大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 7月19日 ボケ

2013-07-19 19:05:41 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 7月19日 ボケ




 うちのばあちゃんがボケはじめたころ、言っていることが怖かった。
もっとも、痴呆症の初期ってこういう症状はよくあるのかもしれないけど・・・。
まず、一人で喋る事が多くなった。

「 誰と喋ってるの?」

と聞くと、

「 ○○おじさんが今まで来てたのよ。
あ、あら・・・?
どこに行ったのかしら、今までそこにいたのに・・・。」

お約束だが、○○おじさんは数年前に死んでいる。
 それはまだいい。
夜中に絶叫する。
もう、家中の人間が飛び起きるぐらいの大声で絶叫する。
 駆けつけて訳を聞くと、

「 瞼を縫い付けられた男が、押入れの隙間から顔を出していた。」

と泣いている。
ちょっとやめて欲しい。
 でも一番怖かったのが、私が真夜中(午前3時前後)にふと目が覚めて玄関横のトイレに行こうとしたときだ。
真っ暗な玄関に、ばあちゃんが正座していた。
失神しそうなぐらいびっくりした。

「 何してんの!?ばあちゃん?」

と聞いたら、

「 誰かがね、『開けてくれ、開けてくれ』って言ってるんだよ。
だから鍵開けたんだけどね、待ってても入ってこないんだよ。」

開けるなぁぁぁぁ!!!
 それ、メチャ、怖い。
私の家は有名な某霊園の近所です。
 今のばあちゃんは完全にボケてしまって、ほとんど言葉を発することもないです。
そんで、家族みんなで世話をしてます。
















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日々の恐怖 7月18日 うふふ

2013-07-18 19:00:59 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 7月18日 うふふ





 友人ら三人でカラオケに行った時のことです。
通された部屋は狭く、壁にそってL字にソファが置かれていた。
モニタ側にA、L字の直角部にB、その隣のドア付近に私が座った。
狭い部屋なので、音量を上げると話し声は聞こえにくくなる。
 曲が終わり部屋がシンとなった時、AがBに尋ねた。

「 さっき曲の途中にBちゃん笑った?」

Bが笑ってないと首を振ると、Aがおかしいなと言った。

「 若い女の声で、『うふふ』って耳元で聞こえた。」

Bの声は特徴的で、聞けばすぐに分かるし、うふふとは笑わない。
 その直後だった。
店員が部屋に入って来るやいなや、

「 エアコンの調子が悪いので、部屋を替わって欲しい。」

と私達に告げた。
 その店は以前からよく利用していたが、機種やマイクの調子が悪いとこっちが言っても渋々。
いつもならそうだ。
 こっちがフロントに電話してもいないのに、エアコンの調子が悪いからと、わざわざ部屋に来るのはおかしい。
それに、エアコンの調子は悪くなかった。
 AとBもそのことを感じたのか、腑に落ちない顔をしている。
店員の来たタイミングがAが女の笑い声を聞いた直後だったため、余計に気味が悪い。
 その後通されたのは、最初の部屋より倍広く、機種も最新型の部屋だった。
しらけている2人に私はふと漏らした。

「 監視カメラになんか映ってたのかなぁ・・・。」

その場が凍り付いた。
言った後でしまったと思ったが遅かった。
 その後、盛り上がることもなくカラオケ屋を後にしたのだが、知人に聞いたところ、その店は白い服を着た女の霊が出るので有名らしい。
後からAに聞くと、笑い声が聞こえたのはBからではなくモニタ側からだった。
















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日々の恐怖 7月17日 地震

2013-07-17 18:34:59 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 7月17日 地震





 大震災の時の話です。
被害の比較的小さい地域だったのですが、当時住んでいたのは築10年程のマンション8階で、結構揺れました。
ピアノは固定台から外れ30cm程動き、食器棚は倒れ中身はほぼ全壊です。
台に置いていた電子レンジや炊飯器は、コンセントが引っこ抜けて部屋の端から端まで吹っ飛ぶといった状況でした。
 家族全員地震に飛び起き、もしもの時の避難にとりあえず着替えだけは済ませようとしていた時、突然玄関のチャイムが鳴りました。
インターホンに出てみれば友人です。
 当時中学生だった私は、友人と早朝マラソンを毎日していたのですが、彼女は今日もその誘いに来たというのです。
とりあえず家に入れ、

「 え、何で来たの?
マンション揺れてなかった?」

と聞いた所、きょとんとして、

「 へ、何それ?
あ、何かこの家散らかってるね~。
どうしたの?」

と、地震を知らない様子です。
しかも、エレベータで上がってきたというのです。
 彼女の家からうちまでは徒歩で10分程度です。
寄り道はしなかったということなので、逆算すると丁度揺れてる真っ只中に家を出て、余震もある中歩いてきた事になるのです。

「 ブロックとか瓦とか落ちてこなかった?」

と言っても、

「 ううん、全然・・・。」

という返事です。
さっぱり訳がわかりません。
ですが、とりあえず今日は止めようと彼女を促し、階段で下まで降りました。
 一階ロビーで見ると、案の定エレベータは止まっていました。
マンションの壁には幾筋も亀裂が入っています。
近所の一軒屋の瓦は3分の1程道に落ちて割れているし、道路もひび割れ隆起するなど、周囲もなかなかひどい状況です。
 彼女はそれを見て心底びっくりしたらしく、

「 ちょっと帰るわ。」

と走って帰りました。
 後日聞くと、彼女の家(年代物)も被害が大きくて驚いたとのことでした。
何故彼女が地震に気付かず、余震もある中エレベータで8階まで来られたのでしょうか?
時間的には、エレベータに乗っているとき地震があったはずです。
ホント、よく分からないです。















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日々の恐怖 7月16日 隠れんぼ

2013-07-16 17:47:30 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 7月16日 隠れんぼ





