経費とは…  ~ 家事関連費について ~

2016年12月26日 | 税務情報(個人関係)

2016年の弊所blogも今日が最後となります。個人事業を営まれている方々は、年明けの所得税確定申告に備え今年の経費をどうするか、ほとんどの方向性は決まっている状況かと思います。個人事業の場合は元旦から大晦日までが計算期間となる暦年課税ですので、確定申告を見据えての取引の締め切りは、残り1週間足らずです。

 さて、今回はキホンの「キ」にあたる話題を取り上げてみようと思います。税金は、懐からお金が少なくなるものなので、誰しも痛いものです。その税金を減らすことができる方法は原則的には、売上を下げるか、経費を増やすしかありません。当たり前の話ですが、とても大ざっぱに言えば税額は次の算式で求められます。

売上 - 経費 = 利益

利益 × 税率 = 税額

しかし、売上を減らすというのは現実にモノやサービスの提供が完了していないのであれば問題ありませんが、そうでない、つまりモノやサービスの提供が完了しているのに意図的にこれを隠して決算書の売上を下げるのであれば、脱税になってしまいます。よってここに可能性はありません。

 では、経費はどうでしょうか。経費を大きくすれば利益の圧縮につながります。では、経費とは何なのでしょうか?みなさんいろいろイメージはあると思いますが、所得税法37条では必要経費について次のように規定しています。

 (必要経費)

第三七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(‥中略‥)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(‥中略‥)の額とする。

 簡単に表現すれば、次の2点に集約されます。

(1) 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額

(2) その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

つまり(1)では、売上を獲得するための仕入原価や、仕入原価以外にも直接必要であったものを、また(2)では業務上関係のあるものを、経費への算入について言及しています。

(1)では、“直接必要”という部分の「直接性」が、(2)では“業務関連性”についての議論がよくあります。

 そこで今回は“業務関連性”で話題となることが多い、家事関連費について注意すべき点を考えましょう。

 家事関連費

所得税の場合、例えば自宅を店舗や事務所に使用して事業を営んでいると、水道光熱費や通信費あるいは家賃や固定資産税等々… 事業でも使っているし、事業と関係のないプライベートでも使っている、そんな経費があると思います。これらを一定割合、業務に関連する部分について経費にすることができます。このような経費を家事関連費といいます。

 では、この家事関連費のうち必要経費になるのは、どのような金額なのでしょうか。それは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られます。

 つまり、家賃であれば事務所や店舗で使用する面積が全体の面積のうちどのくらいの割合なのか、ということを明らかにする必要がある、ということです。家賃のように面積では明らかにできないものについては、時間などの客観的に測ることができる基準に基づいて使用頻度等を明らかにし、事業に関連する金額を限定していく、という計算が必要になります。

 言い換えると、業務関連性について誰が見ても合理的な基準に基づき算定した金額であれば経費にすることが可能となるわけです。もしそこで、合理的な説明がつかないものがあれば、経費にできなくなる可能性が高まってしまいます。

 なんでも経費にしよう!と思って説明のつかないものまでも家事関連費として経費にすると税務調査時には墓穴を掘ったことになりかねません。合理的な説明のつくものに対象を限定しておくことが、結果的に得策となることも考えられます。ご自身が家事関連費として経費処理したものについてはその算定根拠を明らかにできるよう準備しておきましょう。

 事実関係をしっかり把握し、ご自身の事業内容を再確認することで家事関連費として経費にできる金額が増えるかもしれません。確定申告の時期までもう少し時間があります。もう一度確認されてはいかがでしょうか。

 監査部 波多江正暁


個人型確定拠出年金 iDeCo

2016年12月19日 | Weblog

今年も残り10日となってしまいました。年末年始のご予定はお決まりでしょうか?

