の分も控除可能なのはどちらも共通です。

どちらかの一つの選択適用になります。

大雑把ですが、今年は随分と病院にかかった、インプラント治療などで多額を医療費を払ったという方は金額的には敷居も高いが控除額も200万円まで行ける従来の医療費控除、病院に通うよりは薬局の薬で対処した、大きな治療費もないという方は敷居も低いが上限も低いセルフメディケーションというところでしょうか。

どちらの方法にしても領収書の提出は必要なくなりましたが明細書の作成時に必要になります。紛失などしないように医療費の資料は別にファイルを作って管理されるのが良いと思います。

 

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監査部2課 藤野慶一


見える組織と見えない組織

2017年11月06日 | Weblog

あなたは今から工場長。モノづくりの現場の最高責任者です。

予てよりあなたの工場はひとつの課題を解決できずにいました。その課題とは生産性の向上です。単純に考えると、生産量を二倍にするには従業員も設備も何もかも二倍にすれば良いわけですが、今いる従業員、今ある設備で、今より生産量を増やそうとするならばこの“生産性”を高めなければなりません。

どうすれば今以上に従業員たちが効率良く効果的に働いてくれるのでしょうか。生産性の向上はあなたのみならず経営者ならば誰しもが考えることです。またこれは製造業に限りません。サービス業だって求めるところは同じです。

ある日、工場長であるあなたは次のような実験をしてみることにしました。

十数名の工員を選び二つのグループに分け、作業条件の変化が作業効率にどのように影響するのかを調べたのです。片方のグループでは作業場の照明を今より明るくし、もう片方はそのまま。このような実験を温度・湿度の高低、休憩時間の長短や報酬額の大小等、様々に作業条件を変化させて行いました。

① 照明を今より明るくしてみた。
② 室温を上げてみた。
③ 報酬を増してみた。
④ 休憩時間を長くしてみた。・・・などなど。

これらは1924 年から1932 年(1933 年)まで、シカゴ郊外に位置するウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で実際に行われた実験です。当時の初期の実験者達は実験を進めていく中で妙な結果に遭遇することになります。というのも、「照明を明るくした→生産性向上」これは予想通りだったのですが、「照明を元に戻した→生産性向上」という事態が起き、さらには、「元より暗くした→生産性向上」という摩訶不思議な事態まで発生したのです。他の実験にしても同様で、作業条件にかかわらず生産性が向上していったため、実験者達は「作業条件の内容ではなく作業条件の“変化そのもの”が生産性の向上に影響を与えているのではないか」と考えるようになりました。

ホーソン工場では、これら予想外の実験結果を詳しく調べるために、マサチューセッツ工科大学のターナー、ハーバード大学のメイヨーやレスリスバーガーらを招き、より詳細な実験を重ねていくこととなります。

ターナーは、休憩時間の長短それ自体が生産性向上の鍵となっているわけではないこと、休憩をとることによって心身がリフレッシュし作業効率が増していることは間違いないが、このことが休憩による生産性向上の本質ではないことを見抜いていました。つまり、休憩により工員たちは話をし、互いに理解を深め、時には仕事以外の相談等をし、仕事が終わった後のプライベートの付き合いも行うようになる、このような一見仕事とは関係のない意思疎通関係を、工員たち自身が時間をかけて醸成していくことで良好な人間関係を築き上げ、この人間関係こそが生産性に大きな影響を与えているのではないかということに気付いたのです。

またメイヨーも、先の照明実験で常に生産性が向上していったという結果を受け、実験対象の工員たちがひとつの社会を構成しており、自分たちに注がれる関心を楽しみ、この実験に参加できていることに喜びや興奮を感じており、そのこと自体が生産性の向上に良い影響を与えていると考えました。また、メイヨーは、工員に話したいことを話してもらう面接を繰り返し、ついには工員の監督方法や工員間のモラルといったものが生産性に与える影響を突き止めたのです。

生産性を向上させるポイントが現場の監督者(管理職)の態度にあることもわかりました。監督者が工員を信頼し、意思決定が広く組織的に行われ、コミュニケーションが上下方向のみならず工員間でも柔軟に行われている状態では生産性は向上し、監督者がただの監視に終始し、公式組織のルールのみを重視した従来通りのスタイルと態度で臨んだ場合は生産性の向上は見られなかったのです。

どのような組織にも公式組織と非公式組織といった二つの組織が同時に存在します。公式組織とは社内で決められている職階(部長・課長など)によって統治がなされている組織です。一方の非公式組織とは社内の職階とは関係なく、組織のメンバー間で自然発生的に生み出された繋がりによって統治されている組織です。中学生や高校生だった時のクラスを思い出してください。クラスメイトをまとめ上げていたのは必ずしも学級委員長というわけではなかったと思います。既定の委員や係といった分類ではなく、そういったものを超越した連帯感が組織には存在します。それが非公式組織です。そして、学園祭や体育祭でのクラスのパフォーマンスにはこの非公式組織の存在が大きな影響を与えていたのです。

人は関心を寄せられると生産性を高めると言われます。このことは私たちの日々の業務の中にも落とし込むことができます。自分の仕事に意味があると感じた従業員の心理が生産性に好影響を与えます。人は関心を寄せられると自尊感情が向上するそうです。自分のことを気にかけてもらっていることがわかれば、それだけで「自分の大切さ」を感じることができます。その大いなる手段として機能するのが非公式組織の存在であり、非公式組織内での人間関係なのです。

ゆとり世代と言われる年代の従業員の中には、この非公式組織にすら関わりを持つことを嫌う人もいるようです。ここまでくると経営者は次世代の統治のあり方を考えなくてはならなくなってきます。ホーソン工場の実験自体にも批判があり万全とは言えません。いつの時代も若手とベテランの間には付き合い方に溝があると聞きますが、私たちもこのような現況に対処できるよう知識と経験を身に着けお役立ちできるように頑張りたいと思います。

強存強栄。この言葉も繋がりの一種です。私たち税理士法人恒輝はお客様との繋がりを大切にしたいと考えております。ただ単に契約を結びその契約通りに仕事をしてお終いではなく、互いに関心を持ちより、分かり合える関係を目指していければと常に願っております。今回お話差し上げた現場のうんぬんだけではなく、法令に遵守した処理のあり方や手続き等、ヒトに関する諸問題の解決も得意とするところでございます。お抱えの問題にどうしたものかとお悩みございましたら是非とも弊所までお問い合わせをいただければと思います。

■参考リンク
Harvard Business School and the Hawthorne Experiments (1924-1933)
http://www.library.hbs.edu/hc/hawthorne/intro.html

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監査部一課 原浩恭