日々の恐怖 10月16日 ユニットバス(1)
数年前、伊丹空港近くのビジネスホテルに滞在した時の実話です。
ホテルは翌朝のフライトに備える為のもので、とりあえず寝られれば言う程度だったので、インターネットで発掘した格安ホテルにした。
ビジネスホテルの外観は格安の典型とでも言うべきもので、真っ白だったコンクリート壁が、長年風雨にさらされて黒いシミだらけになり、日暮れには幽霊屋敷の様に見えてもおかしくはない。
このホテルには旧館と新館があったが、予約が取れていたのは当然の如く旧館だった。
部屋は4階の端の部屋で、部屋の窓からはホテルの看板が通路に良く見えるように無理に支柱をつけて取り付けられている、ホテルの看板の裏以外何も見えない。
必要最低限のものは揃っているが部屋は非常に狭く、スーツケースを床に置いていると歩く度に 足がどこかにぶつかるほどだった。
当初の雰囲気自体は悪いものではなかったが、1つ気になったことがあった。
それは、ユニットバスのドアの鍵穴にこじ開けられたような跡がある。
この手の鍵は内側からプッシュしてロック、ドアノブを内側から回すと自動的に解錠されるタイプだ。
つまりユニットバスの鍵は内側に誰かいないと施錠されず、外から鍵をこじ開けようとすることは、内側に誰かがいる場合の確率が高いことになる。
とは言っても、鍵を押して外に出てからドアを閉める等、色んな可能性が考えられるわけで、頭から余計な不安は押しやって翌朝の体調を万全にすることに集中した。
就寝したのは恐らく夜中の12:00頃、翌朝は6:00起床なので十分な睡眠時間だろう。
やがて眠りに落ちて行ったが、しばらくして頭の後ろから壁をドンドン叩く音に目がさめた。
音の方に集中すると、なにやらひそひそ話す声もしている。
半ば寝ぼけまなこのことだったが、重要なことに気が付いてしまった。
この部屋は4階の端の部屋で、ベッドの配置から寝ている頭の向こうには部屋などない。
ちょっと気味が悪くなり、無理やり寝てしまおうと気にしないように努力したが、今度はひそひそ話をする声がユニットバスの中からと思えるような距離から聞こえ始めた。
心地良いはずの眠りが何処へやら、血圧は一気に上昇して眠気は吹き飛んでしまった。
それでもこのまま眠りに再び落ちれればと思い、寝ようとしたが今度は煙草の匂いが漂い始めた。
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