日々の恐怖 10月20日 小さい祠(2)
真っ暗な道を、ライトも無しにどんどん進んでいく女。
ビビリながら必死でついていく俺。
“ 何で俺こんな事してんだろう・・・?”
“ 大人しく家に帰ってりゃ良かった・・・。”
後悔の感情が浮かんでは消え浮かんでは消える。
ようやく女が立ち止まると、物心ついてから遊び場だった俺の庭とも言える裏山なのに、初めて見る場所だった。
“ こんな所があったのか・・・?”
とか、その時は妙に冷静だった。
そこは、周りには木が無くて、森の中にポツンと穴が開いたような場所だった。
目を引くのは月が浮かんだ池。
その前に女は立っている。
どれくらい見てたのか、なんか女が自殺でもするんじゃないかと思ってハラハラしてた。
ずっとその女から視線を逸らさなかったんだが、不思議な事に突然フッと消えてしまった。
ビックリして身を隠してた木から出て、池の周りを半泣きになりながら探した。
波も立ってないから身投げした訳でも無さそうだし、周囲にすぐ隠れられるような所も無い。
なんか段々怖くなって来てさ。
逃げた。
走って逃げた。
泣きながら家に飛んで帰って、神主やってるじーさんに成り行きを話した。
「 すぐその場所に案内しろ。」
って言われてさ。
俺も分からないままなのは怖いし、じーさんも一緒にいれば安心だろうと思って、案内した。
凄く怖かったんだけどな。
それで、さっき来た道を引き返して行くんだけど、どうもおかしい。
ついさっきの事だから、分からないはずは無いんだが、どうしてもその池が見つからない。
結局慣れた裏山で一時間程探し回って、ようやくそれらしい所を見つけたんだが、池なんか無かった。
ただ、小さい祠が一つだけ。
着いた時、じーさんはなんか悟ったみたいで、持ってきた道具で儀式みたいなのをやってた。
終わった後、帰り道で何を聞いても無言で、結局何にも教えてもらえなかった。
その三日後、じーさんはぽっくり逝った。
結局あれが何だったのか、未だに分からない。
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