日々の恐怖 9月27日 四国(1)
夏に田舎へ帰る途中で体験したことだ。
車で田舎まで2時間半程度なんだけど、流石にずっと運転はしんどいから途中コンビニで休憩してた。
軽く体操して目薬差してお茶飲んでってしてたら、東の方からお遍路さんが歩いてきた。
まぁ、夏はお遍路さんも増えるから気にもならず、いつもの光景・・・・・。
だったんだけど、よく見ると人の形をした藁みたいなのを背負ってる。
店の入り口で荷物を置いて、そのお遍路さんは飲み物を買いに行ったみたいだった。
あんまりジロジロ見るのも失礼だと思ったんだけど、その人形はなんていうか人形と言うよりも人を藁で覆った様な、そんな不気味さがあった。
“ なんで人形を背負って・・・?”
とすごく気になってジーっと見てた。
すると、コンビニから出てきたお遍路さんがオレの視線の気がついたみたいで、荷物の中に買い貯めした飲み物を入れながら話しかけてきた。
「 なぜ人形を・・、という顔をされてますね?」
「 はい、お遍路さんはよくお見かけますが、人形を背負って周ってらっしゃる方には初めてお会いしました。」
「 はは、実はこれ私の女房のつもりでして・・。」
「 奥さんの・・?
と言うと?」
「 女房は昨年うつ病をこじらせて自殺しまして・・・。
少しも女房の気持ちに気づいてやれなかったことが申し訳なくてね。」
「 それは・・・・、突然の事で寂しくなられて・・・。」
その男性は埼玉の方から来たと話していた。
他愛ない会話、四国のここがいい、とかそんな事を話していたと思う。
話に花が咲いて30分ほど喋っていただろうか、男性が、
「 そろそろ出発します。」
と荷物を背負い人形を抱えた。
オレも田舎に昼までには着きたかったから、挨拶をして別れた。
「 それじゃあ、僕も西の方へ行きますんでまた機会があれば。お身体大事にしてください。」
「 ああ、どうもありがとう、キミも気をつけて。」
コンビニの駐車場から出てミラーでお遍路さんを見る。
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