日々の恐怖 10月28日 ヘルパー(2)
もう一度、大きな声で、
「 すいませ~~~ん!」
って声かけたけど、返事なし。
どうしようって思った。
鍵は開いてるけど、誰も出てこないし、テレビの音はしないけど、水は出てるみたいだし。
私はヘルパーだし、入っていいってことになってる人間だけど、今日は初めて一人で来たわけだし。
前回同行のときはおばあちゃんが居間から返事してくれて、お出迎えなくても先輩ヘルパーと上がったお宅だったんだけど、なんて言うか出迎えのない他人の家に、許可なく無断で入るのってすごい躊躇した。
よっぽど会社に電話しようと思ったけど、鍵は開いてるし。
意を決して、
「 上がりますね、お邪魔します。」
って入った。
真っ直ぐ居間に向かったけど、おばあちゃんはいない。
どうしようって立ちすくんだ。
近所に回覧板でも置きに行ったのかもしれない。
主のいない家を勝手に歩き回るのも気が引けたけど、台所の水を出しっぱなしにしておくのも何だし、止めた。
“ 困ったな・・・。
このまま居間で、おばあちゃん戻ってくるの待つのもな・・・・。”
と思った。
やけに長い数分、その場所でキョロキョロと立ちすくんでいたけど、おばあちゃんがいないのはわかったし、水も止めたし、なら車の中でおばあちゃんが帰ってくるの待つかなって。
戻ろうと回れ右したとき、居間の向こう側から、
“ ガタッ。”
って物を置くような音が聞こえた。
居間の向こうは寝室。
“ もしかしたら、具合が悪くてベッドで寝てるのかな?”
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