先日、弊所の顧問先様のところに税務署から調査したい旨の連絡がありました。
顧問先様の社長や経理を預かっていらっしゃる社長奥様のスケジュールを調整して調査日を設定しました。都合二日間です。
税務調査立会は何度経験しても、あまり気持ちの良いものではありません。私たち税理士業界に身をおく者ですらそうですから、当の調査をされる側の企業様のお気持ちを察すると、「早く終わらせてくれ!」というのが率直な思いかと思います。
今回の調査はオーソドックスな流れで進みました。2日目の最後の段階で合計10項目程度の確認事項や指摘事項が列挙されたのです。この列挙された約10項目のうち、どの項目について、どのような確認作業をし、さらに各項目の税務的な見解についてどのような議論を闘わせるかが調査結果を左右します。押すべきところは押し、引くべきところは引く、といった部分が、多少なりともあるのは事実です。
さて、今回の調査の中で少し気が付いたこと、これは未然に防ぐことができる、ということがありましたのでお話ししたいと思います。
いくつか列挙された項目のうち印紙についての指摘事項があったのです。経理担当の方、あるいは経営者の皆さまは、発行する領収書の金額が50,000円以上のもの(H26.3.31以前は30,000円以上でした)については印紙を貼らなければならないことはご存じかと思います。しかし、印紙を貼らなければならないのは何も「領収書」等だけではありません。通常の事業活動のなかで日常的によく出てくる“一定の書類”にも印紙を貼る必要があります。解りやすく表現すれば「〇〇契約書」という書類を取引先との間で取り交わしたなら、少し立ち止まって「印紙を貼る必要があるかもしれない」と思って頂きたいのです。
印紙を貼る必要がある書類のことを“課税文書”といいます。
「印紙を貼る必要がある」=「印紙税が課税される」ということなのですが、国税庁HPでは次のように記載されています。
課税文書に該当するかどうかの判断 [平成27年4月1日現在法令等]
印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。この課税文書とは、次の三つのすべてに当てはまる文書をいいます。
(1) 印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証明
されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされて
いる非課税文書でないこと。
課税文書に該当するかどうかはその文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、当事者の約束や慣習により文書の名称や文言は種々の意味に用いられています。そのため、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。
例えば、文書に取引金額そのものの記載はないが、文書に記載されている単価、数量、記号等により、当事者間において取引金額が計算できる場合は、それを記載金額とし、また、売掛金の請求書に「済」や「了」と表示してあり、その「済」や「了」の表示が売掛金を領収したことの当事者間の了解事項であれば、その文書は、売上代金の受領書(第17号の1文書)に該当することになります。
印紙税が課税されるのは、印紙税法別表第1(「課税物件表」といいます。)に規定されている20種類の文書で、非課税文書に該当しないものです。
課税物件表↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/inshi/pdf/zeigaku_ichiran.pdf
主な課税文書としては、不動産などの譲渡契約書、土地の賃借権の設定または譲渡契約書、金銭消費貸借契約書、請負に関する契約書、定款、継続的取引の基本となる契約書などがあります。注意すべきことは、課税文書に該当するかどうかの判断は文書に記載されている個々の内容によって判断されることです。単に、文書の名称や形式的文言で判断するのではなく、実質的な意義によって判断します。
慣れない方は少し判断に迷うところかと思います。皆さまの事業活動において、これら課税文書らしい文書というのはそれなりの比率で必要となるのではないでしょうか。
日々の取引のなかで、うっかり忘れてしまいそうな印紙税。
もし、お手許にそのような文書がありましたら、専門家である私ども各担当者に一度見せていただきますようお願いいたします。課税文書に該当するかどうか、判断させていただきます。
監査部 2課
波多江正暁