日々の恐怖 9月28日 四国(2)
右手を振って挨拶してくれている姿に、
“ 奥さんも一緒にまわれたら、よかったのにな・・・。”
と思った。
次の瞬間、助手席のドアがガチャッと音を立てて開いた。
開いたといっても半ドアになっただけなんだけど・・・。
でも60キロくらいで走ってたから、人やバイクに当たったら大変だと思ってすぐに路肩に車を停めて、運転席から腕を伸ばして助手席のドアのリムを引っ張った。
「 ふぅ・・・。」
とため息をついて運転席に戻りシートベルトをしめて安全確認、右のドアミラー、左のドアミラーと順番に見たら、助手席側のドアミラーに一瞬だけ髪の毛が写った。
「 は!?」
と内心ビクッとしてバックミラーを見た。
遠くでお遍路さんが、オレが停まってるのに気づいて、また手を振ってくれている。
その後ろで人形の右手も一緒にゆらゆら揺れていた。
本気で怖くなって、フルアクセルで走り出した。
ルームミラーを見るのが怖くて怖くて、どうしようもなかった。
田舎についてじいちゃんにコンビニでこんなお遍路さんに会った、と話したらため息をつきながら話してくれた。
「 昔っから人の形したもんには人の魂みたいなのがつきやすいって聞いたわ。
そりゃ死んだ奥さんの魂なのか、全然知らん人の魂いれて歩きゆうがやろ。」
「 そんなバカな話、マンガやホラー映画じゃないんやから・・・。」
「 アホ、藁人形もそうやし市松人形もそうじゃろうが。
人の形したもんは、安易に持ち歩いたりせんほうがええがじゃ。
そりゃ、その旦那さんは奥さんの事考えてそうしたがやろうけど、周りにいるのが奥さんやとは限らんきの。」
結局、この後そのお遍路さんには会わなかったし、知り合いのお寺にも来てないって言われた。
周辺の店で聞いても、
「 人形を背負った人らぁ、40年ここにおって見た事ない。」
と言われてしまった。
車のドアロックも異常無し、それ以降も身の周りにも異常は無し。
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