第三〇課 愛・憎
愛しようと努めたとて、なかなか愛し得るものではありません。愛は花のようなものです。ひとりでに心の中に咲かなければならないものです。花は温かい季節に多く咲きます。心の季節の温かい人は愛の花を多く心に持つわけです。心のあたたか味は何から湧くでしょうか。理解からだと思います。理解を広くしようと心がけている人が世の中を最も広く愛し得るわけなのでありますが……しかし、ここに、感覚 . . . 本文を読む
四国遍路日記
種田山頭火
十一月一日 晴、行程七里、もみぢ屋という宿に泊る。
――有明月のうつくしさ。
今朝はいよいよ出発、更始一新、転一歩のたしかな一歩を踏み出さなければならない。
七時出立、徳島へ向う(先夜の苦しさを考え味わいつつ)。
このあたりは水郷である、吉野川の支流がゆるやかに流れ、蘆荻が見わたすかぎり風に靡いている、水に沿うて水を眺めながら歩いて行く。
宮島という . . . 本文を読む