この時期の税理士事務所の業務と言えばやはり年末調整です。給与では概算で所得税を徴収します。

収入や扶養親族、保険などを考慮し正しい税額を計算する作業が年末調整です。

そんななか最近注目の個人型確定拠出年金についてお話をしたいと思います。

 

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)とは、公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金の一つです。基礎年金や厚生年金に確定拠出型年金を加えることで、より豊かな老後を過ごす事が可能となります。さらにiDeCoには税制優遇措置が設けられています。

iDeCoの税制優遇措置

①掛け金は全額所得控除・・・新個人年金保険は40,000円 旧個人年金保険は50,000円が所得控除の限度額とされている事を考えるとiDeCoへの掛金は現役時の節税となります。

②運用益kも非課税で再投資・・・通常、金融商品の運用益は税金がかかりますが、iDeCoの運用益は非課税です。

③受け取りの際も税制優遇措置あり・・・一時金として受け取るのであれば退職所得控除、年金として受け取るのであれば公的年金控除を受ける事ができます。

iDeCoは平成29年1月から、専従主婦、公務員の方も含め60歳未満のすべての方が利用できるようになりました。

iDeCoの特徴は自分で運用方法を選べることです。取扱い金融機関が様々な運用商品を提示しています。自分に最も合うものを検討してから加入しましょう。

 

 監査部2課

尾方 鼓


103万円の壁が150万円まで広がるか?

2016年12月12日 | Weblog

みなさんおはようございます。早いもので今年も残すところ半月ほどになりました。いかがお過ごしでしょうか。やり残しの無いよう、きっちり片付けて新年を迎えたいものです。

 

さて、弊所では只今年末調整の真っただ中といった状況にあります。

もちろん扶養(税だと103万円、社会保険の場合は130万円が上限)の範囲内で働いているパートさん達の年末調整も多く扱います。

つい先日12月8日に与党の平成29年度税制改正大綱が発表になり、配偶者特別控除について大きな変更点がありましたので本日はこれについて検証してみたいと思います。

 

大綱発表日の夜のニュースでは夫の所得(夫の収入が多いという前提で話を進めます)から38万円の所得を控除できる妻の収入上限が103万円から150万円(夫の給与収入が1,120万円未満の場合)に広がることについて街頭インタビューが流れていました。総じてもっと働けるといった喜びの声が多かったように思います。ところが130万円を超えると新たに社会保険料の本人負担が生じることについては誰も触れていなかったので本当にメリットがあるのか検証してみたいと思います。

 

現状言われている103万円の壁や130万円の壁の理由を確認しておきましょう。

103万円で抑えていた理由としては、所得税を払わなくて済む、夫の会社から家族手当がもらえるというのが大きいと思います。会社によりますが103万円の水準が企業の家族手当制度等の支給基準に援用されていることが多いと思います。103万円を超えることによる税負担と、打ち切られる家族手当では家族手当の額の方が大きいのではないかと思います。

 

一方、130万円に押さえたい理由としは、夫の社会保険の扶養に入ることができるので自身で社会保険料負担をせずに済むことです。

 

今回、夫から38万円の所得控除が適用できる妻の収入上限が103万円から150万円に増えましたが、社会保険加入要件の130万円はそのまま生きていますので注意が必要です。

給与収入150万円という水準は、安倍内閣が目指している最低賃金の全国加重平均額である1,000円の時給で1日6時間、週5日勤務した場合の年収144万円を基準に設けられたということが大綱に記載されていました。

 

それでは、現状103万円で就業調整している人が144万円まで増やした場合を具体的金額で検証してみます。

 

 

①-②

給与収入

144万円

103万円

41万円

社会保険料

21万円

0円

21万円

所得税・住民税

3万円

5,000円

25,000円

手取り

約120万円

約102万円

約18万円

勤務時間

1,440時間

1,030時間

410時間

※①は130万円を超えていますので社会保険料の加入が必要になります。

 

比較してみると確かに社会保険料や税金を差し引いた手取りは18万円ほど増えますが、働く時間は410時間も増えています。この18万円を増やすために費やした410時間を時給で考えると時給439円になってしまいます。社会保険料を払うために働いているようなものですね。さらに夫の会社によっては扶養手当の支給が止まってしまうということがあれば、世帯の手取りは逆に減ってしまう可能性もあります。

 

社会保険については夫の扶養から外れて自身で加入することにより将来の年金受取額が増える等のメリットはあるかもしれませんが、今を大事にしたいという考え方からすると割に合わない気もします。そう考えると依然として130万円の壁は厚いのではないかと思います。税金だけでなく社会保険加入要件や企業の家族手当のあり方も含めた議論が必要で、すぐには就業調整の解消には結びつかないのではないかと思います。

 

監査部2課 藤野慶一


インターネットを使った歯科医のマーケティング戦略

2016年12月07日 | Weblog

 

皆さんこんにちは。

12月に入り気温もグッと下がりクリスマス気分も盛り上がって参りました。

朝なかなか布団から出られない、夜はこたつでテレビやスマートフォンを見ているという方も多くなってきたのではないでしょうか?

