進化する歯科データ!

2013年11月25日 | Weblog
一週間前の11月17日に弊所主催セミナーが行われた。歯科データの紹介とその説明を、歯科衛生士にスポットをあてながら行い、会場を利用時間ギリギリまで使っての活気に溢れたセミナーとなりました。午前中は雨だったにもかかわらず、多くの方にご来場いただき心より感謝申し上げます!

仕事柄、歯科データをはじめとした様々なデータを扱うことから、その分析においては持ち前の数学的センスと美的センスを十分にそして存分に発揮し業務にあたっているが、時折統計の罠に捕まりそうになることがある。

ある話を紹介します。何が間違っているのか一緒に考えてみましょう。

第二次世界大戦。米国海軍は前線へ向かう戦闘機の帰還率を高めるために戦闘機の装甲や装備品の見直しを行ったことがある。調査団が乗船している巨大な空母には前線から帰還してくる戦闘機が次々と着艦していく。調査団は数十数百というサンプルを回収し本部へ持ち帰って研究した。どんなことが見えてきただろう。研究所での分析の結果、なんとどの機体もほぼ同じ箇所に幾重にも被弾した跡がみられたのだ。そこで研究者たちは、この部分こそ補強すべき箇所だと判断し、報告書をまとめた。

この話何がおかしいのだろう。「うんうん。その通りだ。」と頷いてしまいそうですが。おわかりになりましたか?

これは、「目的に対して母集団の設定が不足している」「母集団に対して抽出したサンプルへの判断が間違っている」ということを端的に説明した話です。調査団の調査目的は戦闘機の帰還率を高めることでした。ところが彼らが調査できたのは帰還した戦闘機ばかりです。もしあなたが調査団のリーダーならば、受け取った報告書を眺めながらこう言わなければなりません。「これら帰還した戦闘機の最も被弾していない箇所を補強しなさい」と。その理由は下記の通りになります。

① 帰還した戦闘機が被弾している箇所というのは致命傷にならなかった箇所。
② 帰還しなかった戦闘機は致命傷を負ったために帰還できなかった(のだろう)。
③ 帰還しなかった戦闘機を調査することはできないため②は推測するほかない。
④ ①~③を踏まえると、「帰還しなかった戦闘機は、帰還した戦闘機が被弾しなかった部分に被弾したのではないか」ということがみえてくる。
⑤ 帰還した戦闘機が被弾していなかった箇所こそ補強すべき箇所である。

このような統計上のトリックというか罠は日常の中でもよく見かけます。特に、母集団が正常ではないために異常な結果が導かれているにもかかわらず、なにくわぬ顔で垂れ流されている統計やデータというのは山のようにあります。

私たちがただ単にこれらの情報を日常生活の一部として受け取るだけなら問題はないでしょう。しかしこれが経営上の判断に結び付くとなればそうはいきません。患者分析、市場分析、様々な自院分析結果を院長先生や事務長は目の当たりにすることと思いますが、それらが根底から間違っていたとしたら。

個々の歯科医院の数字だけでは偏りが強く出ます。毎月毎月試算表を提示されながら去年に比べどうでしたねという期間比較はできても、全体の流れとの比較、他の医院との比較は単独ではできません。多くの数字の中での比較は自分の歯科医院が置かれている場所を知ることにつながります。

15年以上に渡る歯科データの分析に基づき、そのデータ水準がさらに現実に近づくよう参加歯科医院様の拡大に努力しています。(弊所のような歯科に強い税理士事務所に関わっていただいている時点で、その歯科医院様ほとんどが標準を上回る数値を示す傾向が強いという嬉しいもどかしさに悩まされたりしながらではありますが。)今回は第一回目の歯科データ解説セミナーでした。次回はより多くの歯科医院様のご協力をいただき、今回よりもさらに精度を増した歯科データとなるように進化させていきます。今後とも強存強栄!福田英一にご期待くださいますようよろしくお願い申し上げます!

監査部一課 原浩恭

セミナーを開催しました!!

