一週間前の11月17日に弊所主催セミナーが行われた。歯科データの紹介とその説明を、歯科衛生士にスポットをあてながら行い、会場を利用時間ギリギリまで使っての活気に溢れたセミナーとなりました。午前中は雨だったにもかかわらず、多くの方にご来場いただき心より感謝申し上げます!
仕事柄、歯科データをはじめとした様々なデータを扱うことから、その分析においては持ち前の数学的センスと美的センスを十分にそして存分に発揮し業務にあたっているが、時折統計の罠に捕まりそうになることがある。
ある話を紹介します。何が間違っているのか一緒に考えてみましょう。
第二次世界大戦。米国海軍は前線へ向かう戦闘機の帰還率を高めるために戦闘機の装甲や装備品の見直しを行ったことがある。調査団が乗船している巨大な空母には前線から帰還してくる戦闘機が次々と着艦していく。調査団は数十数百というサンプルを回収し本部へ持ち帰って研究した。どんなことが見えてきただろう。研究所での分析の結果、なんとどの機体もほぼ同じ箇所に幾重にも被弾した跡がみられたのだ。そこで研究者たちは、この部分こそ補強すべき箇所だと判断し、報告書をまとめた。
この話何がおかしいのだろう。「うんうん。その通りだ。」と頷いてしまいそうですが。おわかりになりましたか?
これは、「目的に対して母集団の設定が不足している」「母集団に対して抽出したサンプルへの判断が間違っている」ということを端的に説明した話です。調査団の調査目的は戦闘機の帰還率を高めることでした。ところが彼らが調査できたのは帰還した戦闘機ばかりです。もしあなたが調査団のリーダーならば、受け取った報告書を眺めながらこう言わなければなりません。「これら帰還した戦闘機の最も被弾していない箇所を補強しなさい」と。その理由は下記の通りになります。
① 帰還した戦闘機が被弾している箇所というのは致命傷にならなかった箇所。
② 帰還しなかった戦闘機は致命傷を負ったために帰還できなかった(のだろう)。
③ 帰還しなかった戦闘機を調査することはできないため②は推測するほかない。
④ ①~③を踏まえると、「帰還しなかった戦闘機は、帰還した戦闘機が被弾しなかった部分に被弾したのではないか」ということがみえてくる。
⑤ 帰還した戦闘機が被弾していなかった箇所こそ補強すべき箇所である。
このような統計上のトリックというか罠は日常の中でもよく見かけます。特に、母集団が正常ではないために異常な結果が導かれているにもかかわらず、なにくわぬ顔で垂れ流されている統計やデータというのは山のようにあります。
私たちがただ単にこれらの情報を日常生活の一部として受け取るだけなら問題はないでしょう。しかしこれが経営上の判断に結び付くとなればそうはいきません。患者分析、市場分析、様々な自院分析結果を院長先生や事務長は目の当たりにすることと思いますが、それらが根底から間違っていたとしたら。
個々の歯科医院の数字だけでは偏りが強く出ます。毎月毎月試算表を提示されながら去年に比べどうでしたねという期間比較はできても、全体の流れとの比較、他の医院との比較は単独ではできません。多くの数字の中での比較は自分の歯科医院が置かれている場所を知ることにつながります。
15年以上に渡る歯科データの分析に基づき、そのデータ水準がさらに現実に近づくよう参加歯科医院様の拡大に努力しています。(弊所のような歯科に強い税理士事務所に関わっていただいている時点で、その歯科医院様ほとんどが標準を上回る数値を示す傾向が強いという嬉しいもどかしさに悩まされたりしながらではありますが。)今回は第一回目の歯科データ解説セミナーでした。次回はより多くの歯科医院様のご協力をいただき、今回よりもさらに精度を増した歯科データとなるように進化させていきます。今後とも強存強栄!福田英一にご期待くださいますようよろしくお願い申し上げます!
監査部一課 原浩恭
仕事柄、歯科データをはじめとした様々なデータを扱うことから、その分析においては持ち前の数学的センスと美的センスを十分にそして存分に発揮し業務にあたっているが、時折統計の罠に捕まりそうになることがある。
ある話を紹介します。何が間違っているのか一緒に考えてみましょう。
第二次世界大戦。米国海軍は前線へ向かう戦闘機の帰還率を高めるために戦闘機の装甲や装備品の見直しを行ったことがある。調査団が乗船している巨大な空母には前線から帰還してくる戦闘機が次々と着艦していく。調査団は数十数百というサンプルを回収し本部へ持ち帰って研究した。どんなことが見えてきただろう。研究所での分析の結果、なんとどの機体もほぼ同じ箇所に幾重にも被弾した跡がみられたのだ。そこで研究者たちは、この部分こそ補強すべき箇所だと判断し、報告書をまとめた。
この話何がおかしいのだろう。「うんうん。その通りだ。」と頷いてしまいそうですが。おわかりになりましたか?
これは、「目的に対して母集団の設定が不足している」「母集団に対して抽出したサンプルへの判断が間違っている」ということを端的に説明した話です。調査団の調査目的は戦闘機の帰還率を高めることでした。ところが彼らが調査できたのは帰還した戦闘機ばかりです。もしあなたが調査団のリーダーならば、受け取った報告書を眺めながらこう言わなければなりません。「これら帰還した戦闘機の最も被弾していない箇所を補強しなさい」と。その理由は下記の通りになります。
① 帰還した戦闘機が被弾している箇所というのは致命傷にならなかった箇所。
② 帰還しなかった戦闘機は致命傷を負ったために帰還できなかった(のだろう)。
③ 帰還しなかった戦闘機を調査することはできないため②は推測するほかない。
④ ①~③を踏まえると、「帰還しなかった戦闘機は、帰還した戦闘機が被弾しなかった部分に被弾したのではないか」ということがみえてくる。
⑤ 帰還した戦闘機が被弾していなかった箇所こそ補強すべき箇所である。
このような統計上のトリックというか罠は日常の中でもよく見かけます。特に、母集団が正常ではないために異常な結果が導かれているにもかかわらず、なにくわぬ顔で垂れ流されている統計やデータというのは山のようにあります。
私たちがただ単にこれらの情報を日常生活の一部として受け取るだけなら問題はないでしょう。しかしこれが経営上の判断に結び付くとなればそうはいきません。患者分析、市場分析、様々な自院分析結果を院長先生や事務長は目の当たりにすることと思いますが、それらが根底から間違っていたとしたら。
個々の歯科医院の数字だけでは偏りが強く出ます。毎月毎月試算表を提示されながら去年に比べどうでしたねという期間比較はできても、全体の流れとの比較、他の医院との比較は単独ではできません。多くの数字の中での比較は自分の歯科医院が置かれている場所を知ることにつながります。
15年以上に渡る歯科データの分析に基づき、そのデータ水準がさらに現実に近づくよう参加歯科医院様の拡大に努力しています。(弊所のような歯科に強い税理士事務所に関わっていただいている時点で、その歯科医院様ほとんどが標準を上回る数値を示す傾向が強いという嬉しいもどかしさに悩まされたりしながらではありますが。)今回は第一回目の歯科データ解説セミナーでした。次回はより多くの歯科医院様のご協力をいただき、今回よりもさらに精度を増した歯科データとなるように進化させていきます。今後とも強存強栄!福田英一にご期待くださいますようよろしくお願い申し上げます!
監査部一課 原浩恭