日々の恐怖 9月17日 タクシー(2)
大手タクシー会社の運転手をしていた従兄弟の同僚だったKさんの話です。
ある夜遅く、Kさんは駅のタクシー乗り場でお客を待っていた。
ふと後部座席を見ると、座席の真ん中あたりに赤い紙バッグがあることに気付いた。
Kさんが車から降りて紙バッグを手に取り中身を確認すると、バッグの中には古びた男ものの黒い革靴が入っていた。
“ なんだ、こりゃ?
前のお客の忘れ物かな?”
お客が降りる時には気がつかなかった。
“ 事務所に届ないといけないな・・。”
と思っているとお客が来たので、とりあえずはその紙バッグを助手席の足元においてお客を送った。
その後、事務所に戻った。
車を車庫に入れて、バッグを事務所に持って行こうとした。
すると、急にバッグの中がズシリと重くなり、赤い紙バッグの中から女性の泣く声がした。
「 わっ!」
Kさんはバッグを放り出した。
バッグは車庫のコンクリートの上にドサリと落ちると横倒しに倒れ、中で何かがモゾモゾと動いている気配がした。
暗くてよくわからなかったが、中から何かが呻きながら出てこようとしている様な感じがした。
「 うわ~~~~!」
Kさんは悲鳴をあげて事務所の明かりの方へと走り出した。
叫びながら事務所に飛び込み、床ににへたり込んだ。
そこに、電話番をしていた同僚が、
「 どした?!」
と声を掛た。
「 赤い紙バッグから、何かが出ようとしている!」
言っている意味が分からなかった同僚を連れ、おっかなびっくりバッグを見に行った。
赤い紙バッグは、車のそばに落ちていた。
しかし、中身は空だった。
「 他にも妙なことが、ちょこちょこあってさ。」
そういったことがまるで駄目なKさんは、それからしばらくしてタクシー運転手を辞めてしまった。
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