社会保険の加入対象拡大について

2016年09月26日 | 労務情報

あと1週間で10月です。2016年も残り3ヶ月ですね。時がすぎるはやさに驚きを隠せません。

2016年10月1日より、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入対象を拡大する制度改正が施行されます。

拡大後は、従業員数501人以上の企業に1週間の労働時間が20時間以上で月額賃金88,000円以上、

1年以上の雇用見込みで勤務する方が対象となります。

平成31年9月までに上記の結果に基づき適切な措置をとることがきまっているので、平成31年10月以降は

501人以下の企業も対象となる可能性があります。

先日の配偶者控除廃止のニュースと合わせて、人の働き方が変わり、それに合わせて制度も変わっているのでしょう。

 

社会保険は雇用主と雇用者が半額ずつ負担しますので、負担が増加する企業もあるかと思います。

今回、対象となる方でも出来ることなら社会保険の扶養のままでありたいと思っているかたもいらっしゃるようです。

中小企業も対象となる可能性を考慮するのであれば、平成31年にむけてパートの労働時間を調整するなどして、

従業員の方が気持ちよく働ける環境を整備していくことが必要になります。中小企業は慢性的に人手不足という問題を

抱えています。労働環境を整備することは従業員定着率UPに繋がるはずです。

 

監査部2課

尾方 鼓

 


「換価の猶予」ってご存知ですか?

2016年09月20日 | Weblog

法人でも個人でも事業を営んでいると、多くの場合は年に1回の決算があると思います。

決算では当期の財産状態や経営成績を明らかにして決算書を作成し、税務署等に申告することになります。

申告の期限は法人の場合は決算日から二か月、個人の場合は翌年の3月15日が申告期限です。

振替納税の手続きをとっている場合や、税目によっては若干の違いはありますが、

申告期限=納める税金の納期限であることが殆んどです。

 

無事に決算を終えて申告まで済まそうとしたとき、見受けられることがあります。

急な業績の悪化や予定していた入金がまだない場合、税金を払うだけのキャッシュがない、ということです。

 

そのようなことはあってはならないことですが、長く事業を営んでいるとこんな状況に陥る可能性もゼロとは言えない

かもしれません。転ばぬ先の杖、と言う訳ではありませんが、そんなとき、どんな対応をすべきか知っておくのと、

知らないのでは気持ちのありようが違うと思いますので、今回はそんな話しを国税に限定して進めてみたいと思います。

 

申告書が完成した段階で、納税するだけのキャッシュが今すぐ準備できないという場合、

もしそのまま、放置していておくと税務署から督促状が届きます。

督促状が送付されてもなお納付されないときには、財産の差し押さえなどの滞納処分を受ける場合があります。

 

納税者である私たちが、この「納めるべき税金の未納」という状況を放置しておくと

税金を徴収する側としても“財産の差し押さえなどの滞納処分”という段階に進まざるをえない、ということです。

 

そのようになる前に何かできることはないのか、ということに注意を向けたとき、

『国税を一時に納付できない場合の猶予制度』があります。

 

【国税の猶予制度の概要】

  国税を一時に納付することにより事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあり、

かつ、納税に対する誠実な意思を有すると認められるときは、猶予を受けようとする国税の納期限から

6か月以内に所轄の税務署に申請することにより、1年以内の期間に限り、財産の換価(売却)や

差押えなどの猶予が認められる場合があります。

 

『換価の猶予』とは

国税を一時に納付することにより事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められる場合に、

申請に基づいて差押財産の換価(売却)が猶予される制度です。

 

『納税の猶予』とは

災害、病気、事業の休廃業などによって国税を一時に納付することができないと認められる場合や、

本来の期限から1年以上経って納付すべき税額が確定した国税を一時に納付することができない理由があると

認められる場合に、申請に基づいて納税が猶予される制度です。

 

◆猶予の効果

“換価の猶予”が認められると・・・

① 既に差押えを受けている財産の換価(売却)が猶予されます。

② 差押えにより事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産については、差押えが猶予(又は差押えが解除)される場合があります。

③ 換価の猶予が認められた期間中の延滞税の一部が免除されます。

 