 Aさんと弟の姉弟が田舎の実家で経験した話です。
Aさんは子供の頃の夏休み、毎年田舎に帰っていました。
その田舎の家は農家で、明り取りの窓も小さく薄暗くだだっ広い家でした。
Aさんと弟は田舎に帰ると、毎日家で隠れんぼしたり虫取りしたりして、飽きることなく過ごしていました。
 ある日、いつものように二人がただっ広い家の中で隠れんぼをしていた時のこと、Aさんは鬼で、隠れた弟を探していました。
しかし、探しても探しても弟は見つからず、もう15分は経過していました。
いつもなら弟は怖がりなのですぐに見つかるのですが、今回はめぼしい場所を探してもどこにもいないのです。
 それで、Aさんは駄目もとで押し入れを探すことにしました。
すると、暗い所が大嫌いなはずの弟が押し入れの奥にうずくまっていました。
ようやく見つけたAさんはホッとして、

「 見つけた、早よ出てきい!」

と声を掛けました。
ところが弟は押し入れの奥から動かず、出てこようとしないのです。
 Aさんは、

“ 返事もせずに、まだ隠れているつもりなのか・・・。”

と思いました。
 それでAさんは苛つき、早く鬼を交代したい一心で押し入れの奥に手を伸ばし、見えていた弟の手を引っ張りました。
ところが弟はそれでもその場から動かず、逆にAさんの腕をうずくまったまま引っ張りはじめました。
 Aさんがいい加減にしろと叱りかけた瞬間、

「 お姉ちゃん、どうしたん・・?」

背後から弟の声が聞こえました。
振り向くと、今にも泣き出しそうな弟が立っていました。

“ えっ・・・?”

とAさんが思った瞬間、押し入れの中の誰かはパッと手を離しました。
 驚いたAさんは押入れの奥を覗き込んだのですが、もう誰もいなかったのです。
弟はAさんがあまりにも遅いので、心配になって隠れていた奥の部屋から探しに来たと言う話でした。
 二人は、

“ 何か変だなァ~。”

とは思ったのですが、それにも懲りず、しばらく隠れんぼはやめられなかったと言うことです。













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日々の恐怖 7月15日 産科

2013-07-15 20:07:12 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 7月15日 産科





 十数年前、総合病院に勤務してた時の話です。
俺がいたのは内科病棟。
当時はまだ野郎の看護師が、整形や透析以外で勤務してたのは珍しかった。
 その病院、西と東で一つの階に違う科があった。
俺の勤めた内科は東、西病棟は産婦人科だった。
ナースルームは隣接してたが、西はいつも陣痛の呻きと赤ちゃんの泣き声、それに家族さん達の喜びの声。
それに比べて、こっちの内科はダークなオーラを醸し出してる人たちでいっぱい。
正に天国と地獄。
一週間に平気で3人はステッてたし。
エンゼルセット(死後処理用詰め合わせセット)大忙し。
 ある日の準夜帯、いきなり西の産婦人科から妊婦さんが一人、ストレッチャーでウチの内科に運びこまれた。
西のナースたちの顔色が真っ青。
イヤな予感。
 運ばれてきた妊婦さんには見覚えがあった。

「 結婚してから8年もかかったんです~。」

と、隣のナースセンターでコロコロ幸せそうに笑ってたのを見たことがある。
確か出産間近だったはず。

「 胎盤が早期剥離した、母胎も胎児もヤバい!!」

産婦人科のドクターの血相が変わってた。
ストレッチャーの下半身、比喩じゃなく真っ赤っか。
こっちまで青ざめた。
ちなみに男は女より血に弱い。
 要するに、まったくお産の予定が無い場合、産婦人科は夜勤帯はナースの手が無い。
緊急呼び出ししてる余裕も無いため、その時たまたまヒマだった内科に連れてきたらしい。
まあ、産婦人科よりは多少緊急時のセットはあるが、外科のほうがいいのになあ、とか思いつつ、処置の手伝いを始めた。
 後から思えば、違う階にある外科病棟まで連れて行くほどの余裕も無かったんだと思う。
廊下に細い血の河ができるほどの出血だった。
今でも思い出すと気分が悪くなる。
その時は頭は完全救急モードになってたけど。
 で、空いてる部屋に患者さんと機材を慌てて運び込み、処置が始まった。
とは言え、夜勤組んでた相棒はともかく、俺は産婦人科はシロウト。
血液ルームから輸血パック運んだり(確か全部で六千CCぐらい)、処置や投薬の内容をメモるので精一杯。

「 イノバン側注!」
「 血圧60/30!胎心音微弱!」

とかなんとかドクターとナースが怒鳴りあってるのを、必死で手近な紙や手の甲にボールペンでメモッてた。
後で看護記録にまとめなきゃいけないから。
左手の甲がペンのインクで真っ黒になったのを覚えてる。
 結論を言うと、母胎も胎児も助けられなかった。
元々その妊婦さんは血小板の機能が弱く、それまでも何回か流産を繰り返してたらしい。

「 今回は順調だったのに・・・。」

普段は明るい豪快なドクターが肩を落としていた。
西病棟のナースも、半泣きになりながら家族に電話をしていた。
 俺はと言えば、普段は入らない産婦人科ナースルームで看護記録を書かされていた。
正直凹んではいたけど、まあ他病棟の患者だし、自分なりにできる事はしたつもりだったし。
それよりも、自分の左手にメモッた事項を記録にするのに一苦労だった。
 看護記録をようやく書き終えたのはもう午前二時過ぎ。
正直、さっさと帰って休みたくなっていた。
暗い表情の西病棟ナースに記録を見せて、東病棟に戻った。
もうとっくに深夜勤のナースも出勤していた。

「 スゲェ大変でしたよ~。」

と深夜のナースに愚痴りながら、手を洗い始めた。
左手の『モニターフラット』だの『死亡確認』だの、ロクでも無い字を早く消したかった。
 皮膚にボールペンで字を書いた場合、逆性石鹸とかよりも、アルコールのほうが簡単に落ちる。
ウ○ルパスをスプレーすると、案の定簡単にインクは落ちた。
インクだけは。
 左手が妙にヒリついた。
アルコールが沁みた痛み。

「 ・・・・?」

と思って左手を見ると、赤いインクが落ち切れてなくて字が残ってる。
 いや、赤いインクじゃない。
当時看護記録は、夜勤帯は赤ボールペンで書いたけど、病室には持って行ってない。
第一、字の大きさが違う。
記録する事が沢山あるのに、俺はこんな大きな字で手に書いたりしない。
 それは、ボールペンのインクじゃなかった。
引っかきキズが赤く手の甲に浮かんでいた。

