日々の恐怖 12月20日 夢占い
数年前の出来事です。
当時、俺は夢占いにハマって見た夢をメモに取っていた。
不思議なことに、メモを取るようになってからは無意識にメモにとるためにと努力しているのか、夢の中のことをよく憶えていられるようになった。
妙に夢の中もクリアな世界になっていく。
起きてから、今のは夢か?今が夢の中か?とか、本人が一瞬理解できなくなるレベルだった。
と、ある日の夢の中で俺は祖母の家の玄関にいた。
祖母は数年前に死去、家は隣家の方が購入されてリフォームされているとか。
次の瞬間には一階の六畳ほどはある大きな浴場にいたかと思えば、その次の瞬間には二階のトイレ、と瞬間移動するように場面が変わり、気付くと体の弱かった祖母がいつも寝ていた祖母の部屋にいた。
ベッドの上には正座をする祖母がいた。
久しぶり、と声をかけようとしたけれども一瞬ためらう。
祖母の俺を見る目が、顔が無表情すぎて一瞬怖く感じた。
生きていた頃とはちょっと感じが違う祖母に戸惑っていたら、ベッドの上にいたはずの祖母が俺めがけて飛び掛ってきた。
俺は、
「 うはっ!」
と叫びながらやっと目覚めた
久しぶりに、夢の中とはいえ祖母に出会えたはずなのに印象が最悪の夢。
胸もドキドキいってるし息も荒い、変な汗もかいている。
なにか変だ、と思い祖母の娘である母に、こんな夢を見た、と正直に打ち明けてみた。
「 やっぱり怒ってるんだろうなぁ・・・・。」
と母はがっかりしたような表情を見せた。
まったく俺は知らなかったのだが、一階のでかい風呂場は祖母のお気に入りの場所だったそうで、わざわざそこにあった井戸を潰してまで作った最愛の場所だったらしく、また二階のトイレというのも、体の弱い祖母が階下に下りずに用を足すために作ったもの。
なんでも風呂場もトイレも、隣に住んでる方たちには無断で作ったものらしく、けっこうもめたっぽい。
新しく住む方たちがリフォームをするんだとしたら、たぶん風呂やトイレにも手を加えているはずなので、自分の作ったものが壊されるのがイヤで腹立てて訴えてるんじゃないか、という話だった。
「 もう自分の家じゃないのにねぇ・・・・。」
と母はちょっと寂しそうに付け加えた
なんで俺のところにばあちゃんが訴え出てきたのかは皆目見当がつかんのだが、それ以来、夢をメモにとるのは辞めた。
夢って忘れたほうがいいんだろうなぁ、と初めて思える出来事だった。
俺に飛び掛ってきたばあちゃんの、あの無表情な目が忘れられない。
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