“納税の猶予”が認められると・・・

① 新たな差押えや換価(売却)などの滞納処分の執行を受けません。

② 既に差押えを受けている財産がある場合には、税務署に申請することにより、その差押えが解除される場合があります。

③ 納税の猶予が認められた期間中の延滞税の全部又は一部が免除されます。

 

猶予制度を受けるためには所轄の税務署に換価の猶予申請書を納期限から6カ月以内に提出しなければなりません。

しかし、この申請書を提出したら100%猶予されると言う訳ではありません。

たとえば、国税の滞納がないことが猶予を受ける条件として挙げられています。

 

本来、納税時にキャッシュが無い、ということはあってならないことだと思います。

しかし、猶予制度があるということを知っているだけで随分、対応のしかたが異なってくると思います。

一番良いのは、このような制度を利用しなくてもいいように、納税資金をあらかじめ定期積金等で準備しておかれると

よいと思います。もし決算直後の資金繰りに不安がある方は、定期積金を今日から始めましょう。

そして猶予制度があることも頭のスミにおかれておくと良いと思います。

 監査部 2課

波多江正暁


配偶者控除の廃止?

2016年09月12日 | Weblog

みなさんおはようございます。9月に入り日中はまだまだ暑いものの朝夕は過ごしやすくなりました。季節の変わり目は特に寒暖の差も大きですから体調管理には気を付けていきたいものです。

さて、先週末のニュースに、女性の社会進出を促進するため配偶者控除の見直しに着手することがあがっていました。配偶者控除については結構質問を受けることが多いので関心の高い項目だと思います。

配偶者控除とは、妻の年収が103万円以下の場合に、夫の所得税の計算上38万円を控除できるものです。

妻の収入100万円近辺には、それを超えると税金や社会保険が発生する上限が潜んでいますが、少し複雑ですので金額を追ってみてみましょう。

妻が98万円を超えると妻に住民税がかかります。

妻が103万円を超えると妻に所得税がかかります。夫から配偶者控除が無くなります。

妻が103万円を超えると夫から配偶者控除が無くなりますが、141万円までであれば夫の方で配偶者特別控除が適用できます。

妻が130万円を超えると夫の社会保険の扶養を抜けて自分で社会保険加入しなければなりません。

これ以外にも夫の勤める企業によっては配偶者手当が支給されているところもあり、妻が103万円を超えるとそれがストップする可能性があります。この基準となる金額は企業によりますので要確認です。

配偶者控除が無くなることによって、所得調整を気にせず働けるようになるかと言えばそうでないような気もします。130万円を超えてしまうと新たに発生する社会保険料で手取りが減ってしまいます。手取りを増やそうと思えば150万円を超える働き方をしなければなりません。税だけでなく社会保険も含めた対応も必要ではないかと思います。

女性の社会進出を目的とするのであれば税や社会保険料のことだけではなく保育園の整備など子育て世帯が働きやすい環境を整えることも大事ですね。

監査部2課 藤野慶一


熊本県へふるさと納税。今考える復興支援。

2016年09月07日 | 税務情報(個人関係)

この度の熊本・大分地震により被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

本記事は、フリーランスの方々へ『復興支援』と『納税』について深く考えていただく機会になればと作成しました。復興ボランティアや支援物資・義援金も大切なアクションですが、ここでは『ふるさと納税』を取り上げ、フリーランスの皆さまに復興支援と税の使いみちについて考える時間を作っていただければと思っています。

 

納めた税の使い道を考える

上述した通り、一般的な被災地への支援は物やお金やボランティアによる人の力が中心かと思います。2011年の東日本大震災では、被災地の生産商品の積極的な消費なども注目されました。

今回テーマに掲げた『ふるさと納税』は、新しい支援方法となるかもしれません。ここでは、

          ① ふるさと納税とは?

          ②ふるさと納税が創設された目的

について、掘り下げていきたいと思います。

①ふるさと納税とは?