『 う ん で や る 』

絶対こんなコト書いてない。
他の字が偶然そんな風に見えてるワケでもない。
 当時若くてバカだった(今もだが)俺は怖いというより興奮して、深夜勤に来たナース(超ベテラン)に手を見せた。

「 これ、すごいッスよ、あの人のメッセージですよ!」

寝不足でテンパッてた俺は、自分でもよくわかんないテンションで妙に感動してた。
いや、感動する場面じゃないんだけど。

「 すごいッスよねえ、よっぽど赤ちゃん欲しかったんですねぇ、俺にメッセージ残したんですねっ!」

ベテランナース、しばらく俺を眺めてたが、ボソッと呟いた。

「 それ、違うよ。」
「 はい・・・!?」

急に言われて、ボケッと先輩を見た。
 先輩、妙に無表情に俺の左手を指さした。

「 そこ・・・、『う』の次・・・、ちゃんとよく見てみなよ。」
「 はあ・・・?」

改めてシゲシゲと眺めた。確かに『う』と『ん』の間に、読みにくかったけど文字が一字浮かんできた。

『 う らん で や る 』

次の年の3月、そこの病院は辞めた。
 俺は今もナースマンを続けているが、常に分厚いメモ帳を常備している。
手にメモることは、あれから一度も無い。


















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日々の恐怖 7月14日 位牌

2013-07-14 18:14:38 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 7月14日 位牌




 一人暮らしのおばあさんが、マンションの一室で孤独死した。
死因は、ノイローゼが昂じて、弱った心臓が耐え切れなくなったことによる心臓発作である。
彼女を知る人は、常になにかにひどく怯えた様子だったという。

 後に真相が明らかになった。
証言したのは、ごくたまに泊まりに来ていた息子夫婦であった。
 信心深いおばあさんは、亡くなった夫の仏壇を部屋に置き、毎朝欠かさず供物、水を捧げていた。
たまたま小用にたったその日の早朝、息子はおばあさんの不審な行動を目にした。
 おばあさんは仏壇の供物を代えようとしていたのだが、扉を開けるのをためらい、何度も逡巡しているようだった。
そして意を決して中を覗き込み、

「 ああ、やっぱり・・・。」

と言って悄然とし、その気の落とし方は尋常ではなかった。

 息子は気になって眠れず、ついにその晩問いただした。
おばあさんは目を泳がせ知らないとシラをきっていたが、息子の真剣さにほだされついに語りだした。
 話によると、ここ最近仏壇を開けると、位牌がそっぽ向いているという。
最初は気付かなかったが、位牌が日に日に斜めになっていくので、恐ろしくて眠れないというのだ。
しかも、朝になるたびにきちんと前を向けた位牌が、翌朝になるとまた斜めになっている。

「 おじいさんに、罰をあてられるようなことしたんかな。
でも、どんなに拝んで供物を代えてもおさまらん。
今に完全に裏むいたら、あたしゃ死ぬんじゃろう。」

そう言って泣くおばあさんに、息子はそんな馬鹿なと思ったが、翌朝確かめると、やはり位牌が斜めになっていた。

「 おかあさん、こりゃ本当の祟りかもしれんけん、祓ってもらわにゃいかんぞね。」

息子はそう言ってお祓いさせようとしたが、

「 おじいさんがお迎えにくるんじゃしょうがないけん。
祓ったらかわいそうじゃ。」

と言ってきかない。
とうとう諦めて帰ったら、結局とり殺されてしまった。

「 きっと位牌が完全に裏向いてもうたんやな。」

と言って息子は悔やんでいたという。


 それを聞いたおじいさんの古い友達が、そりゃおかしい、信じられんと言い出した。
ものすごく仲の良い夫婦で、妻をとり殺すなんてことするはずがない、と言ってきかない。
どうしても一度確かめさせてくれと言って、おばあさんの死んだ部屋に一人で泊り込んでしまった。
 とは言ったものの、さすがに気味悪く寝付かれなかったが、うとうとと眠り込んでしまい気がつくと朝だった。
はっと仏壇を開けると、位牌は見事に裏返しになっていた。
 背筋がぞっとしたが、

“ 無二の親友だった俺すら殺そうとするのか、どうせ老い先短い命、こうなったら何がなんでも正体つきとめる。”

と決心し、ようし今夜は一睡もするものかと気をはって起きていた。
 真夜中3時ごろ、カタカタと仏壇の中から音がする。
ぎょっとして、しかし勇気を振り絞って扉を開けてみた。

“ カタカタ・・・。
カタカタ・・・。”

位牌がじりじりと動いているではないか。
 恐ろしさに心臓が止まりそうになったが、気を落ち着けてじっと動く位牌を見ていた男は妙なことに気付いた。
仏壇全体が微振動しているようなのだ。

「 こりゃいったい・・?」

仏壇は台の上に載せて、ぴったりと壁にくっつけて置かれている。

「 もしや・・。」

男は仏壇を壁から離した。
その途端、位牌はぴたりと動かなくなった。

「 この壁の向こうになんかあるぞ。」

台と仏壇を除け壁に耳を当てると、ごぉーという音がして壁が震えている。
水を上げている音だった。
 このマンションでは深夜、屋上まで水を汲み上げていた。
配管がちょうど仏壇の後ろの壁だったために、振動によって位牌が動いていたのだ。
不幸なことに、位牌の作りが粗く安定していなかったため、片側に回転していたのだった。
とにかく幽霊の仕業ではないとわかったものの、やりきれない思いであった。
 件の仏壇は息子夫妻の家にある。
今のところ位牌が回転することはないそうだ。
