 

ある調査で、スマートフォンを所有する15歳以上60歳未満の男女を対象に、一日にどれくらいスマートフォンを利用するか聞いたところ、「2時間以上3時間未満」の割合が最も多く、22.4%。3時間以上の割合を合わせると、46.0%にものぼると出ておりました。

そこで今回は「インターネットを使った歯科医のマーケティング戦略」と題してブログを書いてみようと思います。

 

日本のインターネット利用者は今でも増え続けています。
スマートフォンが普及し、さらに増えていくことは確実です。

歯医者(歯科医院)がマーケティング戦略で競合に勝つためには、「インターネット」への対策が一番重要と言っても過言ではありません。

まだ多くの歯科医院が、「ただホームページを持っているだけ」の状態で、集客効果を出すことができていません。

集客できる歯科医院のインターネットマーケティング戦略についてこれから詳しく説明します。

 

①ホームページが基本

インターネットマーケティングでは、以下のようにたくさんの手段があります。
SEO、リスティング広告、アフィリエイト広告、ブログ、Facebook、Twitter、Youtube、LINE、など。

ただ、どれを行うにしてもホームページを持つことが基本になります。
集客のできる効果的なホームページを持つことが大切です。

集客のできるホームページとは、次のようなホームページです。

他院との違いが分かる

多くの歯科医院からあなたの歯科医院を選ばければいけない理由が分かるように書かれていなければいけません。
患者の方には、たくさんの選択肢があります。
なぜ自分の歯科医院に来る必要があるのか、説明してあげてください。

どんな人がやっている歯科医院かが分かる

医療は特に信頼性が大切です。
どんな人がやっているか分からない歯科医院に患者の方が行くと思いますか?
顔写真が掲載されていて、安心できる歯医者をふつうは選びますよね。
顔写真を掲載して、自分の経歴・実績・人間性などを伝えてあげましょう。

場所・連絡先・診察時間がすぐ分かる

当たり前だと思うかもしれませんが、本当に見やすくなっていますか?
改めてパソコンとスマートフォンから自分のホームページを確認してみてください。
見やすくないと、すぐに他院のホームページへと移動してしまいます。

他にも大切な要素はありますが、重要ポイントについて挙げました。

②ホームページへアクセスを集める

ホームページへのアクセス数がないと、予約や来院はありません。
どれだけ多くの人にホームページを見てもらえるかが大切です。

先ほど挙げた手段の中から代表的なものを紹介します。

SEO

SEOとは、「Search Engine Optimization」の略で「検索エンジン最適化」のことです。
主に以下のキーワードで検索されるときに自分のホームページが1ページ目に表示されるようにしていきましょう。

 「地名 + 歯医者・歯科医院」 

このキーワードは、歯医者へ行く人が検索するキーワードです。

リスティング広告

SEOと同じように、検索エンジン(GoogleやYahoo)で検索されたときにアクセスを集める方法です。
SEOと違い、広告費を支払って自分のホームページを掲載します。
クリックされるごとにお金がかかる仕組みです。

あなたの歯科医院に来そうな方が検索するキーワードで出稿し、ホームページへ来てもらえるようにします。
そのうち、何人かが実際に来院してくれます。

ブログ

ブログでは、SEOで紹介したキーワード以外にも様々なキーワードを狙いながら、記事を増やしていきます。
ホームページの固定ページだけでは伝えきれない治療に関することや歯科医院のことを患者の方へ教えてあげてください。
教えてもらった患者の方は、その歯医者へ信頼を寄せるようになります。

