大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 12月22日 勧誘

2013-12-22 18:30:05 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 12月22日 勧誘



 叔母さんから聞いた話です。
何年か前に、法事で久々に叔母さんの家族や親戚連中と会って皆で酒飲んでたんだけど、どういう流れか忘れちゃったがしつこい勧誘の電話の話題になった。
どんだけ悪質でムカツク勧誘を経験したかって自慢話みたいになった。
 未だ携帯も普及してなくて、着信番号表示のサービスも無い時代だったから、いとこ姉妹の1人が友達か勧誘か分からなくて電話に出るのがイヤになった、とかこぼしてた時にオレが使った撃退法を披露した。
 それは、勧誘電話にある程度話を合わせておいて、相手が乗ってきたらやっぱり止めますってバッサリ断る。
その間10分くらい話に興味が有る振りしててバッサリ。
これは相手もがっくりくる。
 当然勧誘のヤツはエキサイトするから、興奮してぎゃあぎゃあ言い始めたら、

「 文句が有ったら電話じゃなく家まで来い!」

って言ってやる。
で、マジで家まで来やがったら速攻で110番してやると。
 実際に、不動産の店からのしつこい勧誘で新築しませんか、ってのに腹が立ってたときにやったことがある。
ま、そん時には勧誘のヤツは来なかったけど、来たら本当に110番してやろうって思っていた。
結構親戚連中には受けて、みんな爆笑してたんだけど叔母さんが言った。

「 Tちゃん(オレのこと)、本当に来なくて良かったよ・・・。」

 叔母さんが昔住んでたアパートの玄関のドアには、今じゃ殆ど姿を消してしまってるけど、新聞受けが付いていた。
オレが小学校の頃、確かに見た記憶が有るから30年くらい前だ。
 その頃の高級なタイプはドアの内側にボックスが付いていて、ボックスの中に新聞とかが溜まるんだけど、叔母さんの家に付いてるのは単純なタイプで郵便や新聞を外から突っ込むとドアの前にポトンと落ちるヤツ。
 ある日のこと、お昼のワイドショウ見てた叔母さんはかかって来た電話に出たんだけど、これが新聞屋からの勧誘で、しつこいったらなかったらしい。
常套句のセリフ「結構です」とか「間に合ってます」とか言うと、「何で結構なんですか?」とか「間に合ってるかどうか分からないでしょう」と来る。
 叔母さんを始めオレのオフクロの家系は伝統的に勝気で気が強い女が多い。
「電話じゃ何ですから、お宅まで」と言う新聞屋に、「来れる物なら来て見やがれ!」風な勢いでカッとして電話を叩き切ったらしい。
 いつもならそのままTVに戻るんだけど、その時は妙に引っ掛かる気持ちがあったらしく“本当に来たら面倒だな・・・”って思ったらしい。
それで、TVの前に有ったA新聞を、新聞受けに入れておこうと考えた。
新聞屋が来てもライバル新聞を見れば諦めるだろう、って思って。
 新聞を持って玄関に立つと、目の前で突然、

“ ピンポン!”

ってブザーが鳴った。
冗談抜きで飛び上る程ドキっとしたらしい。
 いくら気が強いって言っても女だし、思いがけないタイミングの良さに体が痺れてしまって黙ってドアを見てた。

“ ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン・・・・・。”

ブザーがずっと鳴り続けている。
 それで、しばらくしたらブザーが鳴り止んだ、と思った瞬間、例の新聞受けがパタンと開いて指がニョキっと出て来た。
片手の指が4本、バタバタ閉じたり開いたりしてる。
何かドアの向うの人に気付かせようってしてる様だった、こっち見ろって感じで。
 叔母さんが固まったまま見てるとそのうち4本指がスッと新聞受けから消えた。
ほっとするとすぐさま人差し指が1本だけ差し込まれて来て、叔母さんの方をジッと指差している。
 これを聞いて、親戚一同、ぎょえーってなった。

「 マジかよ~。」
「 信じらねぇ・・・。」
「 新聞屋じゃねえかも・・・。」

そしたら叔母さん、

「 止めれば良かったんだけどさ・・・。」

って言う。
本当に後悔してるって。
 指が引っ込んで、少し間を置いてから、

“ もう帰ったかな・・・。”

叔母さん新聞受けを手前に引いて覗いた。
そしたら、目の前に男の口があった、“ニカッ”て笑った男の口が。













童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------