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日々の恐怖 7月13日 牡丹

2013-07-13 18:03:29 | B,日々の恐怖




      日々の恐怖 7月13日 牡丹




 私の家の裏側にある小さな空き地(公共地)では、近隣の住民が勝手に隅の方を耕して土を盛って花壇にしている。
 そんな花壇の中の一つ、うちの庭のすぐ裏に、十年以上前に越した以前の隣の住人が残していった花壇に大株の牡丹がある。
毎年見事に花をつけるそれは、自分がバラを育て始めた数年前から私の疑問の種であった。
 2m×60㎝位の面積で盛り上げられた土に、キングローズと桃色の牡丹。
以前は白い牡丹もあったそうだが、それは何かの工事があった際に枯れてしまったらしい。
うちが越してきたのは18年程前だが、母いわく、その頃はまだ小さかったわねぇと。
 突然旦那が家出された隣の奥さんが気を紛らわそうと、それまで植えていた草花を一掃して、植えつけたばかりだったという。
越した頃、私は仕事を始めたばかりで忙しく、部屋の窓から裏を覗くことすらせず、私には紅白並んだ牡丹はおろか隣の住人の記憶さえない。
 誰もそのことに触れないが、手入れする人がいなくなってからは、近隣の誰かが剪定しているのだろう。
しかし、夏場あまり雨の降らない時期には、私も家の水遣りのついでに垣根の向こうにも散水してやることはあるが、それ以外特に水遣りの形跡を見ることはない。
 とすれば肥料など論外だ。
肥料喰いといわれる牡丹やバラを十年以上咲かせ続ける事が出来るなんて、どんな土を入れたのだろう。
これほど広いスペースに2株だけだから大丈夫なのかな。
 今年も牡丹は30ほどの大輪の花を株いっぱいにつけ、 桜の散った今、付近を散歩する人々の驚嘆と賞賛の声を一身に集めている。
間もなく隣のキングローズが、今度はその艶やかな濃緑の葉の間を、あでやかなローズ色のぽんぽんのような小さな花でびっしり埋めるのだろう。
 周りの住民は、ただ花を遠巻きに愛でるだけでそれ以上は触れない。
近くに新しい住民が越して最初の春、牡丹の説明をするたびに漂うわずかな緊張感がいったい何なのか、前の住人を知らない私が知る由などない。

















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日々の恐怖 7月12日 急発進

2013-07-12 18:13:30 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 7月12日 急発進




 私の実家はものすんごい田舎にあります。
ほんと何にもないから、日用品を買うために山越えしなきゃならないほどです。
 その日は暗くなってから買い物に出かけました。
母が車を運転し、私と妹が乗りこみました。
スーパー二軒とドラッグストアと文房具屋を回る、普段通りのルートの予定です。
文房具屋には1枚30円くらいで買える綺麗な折り紙が置いてあったので、私はそれが目当てで買い物についていったのです。
 スーパー・ドラッグストアで食品・日用品を買いこんで、次はやっと目当ての文房具屋です。
近くの駐車場に着くと私だけ車から降りて、文房具屋に向かいました。
張り紙がしてあって臨時休業でした。
 仕方がないので車でもう一軒の文房具屋に寄ってくれるよう頼むと、母は無言で車をだしました。
道中、心なしかスピードが出ている気がして、ああ何軒も寄らせて母は怒っているのかなあと思って私はショボン。
ずっと黙ってました。
 そして目的の店につくと私だけ降り、折り紙を買ってすぐ戻りました。
車に乗り込みドアを閉めた瞬間、なぜか母は車を急に発進させました。
大通りを猛スピードでまっすぐ走って十字路にぶつかると、反対車線に車はパラパラ走っているところに無理やり入りこみUターンをしました。
それで、やっと家に着いた時はげんなりでした。
 母は青い顔をして「お腹が痛くなっちゃったのよ、ごめんね」と言い、すぐ寝てしまいました。
その後、私はこのことを忘れてしまいましたが、二年後に妹の口から真相を聞くこととなりました。

 その日、妹はドライブのつもりで買い物について来ていたので、買い物中もずっと車の中にいて、車内灯でマンガを読んでいました。
そんなことを二回繰り返すと、妙なことに気がついたそうです。
 さっきからずっと同じような車が近くにとまっている。
よく見ていたら、40くらいの男が降りてきて、母と私の後に続いてドラッグストアに入っていった。
二人が帰ってくるときにも、ちょうど後ろからついてくるように出てきた。
手には何も持っていない。
 文房具屋で私だけが降りた時、母に妹はそのことを告げたそうです。
しかし、車だから大丈夫と母は取り合わず、私にはそのことは言うなと口止めしたそうです。
そして二軒目の文房具屋、ここでも私だけが降りました。
またその男は続いて車を降り、同じように文房具屋に向かったそうです。

「 あの男だよ!姉ちゃんが危ないよ!」

妹がそう言うと、

「 帰ってきたらすぐ車をだすから、準備していなさい。」

母はエンジンをかけながら、真っ青な顔でそう言ったそうです。
 私が帰ってくると、案の定後ろにはその男がいます。
車のライトに照らされた時、そいつは手にカッターを持っていたそうです。
二人は絶句。
 私が乗り込んだ瞬間すぐ車をだしました。
妹はその男を見ていたらしいですが、そいつも車に乗り込んで追ってきたらしいです。
しかし急なUターンについて来れず、振り切りました。

 今、私は大学生です。
母と妹に感謝しています。
 ちなみに母は運動神経ゼロです。
いつものろのろ運転の母がよくあんなことができたなあと、妹は苦笑いしながら言っていました。
ほんと母は強しです。

















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日々の恐怖 7月11日 家

2013-07-11 19:23:25 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 7月11日 家





 Tさんの体験談です。
私が短大生だったときのことです。
当時よくYとNという友達とつるんでいたのですが、1年の後期頃から、Nのほうがたびたび学校を休むようになりました。
 Nは私たちに、“体調が優れないから”と言っていたのですが、あまりにも頻繁に学校を休み、旅行や飲み会などもドタキャンされることが多くなってきたので、“体調が優れないっていうけど、本当にそれが理由なの?”と問いただしました。
 出席してきたときにはいたって健康そうに見え、倒れたりすることもなく、とても体が弱いようには見えなかったからです。
そして、しぶしぶNはうつ病であり分裂ぎみでもあることを告白しました。
 いつも明るく気さくな性格で結構美人なNだったので、Yも私もとても驚きました。
一度告白してしまってからは気が楽になったのか、睡眠薬の飲み過ぎ、二階から飛び降りた等で病院に入院してしまったときは、見舞いにきてほしいと言われたりするようになりました。
 Nは、おそらく自分の病気の原因は両親にある、と言っていました。
Nの母親はけっこう重い分裂症で遺伝したのではということです。
それが原因なのか、Nの父親はNが学校を休み始めたころ愛人と行方不明になってしまい、精神的にNは耐えられなかったらしいです。

