日々の恐怖 9月25日 やりかけの物件(4)
なんか対策が書いてあるかもと期待してたんだけど、やっぱりほとんど読めないし、かろうじて読めた1行が『・顔がない』だった。誰の?
そのとき、その窓にうっすらと子供の姿が映った。気がした。多分真後ろに立ってる。いつの間に入ったんだよ。相変わらずなんの音も立てないんだな、この子は。
もう逃げられない。意を決して俺は後ろを振り返る。そこには…、なぜか誰もいなかった。
会社に帰った後に気づいたんだけど、そのメモの日付が3年前だった。この物件を俺に振ってきた上司にそのことを言うと、
「 あれおかしいな。もう終わったやつだよ、これ。」
って言って、そのまま向こうへ行こうとしたんで、すぐに腕をつかんで詳細を聞いた。
なんでも、顔がぐしゃぐしゃにつぶれた子供の霊が出るというヘビーな物件で、当時の担当者がそのことを提出資料に書いたもんだから、クライアントが「そんな資料はいらん」と言ってつき返してきた、といういわくつきの物件だそうだ。
清書された書類を見ると、確かに『顔がない』とか『風呂場やばい』とか書いてあった。
まぁこういった幽霊物件は時々あるらしく、出ることがわかった場合は、備考欄にさりげなく、そのことを書くのが通例になってるそうだ。
他の幽霊物件の書類も見せてもらったが、なるほど、きちんと明記してあった。
「 なんで今頃こんなものが出てきたんでしょうかね?」
と上司に聞いたら、
「 んー、まだ取り憑かれてるんじゃないかな、当時の担当者って俺だし。」
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