日々の恐怖 7月5日 隣
今日あった(正確には昨日だけど)ことです。
ことの起こりは今日の午前中。11時半頃、玄関チャイムが鳴った。
セールスだったりするとウザイので、こっそりと覗き窓から覗く。
すると、ごつい感じのおじさん3人。
おじ1「 あ、202号(私の部屋)じゃなくて201ですよ。」
おじ2「 お、間違った!隣か・・・。」
そしておじ2は、すみやかに201号のチャイムを押す。
その様子をじっと眺めてた私は、3人のおじ達がおそろいの紺のジャンパーを着てるのに気がついた。
しかも、おじ3はなんかドラマで見たことがあるような帽子も着用している。
“ ん?このおじさん達は、もしや警察・・・?”
なんか不安になった私は、遅れ馳せながらコソっとドアを開けて、まだ外にいたおじ3に尋ねた。
私「 あのぉ・・・、何かあったんですか?」
おじ3「 あ、失礼しました。私、○○警察の鑑識です。
いや、お隣に泥棒が入ったらしいんですよ。」
私「 ド、ドロボウですか・・・。」
ま、その段階で、
“ ひょ~!隣で良かった、うちじゃなくて良かったぁ・・。(お隣さんゴメン)”
と思ってしまった。
ちなみに隣は40~50才の間で、労働者風のおじさん(ちらっとしか見たことないので、はっきり分からないけど)の一人暮しだと思う。
それから約30分後、またドアチャイムです。
なんとなく予想した通り、刑事さんが警察手帳を差し出して立っていた。
刑事「 ちょっとお聞きしたいんですけど。」
私「 はぁ・・。」
刑事「 昨日の夜の8時頃、叫び声とか助けを求める声とか聞こえませんでしたか?」
刑事さんのこの質問に、ちょっと違和感を覚えた私。
“ え?叫び声?助けを求める声?え?隣に入ったのは泥棒でしょ?強盗じゃないんでしょ?”
ドロボウ=空き巣、と勝手に認識してた私は、その質問にちょっとビビリながら、声は何も聞こえなかったと答えた。
その後の刑事さんの質問が、またなんか私をビビらせる。
刑事「 普段隣から、わめき声とか叫び声とか聞いたことないですか?」
私「 いえ、ないです・・・。」
なんか変。この質問。
“ 昨日ドロボウが入ったらしいのに、普段のわめき声って何?”
なんか違和感溢れる刑事さんの質問に、変な気分。
“ 実はドロボウなんかじゃなくて、もっと恐ろしいことが隣に起こってるんじゃ・・?”
という疑念が湧く。
そして3時間後、一本の電話が掛かってきたのです。
その電話までの経過です。
それからほどなくして、あんなにワラワラいた(10数人いました)警察の方達はすみやかに撤収しました。
それでちょっと安心した。
もし凶悪な事件なら、そんなに早く撤収することもないだろうから。
やっぱ、隣は単にドロボウに入られただけなんだろう、と・・・。
で、安堵と共になんか身近にあったこの出来事に、私は妙に興奮して友達に電話しまくりました。
ひとしきり自慢げに報告し終わってまったりした頃、その電話はかかってきました。
「 もしもし、△△ですけど。
ちょー、あんたとこのマンション、今朝警察来とったやろ?」
それは、仲良くしてもらってる近所のクリーニング屋のお姉さんから。
私は、「そうやねん。」と、今朝あったことのあらましをそのお姉さんに話した。
私の話をフンフンと聞き終えたお姉さんは、「それがなぁ~。」と話してくれたことです。
今回の被害者であるらしい201号室のおじさんは、そのクリーニング屋のお客さんだった。
表札が無かったので私は名前を知らなかったが、“高橋さん(仮名)”というらしい。
にも関わらず、時々“鈴木(仮名)”という名でクリーニングを出すこともあったらしい。謎です。
最近右腕を骨折していたらしく、ギブスをはめていた。
どうしたのかと聞くと、転んだと答えたらしい。
でも、今日、刑事さんに伴われて、何故かそのクリーニング屋にやってきたおじさんは、普段の感じからは想像もつかないくらいイカレテタらしい。
クリーニング屋にやってきた意図は、イマイチ判然としなかったらしいけど、そのクリーニング屋の商品を受け取るための伝票を出して、
「 自分の預けてあるモノは、他の人が取りに来ても絶対わたすな。」
とか、なんかスーパーの伝票を取り出して、
「 ここに電話してくれ。ワシは手が震えてかけられへん。」
とか、とにかく言うこともすることも支離滅裂で、しかもおじさんの右手(ギブスをはめてる方)の薬指と小指が無かった、らしい。
そして“高橋”だか“鈴木”だかなはずのそのおじさんを、そこにいた刑事さんは何故だか“小島(仮名)のアニキ”と呼んでたらしい。
刑事「 小島のアニキ、もうええやろ、迷惑やからやめとけ!」
と・・・・。
お姉さん曰く、まるで、薬中か、もしくは少し精神を病んだ人みたいだったと。
そして、その刑事さんがお姉さんにポロリと言ったことは、
刑事「 本人は“えらい大金盗まれた、犯人はマンションの上か下の奴や!!”とか言うとるけど、どうもドロボウが入ったというのは狂言臭いんやなぁ・・・・。」
その話を聞いて、隣とか言われなくて、心底ホッとした私。
そして、そのおじさんは刑事さんに伴われて去って行った。
それは、別に逮捕され訳ではなさそうで、もしかしたら任意同行なのかも?
お姉「 なんやようわからへんけど、なんかあのおじさん変やったから、あんたくれぐれも気ぃ付けやぁ。
今頃警察で尿検査とかされてるかもしれへん。
なんかあって逮捕されたら話は早いけど、薬物でなく単に変なんやったら、そのまんまお隣さんのままかもしれへんからな。」
私「 ぅ…ん…、分かった…、アリガト…、キヲツケルネ…。」
まぁ結局、真相はまだ闇の中なんですが、てか、永遠に闇の中なのかもしれないけど・・。
どうも隣の住人は、警察に行ったまままだ帰ってきてないようです。
布団干しっぱなしです。
どっちかって言うと、私的にはこのまま帰ってきてくれないほうが、なんかちょっと、そのォ~、良いような気が・・・・。
真相がわからないので、日頃しごく平凡に日々を送ってる私にとっては、かなり刺激の強い出来事でした。
まだ終わってないかもしれないし、何か怖いっす。
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