 2年のある日、一週間くらい学校を休んでいたNから、家に来てほしい、と連絡がありました。
聞けば、母親が自殺未遂をおこし何日も入院している、気が滅入っているので遊びにこないか、と言う事でした。
事情が事情なので、Yと私はちょっと引きましたが断るわけにもいかず、次の日Nの家に行くことになりました。
 初めてだったので駅からの行き方を聞いて、近所のコンビニで待ち合わせ三人でNの家に向かいました。
Nの家は一軒家で、建売ではない昔からの家が並んでいる一角にありました。
 が、玄関の向きが並んでいるほかの家と違って、少し違和感があったように思いました。
具体的に説明はできないけれど、なんだか変わっていて、少し離れたところからも、おそらくNの家はあそこに違いないと私には変な確信がありました。
ドアを開けて入った瞬間の感想は、“うわ~、空気が重くてなんか気持ち悪い!!”でした。
 家の中全体が薄暗くじめじめした感じがして、できれば早めに退散したいな~と本気で思いました。
おそらく掃除もあまりしていないだろうし、家庭の事情も聞いていたので、そんな風に思ってしまったのだろうとそのときは思いました。
 ところが、居間に通されてお酒を飲みながら話をしているうちに、なんだかとても居心地が良くなってしまったのです。
Yとどちらともなく、“もう遅いし泊まっていくことにしようか”ということになりました。

 次の日になりましたが、私たちはグズグズとNの家にいました。
昼ご飯を食べ、夕方になってもまだ帰る気にならず、私は思わず、“もう一泊しちゃおうか?”とYに切り出しましたが、Yは“私も泊まりたいけど、このあとどうしても休めないバイトがあるから帰らないといけない”とのことでした。
二人ともすごく名残惜しかったのですが、また近々来ることを約束してNの家を後にしました。
 その帰り道、

私「 ねえ、Nの家なんか雰囲気悪かったよね?」
Y「 うん、暗かったし、なんか変な感じがした。」
私「 あのさ、とくに階段のところ気持ち悪くなかった?」
Y「 実は私も上がった瞬間思った。」
私「 いっせいので、何思ったか言ってみない?」
Y・私「 せ~の、女がいた・・・。」

その瞬間、本当にぞ~っとしました。
 Nの家にいる間中、頭にフィルターがかかっていたようでした。
あれほど気持ちが悪く帰りたかったのに、家に入ってしまえば今度はいつまでもそこにいたいような気分になっていたことも怖くなりました。
 Yも私も何かを見てしまったわけではありません。
ただそんな感じがしたというだけですが、NやNの家族が大変なことになっているのも、あの時感じた何かが原因のような気がしてなりません。
その後、Nは学校にまったくこなくなり、今では音信不通になってしまいました。
















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日々の恐怖 7月10日 陶器

2013-07-10 17:58:34 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 7月10日 陶器




 陶芸家のKさんから聞いた話です。
新たな作風を開拓しようと試みたKさんは、中国の桃の木の灰を入手し釉薬を作り作品を焼き上げました。
 出来上がった作品は、ほのかな桃色だったそうです。
それは、単純に桃の木の灰を使用したから桃色が出たのかなぁ、とか思ったのですが、事実はそんなロマンティックなものではありませんでした。
 Kさん曰く、陶器が赤色を発色するには、酸化金属を原料に使用しないと不可能で、木の灰で作った釉薬が桃色を発色することは有り得ないとのことです。
では、何故桃の木の釉薬が桃色になったのか?
 原因は農薬でした。
それも、陶器の材料に使用し、1200度の高温で焼成してなお影響が出たことから推測すると、すさまじい量の酸化金属系の農薬が桃に散布されてたことになります。
さすがに、この話を聞いて以来、中国産の農作物を買うのを止めることにしました。
 余談ですが、戦前まで中国の陶芸は世界トップだったのですが、戦後の文化大革命の際、陶芸家の多くが粛清され、名品の数々が破壊されたために数世紀分後退して、現在では日韓に抜かれてしまったらしいです。















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日々の恐怖 7月9日 居酒屋

2013-07-09 18:40:41 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 7月9日 居酒屋





 自分的に衝撃的な体験をした話をします。
自分が19の時の話ですけど、大阪の有名な繁華街の居酒屋でバイトしてた時の話です。
時給は1200円で深夜は1400円と貧乏だった自分には魅力的な条件で、募集して即面接、採用という流れでした。
自分的には“おぉ、即採用ラッキー”ぐらいの認識でしかなかったです。

 はじめの2~3週間は何事もなく、むしろ優しいバイト仲間や店長、条件のいい時給に“なんだよ超当たりバイトじゃんか!”、と思いながら働いていました。
それで、3週間位で自分もそこそこ動けるようになりました。
 いつもと一緒の時間にバイト行くと、シフトに入ってるバイトさん達がその日4人中自分以外全員休んでました。
まあ平日だったし、店長のフルサポートのおかげで店は回りました。
23時位に一息つけて、飯食ってたら店長が横で飯食い始めました。

「 すまんな~たまにこんなことあるんだわ~。
○○(自分の名前ですw)はへいきか?」

なんて言うんで、

「 楽勝っす。」

なんて返したら店長が、

「 ん、まあそういう事じゃないんだが・・・。
まあ、もうちょっとがんばろうや。」

なんて言って仕事に戻って行きました。
自分はその時「?」でした。
 何がそうゆう事じゃないのか、自分が何を思って返事をしたか知ってて「そうゆう事じゃない」と言ったのか、へんなモヤモヤがあったんですが、店は忙しくなってくる時間だったので飯つめこんで仕事に戻りました。
なんとかその日は店長と二人で店を回し切りました。
 店長が、

「 マジ助かったよ~、後は掃除やって帰るだけだな。もうちょいがんばろうや!」

なんて言ってくれたのを鮮明に覚えています。
 それで、便所掃除やってたときでした。
便所掃除はまず大の方からクレンザーで泡たてて、んで小のの方も泡立てて・・・。
どこの店も一緒だと思うんですが、大の扉って勝手に“ぎ~~~”って閉まります。
それで、自分はバケツに水入れて大の扉を固定してたんです。
そしたら、小の便器を頑張ってこすってたら、後ろでいきなり“バァーーーーーン”って、大の扉がバケツ吹っ飛ばして閉まるんです。

