大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 12月16日 お迎え

2015-12-16 10:39:00 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月16日 お迎え



 私が小学校4年のとき、母から聞いた話です。
妹は保育園の年中組で、毎日4時に母が迎えに行っていた。
 その日は真冬で、こちらの地方は雪はほとんど降らないが、かなり寒い日だった。
保育園は家から歩いて10分くらいと近いので、午前中だけパートをやってた母は、毎日歩いて迎えに行っていた。
 その日もいつもと変わらず、保母さんから妹をもらい受け、住宅街から外れた田んぼの中の近道を、妹の手を引いて歩いてきたということだ。
 母の話では、その道すがら妹が変なことを言い続けていたらしい。

「 ねえねえお母さん。
暗い道があったら、まっすぐ行くとどうなるの?」
「 赤い車があって、女の人が下を見てるの。
すると男の人が出てきて、運ぼうって言うの。」
「 女の人もこっちに来て、暗い道を一緒に行こうって言うの。」

それで、道すがらの田んぼの中に、農具を置いてある掘っ立て小屋があるのを見て、

「 あそこに入ろう。」

と言って、母の手を引っ張ってきかなかったらしい。
 鍵はないだろうけど、他の家の小屋だし、田んぼの土に足を踏み入れるのは嫌だったので、 母は無理に手を引いて家まで連れてきたという。
今は違うけど、当時は妹はおとなしくてほとんどしゃべらないような子だったので、それも変だと思ったそうだ。
 そんなこんなで、近いのにその日は家まで30分ほどかかってしまった。
それで家の玄関先まで来ると、妹は手を離して走り出し、どたどたと音をたてて保育園のカバンを持ったまま二階へ駆け上がり、当時は私と共用だった子供部屋へ入ったらしい。
 普段はそんなことをする子ではないし、手を洗わせようと思って妹の後を追いかけ二階へ上がったが、二階には何故か妹の姿はなかったそうだ。
ただ、自分たちの部屋に入ると、ちょうど砥石で包丁をといでいる時と似た鉄くさい臭いが強くしたという。
 何処にいったのかと家の中や外を探していると、保育園から、

「 まだお迎えに来られていませんが、遅くなるのですか?」

という問い合わせの電話があった。
 母は不審に思って、

「 さっき伺ったと思いますが・・・・。」

と言っても、

「 今日は一度もお見えになっていませんよ。」

と、向こうも驚いた様子だった。
 そのあたりで私が学校から帰って来て、私は母と一緒に保育園に行った。
道々、母にこの話を聞かせられたが、私にとっては意味不明だった。
 保育園ではいつもの妹がべそをかいて待っていた。
それから一週間ぐらい後、母が妹のベッドのシーツを取り替えようとして敷布団をあげたら、ちょうど寝た状態の妹のあごがくるあたりのマットレスに、小さな赤黒い手の跡がついていたという。
 母は思わず大声で叫んで、あわててぞうきんで拭き取ったが、そのときに包丁をとぐ鉄くさい臭いがまたしたそうだ。
その後、何かあった訳でも無く、意味不明のまま現在に至っている。









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日々の恐怖 12月15日 クロス屋

2015-12-15 17:48:35 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月15日 クロス屋



 不動産会社に勤めるAさんの話です。
入居前修繕のために2階建てアパートの一階の部屋にチェックに行くと、天井は綺麗だが壁紙が黄ばんでいたのでクロス屋に見積り出してと依頼した。
 次の日、

“ 天井はやらなくていいとのことでしたが、天井のクロスに張り付いているお面はうちのほうで処分しますか?”

といった内容のFAXが入った。

“ いやいや、そんなもんなかった筈だ・・・。”

それで、クロス屋に電話で確認した。
 すると、

「 確かにありましたよ、アレ、気味悪いんで処分しますね?」
「 まぁ、本当にあったんなら、処分してくれると助かるよ。」

その数日後、クロス屋が集金に来て、

「 あれAさん(私)が取ってくれたんですね。」

もちろん私は取っていないし、鍵を持っているのも現場に入ったのも私とクロス屋だけだった。
その時に、クロス屋が言った言葉で鳥肌が立った。

「 あのお面、やたらリアルな造形と色だったけど・・・・。」

まじめに実話です。









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日々の恐怖 12月14日 見覚えのない写真

2015-12-14 18:03:11 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月14日 見覚えのない写真



 仕事帰りの飲み屋で、一枚の写真を手に上司が話してくれた。

「 知ってるだろうけど、俺は山に行くんだ。
写真を撮りにね。
大学の頃から山はしょっちゅう登ってたから、技術には自信を持ってたんだけど、今から15年くらい前かな。
あまりにいい景色だったんで夢中でシャッターを切ってたら、足を滑らして転げ落ちちゃったんだ。
 根が卑しいのかカメラをしっかり持ってたんだけど、なんとか体を引っ掛けることが出来た。
でも危険な状態だった。
 一メートル先は完全な崖だったんだ。
なんとか体はとどめているけど、いつまた滑り出すか分からない。
 その時、上からザイルがするすると降りてきたんだ。
カメラを首にかけて夢中で登ったよ。
 安全なとこまで登りきって一息ついたんだけど、誰もいない。
叫んでみたけど返事もないんだ。
 是非お礼を言いたかったのだが、仕方がないと思って、その日は山を降りた。
家に帰って写真を現像してみると、山の写真の中に一枚見覚えのない写真があるんだよ。」

そう言って、上司は写真をよこした。
 崖に引っかかっている時に偶然撮れてしまった写真らしい。
そしてその写真の真ん中に、崖の上から覗きこむようにして男の顔が映っている。

