日々の恐怖 12月19日 釣れ始め
数年前、千葉のある堤防に友人達と釣りに行った時の話です。。
夏なので夜釣りをしたかったのだが、初めて行く堤防だったので、様子見をかねて明るいうちから始めて、夜釣りに入る事にした。
日中は何も釣れず、周りの釣り人もただ竿を出して、常連さん達と話してるだけの状態だった。
しばらくして日が暮れはじめると、常連さん達が、
「 じゃ、また明日。」
などと言いながら、次々と帰ってしまい最後は俺らだけになった。
土曜日で堤防貸し切りなんてラッキー過ぎるわーなんて話していたら、日暮れ時のゴールデンタイムに突入。
入れ食い状態でアジやらイワシがかかってくる。
久々のラッシュでテンション上がってたら、チャリに乗った地元のおっさんが話しかけて来た。
「 釣れてる?」
「 昼から粘ってやっと釣れ始めましたよー。」
「 そうかぁ。でも真っ暗になる前に帰りなよ。ここ出るから」
「 え?」
「 向こうの角さ、一段下がってる所があるんだけど、そこに花があるんだよ。」
「 さっきまで常連さん達がいて見えなかった・・・・。」
「 ここ前から事故が多いから、その時も声かけたんだけどね、やっと釣れ始めたから、もう少しやってから帰る、って言われてね。」
「 マジですか、だから常連さん達、皆帰ったんだ・・・。」
「 地元じゃ割と有名だからねぇ、ま、一人じゃないから大丈夫だと思うけど、念のためね。
夜釣りするなら、穴場教えてあげるよ。」
で、穴場を教えてもらいながら平静を装いつつ、全員竿に仕掛けをつけっ放しで慌てて片付けて移動した。
この時のみんなの慌て様は笑い話になるのだが、何故常連さんがいなくなって、俺ら新参だけになった途端釣れ始めたのかと考えると、今でも少しゾーッとする。
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