「 まじかよ・・・。」

とか思って、でもまあその時は深く考えずにもう一度バケツに水入れてまた大の扉固定して小の便器洗い始めようとふりかえろうとしたら、

「 バァーーーーーン。」
「 ・・・・・・・。」

てかしまらないよ、普通。
とか考えてたら、店長が来て、

「 お前、もっと静かに掃除しろよ。」

なんて能天気なこといってるんで、事情を説明しました。

「 気のせいだって、確実に・・・。」

 そう店長は言ってたけど、その日の店長の顔はずっと目が笑ってなかったです。
でも、自分は怖い話は好きだったけど、幽霊とかは信じてなかったんで、次の日もまた普通にバイト行ってました。
その後、何回か便所掃除したけど、もうあんな事は起こらず、忘れかけていました。


 しかし、やっぱりその店はおかしいんです。
普段、自分は夕方からしか入らないんだけど、その日は“本職の方々”が光栄にも(笑)自分たちの店で宴会をやるって話で、初めて仕込みを手伝うために昼からバイト入りました。
 野菜切ったり、肉串に刺したり、刺身の用意したり・・・・。
なんてことはない料理の下ごしらえをして、3時過ぎには仕込みも終わりました。
それで、終わって客席のカウンターなんかに座りながら、

「 本職マジカンベン。」やら「 青りんごサワー大量に用意しとけよ。」

と話してたんです。
 そのとき気が付きました。
有線から何か音が聞こえるんです。
はじめは気にしていませんでしたが、小さな声で人の声のようなものが聞こえます。
店長に、

「 有線つけっぱですよっ。」
「 有線?つけてねぇし?」
「 つけてないって、何かきこえません?」

俺が必死に訴えるんで、皆しゃべるのをやめました
そして静かになって聞こえた言葉が、

「 熱い・・・、苦しい・・・。」

正直涙目でした。
 普段なら陽気に笑って何かフォローしてくれてた店長も、今回はマジ顔で、

「 みんな休憩、外でな・・・。」

 自分は何も言えず、飛び出すように私服に着替えて店を出ようとしました。
店長が、走って店から出ようとする自分に、

「 夕方は5時からでいいぞ。」

って叫び気味に言った次の瞬間、

「 ビーーーーーーーー。」

 居酒屋ってボタンあるじゃないですか、客が店員呼ぶ。
あれが鳴ってるんですよ、座敷で。
ビクッ!と体が止まって、皆を眺めると、恐怖って感じより“やれやれ・・・・”みたいな感じがしました。
 店長が、

「 おれとめてくるわ。」

って言ってスイッチ消しに行きました。
それで行った店長が、

「 誰もいねぇ。」

って言う声が聞こえると同時位に、また、

「 ビーーーーーーーー。」

さすがにここはおかしいだろ、と思って、帰って来た店長に、

「 どういうことなんすか?」

って真顔で3回くらい問いただしたら、

「 今日の宴会終わったら教えるわ。
頼むから、宴会だけでも手伝ってくれ。」

そう言われて余計に不気味でした
 正直納得行ってなかったけど、生活かかってたんで逃げるわけにもいかず、夕方には店に戻りました。
宴会は案の定本職のわがまま連発で、昼の出来事も忘れていました。
 宴会は無事終わって後は宴会の残っている客を追い出すだけって時に、不意に焦げくさい臭いがしたので同じバイトの先輩に、

「 なんか焦げくさくないっすか?」

ってきいたら

「 本職畳焦がしてるかもな!みてくるよ!」

と言って座敷を見に行きました。
 そんなときに新規の客が入ってレジ付近の女先輩が、

「 新規三名様入りました!!」

と言うんで慌てて、

「 いらっしゃいませ~!!」

って大声で言いました。
でも、どうみても2人です。
 女先輩に、

「 2人・・・・、ですよね?」

って言うと、

「 ううん、3人。」

って言うし。
実際見てくると、やっぱり2人でした。

「 2人でしたよっ。」

て女先輩に言うと、

「 え~、白い服着た男女と、それにぴったり付いてくる感じで、黒い服きた女で3人だったよ~。」

“ 白い服のカップルはいたけど、黒い女なんていねぇよ。”

そしたら座敷行ってた先輩が、

「 焦げてなかったぜ。」

なんて言って帰ってきたら、女先輩がボソッと、

「 あ・・・・・、あの黒い女・・・・焦げてたのか・・・・。」

それ聞いてぞわ~~~ってしました。
なんで、そんな真顔で意味のわからないこと言えるんだって。

 そんで、その日の終りにやっと店長がいろいろ教えてくれました
まず、うちの店の近くの大型電気量販店、そこで昔火事があって結構な数の人が死んだ話。
 今は(今もなのかな?)ビックピーカン?だっけかな?そんな名前の量販店です。
もう一つは、そこで亡くなった方々の供養の石碑みたいなのが、うちの店のちょうど真裏の寺にあるって。

“ こんな繁華街に寺あるんかよ。”

って思って、その日見に行ったらほんとにありました。
その寺はちょうど店のトイレのすぐ裏でした。
 店長が、

「 おまえ、辞めるなよ・・・。」

って、その日の終りにしきりに言っていました。
 まあ、店のみんな好きだったし店長もいい人だったんで、そこのバイトはその後しばらく続けました。
落ちも何も無い話ですが、ほんとに体験した今でも忘れられない話です。

















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日々の恐怖 7月8日 誤解

2013-07-08 17:58:29 | B,日々の恐怖





   日々の恐怖 7月8日 誤解




 ある時、会社でエレベーター待ってて、ドアが開いて乗り込もうとした瞬間、肝心な必要書類を忘れて手ぶらで部屋を出てしまった事に気付き、思わず、

「 あっ・・・!」

と小さな声を上げて後退り、乗るのをやめた。
 中の人や、俺と一緒に乗り込もうとしてた人の顔が一気に強張ったんで、

“ あっ、しまった!”

と思ったが遅く、扉は閉まった。
いや悪い事した。











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日々の恐怖 7月7日 重量オーバー

2013-07-07 18:11:20 | B,日々の恐怖





   日々の恐怖 7月7日 重量オーバー




 あるデパートでエレベーターに乗った。
かなり多くの人が乗り込み、ほとんど満員になった。
あと2名乗れるかどうか。
 と、そこへ小柄な女性が乗り込んだ。
とたんに重量オーバーのブサーが鳴った。
ちょっと違和感を感じた。
この人が乗って重量オーバーになるだろうか?

