お大師様は、紀州高野山開創に当たり、有縁の人々の支援を求るべく「勧進して仏塔を造り奉る知識の書」を今日8月23日書かれています。
「勧進して仏塔を造り奉る知識の書」 の全文です。
「夫れ諸仏の事業は、 大慈を以て先と為し、 菩薩の行願は、 大悲を以て本と為す。 慈は能よく楽を与へ、 悲は能く苦を抜く。 抜苦与楽の基、 人に正路を示す、 是なり。 謂いう所の正路に、 二種有り。 一には定慧門、 二には福徳の門。 定慧は正法を聞き、 禅定を修するを以て旨と為し、 福徳は仏塔を建て、 仏像を造するを以て要と為す。 三世の諸仏、 十方の薩、 皆斯の福智を営みて、 仏果を円満す。 是の故に比年、 四恩を抜済し、 二利を具足せんが為に、 金剛峯寺に於いて、 毘盧遮那法界体性塔二基、 及び胎蔵、 金剛界両部曼荼羅を建て奉る。 然るに今 工夫数多(あまた)にして、 粮食給し難し。 今思はく、 諸の貴賤の四衆と、 斯の功業を同じくせんと。 一塵大嶽を 崇うし、 一滴広海を深うする所以は、 心を同じくし、 力を 勠(あは)すが、 之致す所なり。 伏して乞ふ。 諸の檀越等、 各の一銭、 一粒の物を添へて、 斯の功徳を相済あいすくへ。 然からば則ち営む所の事業、 不日にして成らむ。 生ずる所の功徳万劫にして、 広からん。 四恩は現当の徳に飽き、 五類は幽顕の福を饒にせん。 同じく無明の郷を脱して、 斉しく大日の殿に遊ばん。 敬って勧む
承和元年八月二十三日 」
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