Facebook

Facebookは、口コミマーケティングに適しています。
検索エンジンとは異なり、人と人のつながりが重要視されるメディアです。

Facebookで友だちを増やしながら、情報発信をして、口コミが広がるようにしましょう。
口コミは信頼性が高く、友だちが勧めてくれた歯医者には行く可能性が高いです。

③問い合わせや予約を取りやすく

ここまででこの歯医者に行こうと思ってくれた患者の方へ最後の案内が必要です。
予約のメールや電話をもらわなければいけません。
※予約せずに来院する人もいるでしょう。

問い合わせや予約のメールや電話のときに気をつけるべきことを挙げます。

メールフォーム

メールで問い合わせをしたい人へは、メール問い合わせフォームを案内してあげましょう。
フォームの項目は多くしないようにしてください。

住所など、問い合わせの時点で聞かなくてもいい情報までフォームに記入させていることが多いです。
項目が多いと、面倒になって問い合わせなくなります。

予約フォームも使いやすいフォームにしましょう。

電話

電話番号を大きく分かりやすく表示してあげてください。
どのページに行ってもすぐに分かるようにしてください。

さらにスマートフォンからアクセスした人が、電話番号記入画面に戻って電話番号を1つずつ打ち込まなくていいように、電話番号をタップしたら電話を掛けられるようにしてあげましょう。

まとめ

ここまで説明したことをまとめます。
・ホームページが基本
・ホームページへアクセスを集める
・問い合わせや予約を取りやすく

これらすべてが出来ているホームページでしたか?
1つずつ確認して出来ているかチェックしてください。
これらがすべて出来ていれば、あなたのホームページは集患できます。

 

監査部 1課

柴田 恭兵


直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税について

2016年12月05日 | Weblog

皆さまおはようございます。

本日は住宅取得等資金の贈与税の非課税制度について書きたいと思います。

当制度の詳細は、国税庁HPの【直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税】にございますので、ご確認いただけると幸いです。

ここでは要約してご説明させていただきます。

 

先日、担当するお客様から自宅を購入する際に父からお金を援助してもらうが何か税金に影響がありますか?とのご質問をいただいたので当制度の適用を提案させていただきました。

当制度は平成2711日から平成331231日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります(以下、「非課税の特例」といいます。)。

平成2811日~平成32331日の非課税限度額は省エネ等住宅の場合は1,200万円、それ以外は700万円。

※消費税率が10%になりますと非課税限度額がグッと上がります。

 

このお客様は母から2,000万円お金を貰い、住宅を取得されるとの事で、当制度を適用しない場合は2,000万円から110万円(基礎控除)を差し引いた金額が贈与税の対象となります。

当制度を適用した場合は2,000万円から110万円と1,200万円を差し引いた金額が贈与税の対象となります。

※税率については【国税庁 贈与税 税率】で検索されてください。

 

結論を申しますと、このお客様は当制度の適用を選択され、2,000万円から1,200万円を差し引いた金額に相続時精算課税制度を適用する事が決まりましたので、この時点での贈与税は0円となりました。

※相続時精算課税制度については【国税庁 相続時精算課税制度】で検索されてください。

 

なお、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度を適用した場合は仮に上記お母様がお亡くなりになった際に相続税の負担はございません。ただし、相続時精算課税制度適用部分(800万円)については相続財産に含めて相続税の計算をしないといけません。

 

また、当制度の注意点として母から贈与を受けた資金は必ず土地建物の取得に充てなければなりません。仮に家具雑貨等に使用した場合は当制度の対象外になります。

 

その他、このお客様が気にされていた事は直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税と相続時精算課税制度の両方を適用する事は準備する書類や手続きがかなり複雑になり、申告も大変なのでは?との事でした。

回答と致しましては住宅取得等資金の贈与税の非課税制度の申告と同時に相続時精算課税制度の申告が出来ますので、複雑にはなりません。

 

本日は贈与税や相続税が絡み、内容も浅いところまでしか記載しておりませんので、ご不明点や、適用を検討したいが関与税理士がいないという方は当事務所へご相談ください。

また、日々寒さが厳しくなりますので、お身体こわされませんよう、お気を付けください。

 

 

                                    監査部 3課 

                                    梅北 聖人