「 あ、すいません。」

彼女は後ろを向き、誰もいない空間にささやいた。

「 後のにしてちょうだい。」

とたんにブザーが鳴りやんだ。
俺は異様なものを感じ、その場で固まってしまった。
 エレベーター内に言いようのない雰囲気が満ちた。

「 つきまとわれているんです。
でも大丈夫、悪い人じゃないから・・。」

彼女はパネルに目をすえたまま、誰に言うともなくつぶやいた。
 彼女には二度と会わなかったし、その後を知りたいとも思わない。
ただ今でも疑問なのだが、そういったものに重さってあるものなのだろうか?















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日々の恐怖 7月6日 倉庫

2013-07-06 18:58:20 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 7月6日 倉庫




 10数年前の話です。
当時、私は倉庫会社の配送担当をしていました。
その日は仕事が終わってから仲間と一緒に飲みに行き、その後2軒3軒と飲み歩くうちに、気が付くと終電は無くなっていました。
 翌日は早朝から積み込みと配送があったので、私は会社に泊まることにしました。
倉庫の横にある事務所の2階に休憩室があり、早番や遅番のドライバーは、そこで仮眠を取ることが良くありました。
 ただ、深夜には“出る”という噂があって、そこで夜を明かす人はほとんどいませんでした。
その噂のことは知っていたのですが、生まれてこの方、怪異などとは縁がない私はかなり酔っていたせいもあってあまり深く考えることもなく、休憩室の畳の上で横になるとすぐに眠ってしまいました。

 どれぐらい眠っていたのか、私は電話の音で目が覚めました。

“ ピリリリリッピリリリリッ。”

事務所の電話が鳴っています。

“ こんな夜中に誰だろう?”

そう思いながらも、起きるのが面倒臭かったので放っておきました。
 しかし、電話は執拗に鳴り続けました。

“ ピリリリリッピリリリリッ。”

ボリュームが最大に設定してあるせいか、物凄くうるさい。
いい加減うんざりして、身を起こそうとした時、

“ ドンドンドンッ!”

1階にある事務所の入り口のドアが叩かれる音がしました。
 不審に思って動作を止め耳を澄ますと、今度はドアを引っ掻くような音がします。

“ ガリ・・ガリ・ガリ・・・ガリ・・・。”

何だか怖くなって、私は畳の上に半身を起こしたまま息を潜めていました。

“ ピリ・・・・・。”

と、不意に鳴り続けていた電話の呼び出し音が止みました。
同時に、ドアの物音もしなくなりました。
 すると今度は、ぼそぼそと人の声がします。
ドアの外で誰かが喋っているようですが、話の内容はわかりません。
何が起きているのか全くわかりませんでしたが、ひどく嫌な予感がしたので、私は耳だけに神経を集中して物音を立てないようにジッとしていました。
 話し声は断続的に、ぼそり、ぼそり、と聞こえてきます。
複数の男の声のように思えました。
 やがて、女の声が加わるとすぐに声は止み、周囲には静けさが戻ってきました。
何が何だか良くわからないまま、しばらくは様子を伺っていましたが、そのうち張りつめていた気が緩んだのか、いつしか私は眠ってしまいました。



 次の日、私は早朝に目を覚まし倉庫側のドアから倉庫に入り、一人で積み込み作業をしていました。
すると、事務所の入り口の辺りに人が集まっているのが見えました。
 作業の手を止めて行ってみると、昨日物音がしていたドアに引っ掻いたような傷が残っています。

「 空き巣狙いなんじゃないのか?」

私の話を聞いた部長がそう言って、一応警察に連絡することになりました。
 夕方、配送を終えて事務所へ戻ると、私の顔を見た部長が、

「 警察へ行ってくれ。」

と言い出しました。

「 今日、近所で倉庫荒らしが捕まったらしいんだが、その関連で昨日の話が聞きたいそうだ。」

私は部長の車で警察に行くことになりました。



 警察署では簡単な事情聴取を受け、捕まった倉庫荒らしの話を聞きました。
警察によると、犯人は中国人の窃盗団だということでした。
 彼らは狙いを付けた倉庫会社に電話を入れて不在確認をし、そのうえで電話が鳴りっぱなしであれば多少の物音を立てても気にすることなく、工具でドアをこじ開けて中に侵入し金品を奪ってトンズラする、という手口で倉庫を荒らしていたそうです。

「 万が一の時に備えて、奴ら拳銃も持っていたんです。」

取り調べの警官がそう言うのを聞いて、あの日侵入してきた窃盗団に見つかっていたら、と思うとゾッとしました。
 続けて、警官が気になることを聞いてきました。

「 昨夜、あなたは電話には出なかったとおっしゃいましたが、本当ですか?」

私が、

「 はい。」

と答えると、警官はしばらく考え込むような素振りを見せてから、こう言いました。

「 あいつら、あなたの会社へかけた電話に誰かが出たと、そう言ってるんですよ。
だから、ドアをこじ開けるのを止めて、様子を伺っていたらしいんですが・・・。
その時、そこで何があったのか、誰も話そうとしないんです。」

警官はちょっと困ったような顔で言いました。

「 捕まった時にはあいつら、あなたの会社の近くに止めた車の中でブルブル震えていたんですよ。
大の男が4人揃って。
どう考えてもおかしいでしょう。」
「 男が4人・・・、ですか・・・。」
「 ええ、一網打尽って訳でして。
それについては、私らもホッとしておるんですがね・・・。」

それで、私は昨日の事を思い出しました。
 電話が切れた後、ドアの外にいたのは凶器を持った中国人の男達だった。
するとあの時、声がふっつりと止む直前に聞こえた女の声、あれは誰の声だったんでしょうかね・・・?














