弘仁三年812八月十九日
伝教大師は弘法大師に書を送られました。
文中、「但し遮那宗は天台と融通し、疏宗亦同じ」「亦一乗の旨、真言と異なることなし」と記し、「法華一乗と真言一乗は等しくなんら異なることはない」との密教観が窺えるものとなっている。
「辱くも金札を抂げられ、仏法の旨を告ぐ。歓ばしきかな、先期を忘れず、今に膠漆を存つ。両家方を伝うること、朝夕慮となす。今高計を承り、仰ぎ□婿と極りなし。然るに今、人々の心、教導すること甚だ難く、また官の試むるところ、相応甚だ難し。但し遮那宗と天台とは融通し、疏宗もまた同じ。誠にすべからく彼此志を同じくし、倶に彼の人を覓むべし。あに己を愛し己を憎むの法あらんや。法華・金光明は先帝の御願なり。また一乗の旨、真言と異なるなし。伏して乞うらくは、遮那を覓むるの機、年々相計りて伝通せしめんことを。委曲の状、十一三具に陳上せん。惟うに意を留めて相待て。弟子老僧最澄和南
弘仁三年八月十九日東山の資最澄状して上る 西山遍昭闍梨 侍者謹空」
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