ふるさと納税とは、ご自身が住んでいる街ではなく、生まれ育った故郷や縁のある地域、興味関心のある地域に対し、寄附を行うことを指します。

名前は『納税』ですが、扱いは『寄附』となります。

ふるさと納税最大の特徴は、寄附の総額から2,000円を差し引いた金額が、所得税や住民税から控除される点にあります。(所得に応じた控除上限があります。)

非常に簡単に説明しますと、所得税と住民税で年間10万円を納めている方が、ふるさと納税制度で1万円を寄附すると、8,000円が控除され、納税額は92,000円になります。

100,000円-(10,000円-2,000円)=92,000円

②ふるさと納税が創設された目的

この制度が創設された背景には、3つの目的(意義)があるとされています。

     1. 税の使い道を考える

     2. 思いのある地域に貢献できる

     3. 自治体が選ばれる納税先になるよう努力する

1.では、納税者が『自分の税はどのように使われるのだろうか』を考えることを目的としています。納税は国民の義務ですが、納める税の使われ方に無関心ではなく、興味関心を持つことは行政への参加の形かもしれません。

2.では、『どの地域に寄附を行うか』を考え、選択することを指しています。生まれ育った故郷に寄附するのも一つでしょう。親、親族の住む地域を選ぶのも一つでしょう。住んだことも、訪れたことがない地域であっても、『応援したい』や『取り組みに賛同した』と考える地域を選ぶことも可能です。

3.は行政側への注文ともとれます。寄附を増したい自治体は、地域の特色を発信していくことや地域の抱える課題と実現したい未来像(解決後の姿)を広く伝えることで賛同者を募ることが重要となります。

 

いつ、ふるさと納税をするべきか

 ふるさと納税は、1~12月の自由な時期に行うことが出来ます。しかし今年に限っては、熊本・大分エリアへのふるさと納税を考えた際には、時期を考える必要があるでしょう。

多くの自治体では、寄附者に対し特産品等のお礼を送っています。地震に伴う道路の寸断や交通機関の乱れ、生産者や販売者が被災されたケースでは、この発送が当初予定通りに行えないエリアも多いことが現状です。

この現状における解決策として、

         1. 今すぐではなく、状況が落ち着くのを待つ

         2. 特産品などのお礼を辞退する

         3. 熊本へのふるさと納税を代理受付する自治体へ寄附する

が挙げられます。

1. 落ち着くのを待つ

フリーランスの方々は、1月~12月の売上・経費・所得を翌年3月中旬ごろまでに確定申告されるかと思います。

今年2016年の12月までに行ったふるさと納税による控除は、所得税の場合で2017年春頃の還付で、住民税は2017年の6月中頃に届く 住民税通知書で確認できます。

つまり、今すぐふるさと納税をしても年内でしても寄附控除の時期は変わりません。被災地の状況に関心を持ち、適切な時期を待つことも一つの選択肢かと思います。

2. お礼を辞退する

現在では、熊本県をはじめとし多くの自治体がクレジットカードでの寄附と銀行振込での寄附に対応しています。このため、お礼の品を辞退さえすれば、現地への負担は事務処理が残りますが小さいと言えるでしょう。

熊本と言えば、果物の晩白柚やデコポン、馬肉(馬刺し)等が有名です。ふるさと納税者へのお礼でもこれらは人気の品ですが、今年はお礼辞退を考えても良いでしょう。

3. 代理受付する自治体へ

熊本県や県内市区町村へのふるさと納税を代理受付している自治体があります。一例として『福井県』が挙げられます。

福井県は『熊本県の災害支援寄付』を受け付けています。ふるさと納税を行うことでの領収証明書は福井県が発行してくれるため、熊本県の事務処理を心配せずに寄附が行えます。当然ながら、お礼等はつかないふるさと納税となります。

あなたはどうすべきと考えますか?

ここまで熊本へのふるさと納税について見てきました。

ここ数年でふるさと納税が広く認知され、制度が意図しない『お礼(特産品)合戦』は本質から逸脱しているとの指摘もあります。

地域の名産品・特産品、観光地をPRしたり、地域理解を深めてもらう目的での返礼品を限度とすべきといった『ある程度容認論』や見返りは一律なしとすべきといった『返礼禁止論』を唱える方々もいます。

本記事は、いずれかの考えや意見を肯定・否定するものではなく、ふるさと納税制度の本来の目的や被災地へ納税を行うという一つの選択肢を情報提供し、読者の皆さまが被災地支援と納税について、深く考えるきっかけになることを望んでいます。

 

監査部一課

柴田 恭兵