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日々の恐怖 7月5日 隣

2013-07-05 18:46:24 | B,日々の恐怖






     日々の恐怖 7月5日 隣





 今日あった(正確には昨日だけど)ことです。
ことの起こりは今日の午前中。11時半頃、玄関チャイムが鳴った。
セールスだったりするとウザイので、こっそりと覗き窓から覗く。
すると、ごつい感じのおじさん3人。

おじ1「 あ、202号(私の部屋)じゃなくて201ですよ。」
おじ2「 お、間違った!隣か・・・。」

そしておじ2は、すみやかに201号のチャイムを押す。
 その様子をじっと眺めてた私は、3人のおじ達がおそろいの紺のジャンパーを着てるのに気がついた。
しかも、おじ3はなんかドラマで見たことがあるような帽子も着用している。

“ ん?このおじさん達は、もしや警察・・・?”

なんか不安になった私は、遅れ馳せながらコソっとドアを開けて、まだ外にいたおじ3に尋ねた。

私「 あのぉ・・・、何かあったんですか?」
おじ3「 あ、失礼しました。私、○○警察の鑑識です。
いや、お隣に泥棒が入ったらしいんですよ。」
私「 ド、ドロボウですか・・・。」

ま、その段階で、

“ ひょ~!隣で良かった、うちじゃなくて良かったぁ・・。(お隣さんゴメン)”

と思ってしまった。
 ちなみに隣は40~50才の間で、労働者風のおじさん(ちらっとしか見たことないので、はっきり分からないけど)の一人暮しだと思う。



 それから約30分後、またドアチャイムです。
なんとなく予想した通り、刑事さんが警察手帳を差し出して立っていた。

刑事「 ちょっとお聞きしたいんですけど。」
私「 はぁ・・。」
刑事「 昨日の夜の8時頃、叫び声とか助けを求める声とか聞こえませんでしたか?」

刑事さんのこの質問に、ちょっと違和感を覚えた私。

“ え?叫び声?助けを求める声?え?隣に入ったのは泥棒でしょ?強盗じゃないんでしょ?”

ドロボウ=空き巣、と勝手に認識してた私は、その質問にちょっとビビリながら、声は何も聞こえなかったと答えた。
その後の刑事さんの質問が、またなんか私をビビらせる。

刑事「 普段隣から、わめき声とか叫び声とか聞いたことないですか?」
私「 いえ、ないです・・・。」

なんか変。この質問。

“ 昨日ドロボウが入ったらしいのに、普段のわめき声って何?”

なんか違和感溢れる刑事さんの質問に、変な気分。

“ 実はドロボウなんかじゃなくて、もっと恐ろしいことが隣に起こってるんじゃ・・?”

という疑念が湧く。



 そして3時間後、一本の電話が掛かってきたのです。
その電話までの経過です。
 それからほどなくして、あんなにワラワラいた(10数人いました)警察の方達はすみやかに撤収しました。
それでちょっと安心した。
もし凶悪な事件なら、そんなに早く撤収することもないだろうから。
やっぱ、隣は単にドロボウに入られただけなんだろう、と・・・。

 で、安堵と共になんか身近にあったこの出来事に、私は妙に興奮して友達に電話しまくりました。
ひとしきり自慢げに報告し終わってまったりした頃、その電話はかかってきました。

「 もしもし、△△ですけど。
ちょー、あんたとこのマンション、今朝警察来とったやろ?」

それは、仲良くしてもらってる近所のクリーニング屋のお姉さんから。
私は、「そうやねん。」と、今朝あったことのあらましをそのお姉さんに話した。
私の話をフンフンと聞き終えたお姉さんは、「それがなぁ~。」と話してくれたことです。

 今回の被害者であるらしい201号室のおじさんは、そのクリーニング屋のお客さんだった。
表札が無かったので私は名前を知らなかったが、“高橋さん(仮名)”というらしい。
 にも関わらず、時々“鈴木(仮名)”という名でクリーニングを出すこともあったらしい。謎です。
最近右腕を骨折していたらしく、ギブスをはめていた。
どうしたのかと聞くと、転んだと答えたらしい。
 でも、今日、刑事さんに伴われて、何故かそのクリーニング屋にやってきたおじさんは、普段の感じからは想像もつかないくらいイカレテタらしい。
クリーニング屋にやってきた意図は、イマイチ判然としなかったらしいけど、そのクリーニング屋の商品を受け取るための伝票を出して、

「 自分の預けてあるモノは、他の人が取りに来ても絶対わたすな。」

とか、なんかスーパーの伝票を取り出して、

「 ここに電話してくれ。ワシは手が震えてかけられへん。」

とか、とにかく言うこともすることも支離滅裂で、しかもおじさんの右手(ギブスをはめてる方)の薬指と小指が無かった、らしい。
 そして“高橋”だか“鈴木”だかなはずのそのおじさんを、そこにいた刑事さんは何故だか“小島(仮名)のアニキ”と呼んでたらしい。

刑事「 小島のアニキ、もうええやろ、迷惑やからやめとけ!」

と・・・・。
 お姉さん曰く、まるで、薬中か、もしくは少し精神を病んだ人みたいだったと。
そして、その刑事さんがお姉さんにポロリと言ったことは、

刑事「 本人は“えらい大金盗まれた、犯人はマンションの上か下の奴や!!”とか言うとるけど、どうもドロボウが入ったというのは狂言臭いんやなぁ・・・・。」

その話を聞いて、隣とか言われなくて、心底ホッとした私。
 そして、そのおじさんは刑事さんに伴われて去って行った。
それは、別に逮捕され訳ではなさそうで、もしかしたら任意同行なのかも?

お姉「 なんやようわからへんけど、なんかあのおじさん変やったから、あんたくれぐれも気ぃ付けやぁ。
今頃警察で尿検査とかされてるかもしれへん。
なんかあって逮捕されたら話は早いけど、薬物でなく単に変なんやったら、そのまんまお隣さんのままかもしれへんからな。」
私「 ぅ…ん…、分かった…、アリガト…、キヲツケルネ…。」



 まぁ結局、真相はまだ闇の中なんですが、てか、永遠に闇の中なのかもしれないけど・・。
どうも隣の住人は、警察に行ったまままだ帰ってきてないようです。
布団干しっぱなしです。
 どっちかって言うと、私的にはこのまま帰ってきてくれないほうが、なんかちょっと、そのォ~、良いような気が・・・・。
 真相がわからないので、日頃しごく平凡に日々を送ってる私にとっては、かなり刺激の強い出来事でした。
まだ終わってないかもしれないし、何か怖いっす。


















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