2013年11月18日 | 歯科情報
皆様、こんにちは。

先週は全国的に気温が下がり、急に冬の訪れを感じる週末となりました。季節の変わり目ですので、皆様も風邪などひかないようお気を付け下さい。

さて、このところ税務情報をお知らせすることが多かったこのブログですが、今回は昨日行ったセミナーについてご報告をさせて頂きます。

 今年も福岡、佐賀、長崎などで数々講演をさせて頂いておりますが、弊所主催のセミナーはこの11月17日に行われたセミナーが、今年初めてのものとなりました。

 『歯科経営 成功のレシピ 教えます』と題して、アクロス福岡6Fの会場で行われた今回のセミナーですが、ゲストにJOKANスクール代表でフリー衛生士の草分け的な存在の上間京子先生を迎え、20名以上の方にご参加頂き無事終えることができました。寒い中、広島からいらして頂いた上間先生、遠いところでは山口、大分からいらして頂いた先生方にこの場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました!

 上間先生からは、ご自身のこれまでの経歴から、日本における歯科衛生士という職業の持つ問題点、仕事を行う上で生じる歯科医師の方々とのギャップなどをお話頂きました。講演の最後には質疑応答の時間を取らせて頂きましたが、衛生士の採用・育成などについて参加者の皆様からも様々なご質問がござました。

 福田の講演でもお話をさせて頂きましたが、今後は治療・補綴中心の診療から、予防・メンテナンス中心の診療へと、ますます診療の形態は変わっていくことと思います。その中で歯科衛生士という仕事の持つ役割は益々重要になっていくことは間違いありませんが、その過渡期におかれている院長先生方の悩みの深さを感じたセミナーでした。

 弊所では今後もこういったセミナーを開催させて頂き、歯科医院に携わる方々に様々な情報をご提供できるよう精進して参りますので、今後ともよろしくお願い致します!!

監査部1課 川端正人

 

消費税の価格転嫁対策

2013年11月11日 | Weblog
みなさん、おはようございます。

秋も一段深まり、食欲・スポーツ・行楽・芸術・読書にはピッタリの季節になりましたが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

さて、8月10日に消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法が可決し、来年4月1日から現行の5%から8%へ引き上げられることになりました。今日は消費税増税に伴う増税分の価格転嫁についてお話ししたいと思います。

(消費税は滞納が多い)
東京国税局が平成25年8月に発表した「平成24年度 租税滞納状況について」によると平成23年度までの国税の滞納額は7,463億円で、うち消費税は2,110億円(消費税は全体の28%)、平成24年に新たに生じた国税の滞納額は2,351億円で、うち消費税は1,121億円(なんとほぼ半分の48%が消費税!)となっています。消費税の滞納額は全税目の中でも一番多くなっています。

(価格転嫁)
心配なのは、売手が増税分をきちんと価格に転嫁できるかということです。平成9年4月に消費税率を3%から5%に引き上げた際、立場の強い小売業者が、仕入れ先の中小企業に増税分の価格転嫁を拒否する行為が相次ぎました。日本商工会議所などの調べでは、9年の消費税増税時に、中小零細業者の5割超が、消費税の増税分を納入価格に転嫁できなかったということです。このような状況では立場の弱い者に負担を強いることになり、また消費税の滞納を一段と深刻化させてしまいます。
当然ながら、消費増税分の価格転嫁が100%実施されることが必要です。これについては消費税転嫁対策特別措置法が平成25年10月1日から施行されています。立場の強い買手が弱い売手に対して減額、買いたたき、商品購入・役務利用または利益提供の要請、本体価格での交渉拒否、報復行為が禁止されることになりました。

(転嫁Gメン)
また実効性を高めるため、経済産業省は10月2日、来年4月の消費税率引き上げを前に「消費税転嫁対策室」を中小企業庁や全国の経済産業局に設置しました。約500人の「転嫁対策調査官(転嫁Gメン)」を配置し、大企業が下請けの中小企業などとの取引で消費税分の価格転嫁を阻んでいないか監視するそうです。転嫁対策調査官は、書面や実地での聞き取り調査などを通じ、消費税分の不払いや、支払い時に対価の一部を差し引くなどの行為が行われていないか監視し、悪質な事例が判明した場合には、公正取引委員会が是正を勧告し、企業名を公表します。

立場の弱い者だけが負担を強いられることなく、消費者・サービスの提供を受けた者が負担するという消費税法本来の仕組みに則り、また増税分が今回の増税目的である社会保障のために使われ、そしてより良い社会になっていくことを切に望みます。
藤野慶一

確定申告での適用となる所得控除

2013年11月05日 | Weblog
 皆様、おはようございます。
 
 私どもの業界では、年末調整の時期が近づき、これから年末に向けて、年末調整業務が中心となる時期でございます。
 会社などにお勤めの方は、生命保険料の控除証明書など、年末調整で必要となる資料がご自宅に届いている時期ではないかと思います。


