2016年の弊所blogも今日が最後となります。個人事業を営まれている方々は、年明けの所得税確定申告に備え今年の経費をどうするか、ほとんどの方向性は決まっている状況かと思います。個人事業の場合は元旦から大晦日までが計算期間となる暦年課税ですので、確定申告を見据えての取引の締め切りは、残り1週間足らずです。
さて、今回はキホンの「キ」にあたる話題を取り上げてみようと思います。税金は、懐からお金が少なくなるものなので、誰しも痛いものです。その税金を減らすことができる方法は原則的には、売上を下げるか、経費を増やすしかありません。当たり前の話ですが、とても大ざっぱに言えば税額は次の算式で求められます。
売上 - 経費 = 利益
利益 × 税率 = 税額
しかし、売上を減らすというのは現実にモノやサービスの提供が完了していないのであれば問題ありませんが、そうでない、つまりモノやサービスの提供が完了しているのに意図的にこれを隠して決算書の売上を下げるのであれば、脱税になってしまいます。よってここに可能性はありません。
では、経費はどうでしょうか。経費を大きくすれば利益の圧縮につながります。では、経費とは何なのでしょうか?みなさんいろいろイメージはあると思いますが、所得税法37条では必要経費について次のように規定しています。
(必要経費)
第三七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(‥中略‥)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(‥中略‥)の額とする。
簡単に表現すれば、次の2点に集約されます。
(1) 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2) その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
つまり(1)では、売上を獲得するための仕入原価や、仕入原価以外にも直接必要であったものを、また(2)では業務上関係のあるものを、経費への算入について言及しています。
(1)では、“直接必要”という部分の「直接性」が、(2)では“業務関連性”についての議論がよくあります。
そこで今回は“業務関連性”で話題となることが多い、家事関連費について注意すべき点を考えましょう。
家事関連費
所得税の場合、例えば自宅を店舗や事務所に使用して事業を営んでいると、水道光熱費や通信費あるいは家賃や固定資産税等々… 事業でも使っているし、事業と関係のないプライベートでも使っている、そんな経費があると思います。これらを一定割合、業務に関連する部分について経費にすることができます。このような経費を家事関連費といいます。
では、この家事関連費のうち必要経費になるのは、どのような金額なのでしょうか。それは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られます。
つまり、家賃であれば事務所や店舗で使用する面積が全体の面積のうちどのくらいの割合なのか、ということを明らかにする必要がある、ということです。家賃のように面積では明らかにできないものについては、時間などの客観的に測ることができる基準に基づいて使用頻度等を明らかにし、事業に関連する金額を限定していく、という計算が必要になります。
言い換えると、業務関連性について誰が見ても合理的な基準に基づき算定した金額であれば経費にすることが可能となるわけです。もしそこで、合理的な説明がつかないものがあれば、経費にできなくなる可能性が高まってしまいます。
なんでも経費にしよう!と思って説明のつかないものまでも家事関連費として経費にすると税務調査時には墓穴を掘ったことになりかねません。合理的な説明のつくものに対象を限定しておくことが、結果的に得策となることも考えられます。ご自身が家事関連費として経費処理したものについてはその算定根拠を明らかにできるよう準備しておきましょう。
事実関係をしっかり把握し、ご自身の事業内容を再確認することで家事関連費として経費にできる金額が増えるかもしれません。確定申告の時期までもう少し時間があります。もう一度確認されてはいかがでしょうか。
監査部 波多江正暁