日々の恐怖 9月15日 買いに来た人
ある家で家人が自殺した。
ただ、まだ買って数年でローンも満載のため、家を売ってからしか引っ越せない状態だったので、居住中のまま中古物件として販売した。
うちが専任ではなかったんだけど、新しい・立地が良いこともあって問い合わせが多く、何度も人を案内したけど、なかなか仮審査すら申請がない。
家もリフォームしてきれいにしてるし、自殺後に家人が住んでいる、というのはプラスポイント(家人がいない自殺説明だと、一家心中等を想像する人が多いため)だし、
“ 決まらないのは、おかしいなァ・・・。”
と思っていた。
ただ、案内した時に、二階の和室(自殺があった部屋)に案内すると、日当たりの良い和室のはずなのに、何故か皆口をそろえて、
「 この部屋は暗い。」
「 かび臭い。」
とか言うので、
“ 案外、みんな何か感じ取るもんなのか?”
と、ちょっと不思議な気持ちになっていた。
ある日、何軒か一緒に中古住宅見て回ってるお客さんから突然、
「 あの、一番最初に見に行った家ありますよね、築浅の。
あそこ、お祓いとかしないんですか?」
と聞かれたので、
「 多分、お祓いなんかはしてるんじゃないですかね・・・。」
と、適当に答えたら、
「 二階の和室の入ってすぐのところに、50代くらいの男性がずっとぶら下がってるってことは、お祓いとかしてない証拠じゃないですかねぇ・・?」
と言われてびっくりした。
言われてみると、その人、その和室に案内した時、中に入るのを固辞したのを思い出した。
“ 俺、普通にそこ何度も通ってましたやん!!”
と思ってかなり焦った。
会社に帰って、それを先輩に伝えたら、
「 ああ、そういうのは、買いに来た人にしか見えないらしいから、問題ない。」
と言われた。
買いに来た人にしか見えない、というのは不思議なことに不動産関係では結構よく聞く話なんだそうな。
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