 本日は、所得税の計算における「所得控除」について、年末調整では控除されず、確定申告において控除される項目をご紹介させて頂きます。

 まず、「所得控除」とは、所得税額を計算する際に、税率を乗じる対象となる課税所得から差し引く控除をいい、居住者などに適用される所得控除は全部で15種類あり、列挙させて頂くと以下のとおりとなります。

① 雑損控除 ② 医療費控除 ③ 社会保険料控除 ④ 小規模企業共済等掛金控除
⑤ 生命保険料控除 ⑥ 地震保険料控除 ⑦ 寄付金控除 ⑧ 配偶者控除
⑨ 配偶者特別控除 ⑩ 扶養控除 ⑪ 寡婦控除 ⑫ 寡夫控除 ⑬ 障害者控除
⑭ 勤労学生控除  ⑮ 基礎控除

 では、この中で年末調整では控除することができず、確定申告をすれば控除することができるものは、どの所得控除であると思いますか?

 それは、「①雑損控除」と「②医療費控除」と「⑦寄付金控除」の3つの所得控除です。

 簡単にこの3つの所得控除をご説明させて頂きます。

□ 雑損控除

   本人又は本人と生計を一にする親族(所得要件有り)の有する一定の資産について、「災害・盗難・横領」による損失が生じた場合に、その損失額によって、一定の控除ができる制度をいいます。

□ 医療費控除

   本人が自己又は自己と生計を一にする親族のために支払った医療費の金額が、一定額を超える場合に、一定の控除ができる制度をいいます。

  医療費控除については、適用例も多いため、もう少し詳しくご説明をさせて頂きます。

 ・控除額の算式

   (実際に支払った医療費の額 - 保険金等で補填される金額)- A(注1)                      = 医療費控除額(200万円を限度)
  
  (注1)
    a 課税標準の合計額 × 5%
    b 10万円
    c aとbのうちいずれか少ない金額 ⇒ A

   上記の算式のように、医療費控除の金額は、まず、対象となる医療費から保険金等の入金額を差し引きます。
   そして、その差し引いた金額が、課税標準の合計額の5%と10万円のいずれか少ない金額を超えた場合、その超えた金額が医療費控除の金額となります。
   ただし、医療費控除額は200万円を限度とすることになります。

 ・対象の医療費

   医療費といっても、すべての医療費が対象とはなりません。
対象となる医療費は、内容等で判断することになりますが、一般的に、通常の生  活のために必要な治療などは対象となることが考えられます。つまり、この治療  をしなければ、通常の生活に支障が出てしまうようなものです。
   それとは対照的に、疾病予防費用(栄養ドリンクなど)や美容整形費用などは、上記には該当しないと考えられ、医療費控除の対象とはなりません。
   医療費については様々な種類があり、判断が難しいケースもありますので、こちらは確定申告をされる前に税務署や専門家などにご確認をされることをお勧めします。

 ・未払いの医療費の取り扱い
   
   その年の12月31日時点において、未払いの医療費は、その年の確定申告では計算することができないこととなっています。

 ・保険金等を受け取った場合

   医療費によっては、保険金などの入金が考えられるケースがあります。このような場合には、上記の算式のように、保険金などの入金額は、その保険金等の対象となった医療費から差し引いて、対象の医療費の金額を計算することとなります。
   なお、医療費から差し引かれる保険金等は、個別対応となります。

□ 寄付金控除

   特定寄付金(国などに対する寄付金その他一定のもの)を支出した場合に、一定の控除が認められる制度をいいます。

 以上となります。

 この3つの所得控除の適用をされる場合には、事業などをされており、毎年確定申告をされている方については、その確定申告時にこれらの所得控除も計算対象にして頂ければと思います。
 一方、会社などにお勤めの方で毎年、年末調整をされている場合には、通常どおり、会社で年末調整をされた後に、会社から発行される源泉徴収票をもって確定申告をして頂ければと思います。

 本日は、医療費控除を中心に、確定申告での適用となる3つの所得控除をご紹介させて頂きました。

 これらの所得控除が適用できるかどうかの判断については、細かな要件など、税務判断が必要となりますので、確定申告をされる際は、専門家等にご相談頂ければと思います。

監査部 木山 浩晃