「 俺はこの人にお礼が言いたくて、いつもこの写真を持ち歩いてるんだ。
だけど、お前、分かるか?」

写真の男の顔は皺だらけであったが、上司の顔にそっくりであった。

「 年々、俺の顔がそいつに似てきてるんだ。」

上司はそれを悩みの種にしているようだった。










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しづめばこ 12月13日 P411

2015-12-13 22:39:27 | C,しづめばこ


しづめばこ 12月13日 P411  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
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日々の恐怖 12月12日 実家への帰郷(2)

2015-12-12 19:05:05 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月12日 実家への帰郷(2)



 M子さんが答えると、Kさんは言った。

「 そう。
じゃ、明後日の朝7時に学校の前で待ち合せしましょう。」

M子さんは携帯番号を教えてもらい、
Kさんと別れた。
 翌日、部屋の掃除と洗濯を済ませて明日の準備をしていると、携帯に電話が掛かって来た。
実家からだった。
久しぶりの帰省に喜ぶ母親に、明日は近くのキャンプ場で友達と泊まってから、翌日に家に向かう事を告げると、

「 キャンプ場なんて有ったかしら?」

と言う。
 ハイキングコースのゴミ拾いのボランティアの事を説明して、その近くだと言うと、

「 ハイキングコースなんて無いでしょう?
お前、忘れたの?
あそこはセメント工場のハゲ山だったでしょう。」

そう言われたM子さんは、子供の頃に電車から見えた、木のない削り取られた灰色の山々をハッキリと思いだした。
Kさんに電話して問い合わせるのもためらわれたM子さんは、サークル仲間に電話してKさんの事を聞いてみた。

「 ああ、あの合コンのきれいなお姉さん?」

サークル仲間によると、みんなKさんとはあの時が初対面で、都合が悪くなった女の子の代理で来たと言っていたという。

「 じゃ、その都合が悪くなった女の子は?」

と聞くと、友達の友達とかいう人で良くは知らないし、携帯とかの番号も聞いていない。
 翌日の待ち合せには、M子さんは行かなかった。

“ Kさんから電話が有ったらどうしようか・・・?”

と怖かったが、電話は掛かって来なかった。
 友達と一緒にKさんの携帯に電話してみると、何度掛けても呼び出し音が鳴り続けるだけで、二日後には通話不能となった。
 調べてみると、Kさんの言っていたハイキングコースなど無く、キャンプ場も存在していない事がわかった。
学校に問い合わせると、Kさんという生徒は在籍していなかった。
都合が悪くなったという女の子も、未だに見つかっていない。











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日々の恐怖 12月11日 実家への帰郷(1)

2015-12-11 18:14:42 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月11日 実家への帰郷(1)



 東京の大学に通うM子さんから聞いた合コンの話です。
サークル仲間に無理やり参加させられた合コンは、予想通り人数合わせの様だった。
仲間の二人は合コンというより初めからカップルで参加していて、相手の男が連れて来た人も、さえない人数合わせの様で、まったくM子さんの趣味に合わなかった。

「 カラオケでも行こう。」

と言う二人の誘いを断ったM子さんは、居酒屋を出て駅へ向かおうとしていると、

「 二次会は行かないの?」

と声を掛けられた。
 同席していたKさんだった。
同じ大学の先輩だと名乗ったKさんはかなりの美人で、男たちの注目を集めていたのを思い出した。
 Kさんの誘いでもう少し飲んでいこうという事になり、駅前の居酒屋に入った。

「 M子さん、T県出身なんだって?」

合コンの失敗をネタに盛り上がっているとKさんが言った。

「 さっき自己紹介で言ってたでしょ。
夏休みはT県に帰るの?」

二日後からは夏休みだった。

「 どうしようか、まだ決めていない。
旅費が結構掛かるから・・・・。」

とM子さんが答えると、Kさんは、

「 T県のハイキングコースのゴミ拾いのボランティアがあるので、一緒に参加しない?」

と言った。
 Kさんが所属しているアウトドア愛好会グループは、バーベキューキャンプを予定しており、T県のそのハイキングコースにあるキャンプ場のオーナーと契約して、ハイキングコースのゴミ拾いのボランティアを行う代わりに、キャンプ場を無料で使用させて貰える。
しかも、バーベキューの食材も提供してもらえるとのことだった。

「 どう?ボランティアだからバイト代は出ないけど、行きは私の車で一緒に行けば旅費も掛からないしね。
ただ、私達はその後の予定があるから、帰りは自分で何とかしてもらわなければならないけど・・・。」

 実家には2年くらい戻っていない。
かなり旅費が掛かるので、今年も帰らない予定だった。
確かに片道分の旅費で済むし、野外でバーべキューというのも楽しそうだ。

「 じゃあ、行こうかな・・・・。」









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日々の恐怖 12月10日 お知らせ

2015-12-10 19:19:19 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月10日 お知らせ



 蒸し暑い夏の夕暮れ時、留守番の俺は2階で昼寝をしていた。

“ ピンポ~ン、ピンポ~ン。”

誰か来たようだ。
 俺以外家には誰もいないし、面倒くさいので無視して寝ていた。

“ ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン。”

それからしばらく一定のリズムをつけつつ、鳴り続けるチャイム。

“ なんだよ、しつこいなあ・・・。
一体誰が来たんだ?”

 2階の俺の部屋から玄関をそっと見ると、白っぽい服を着た40歳位のおばさんが麦藁帽子をかぶった、お揃いの白い服を着た女の子を連れてチャイムを押している。

“ 子連れ宗教勧誘か?
全く面倒くさいなあ、とりあえず出てやるか。”

と思い、下に下りて玄関を開けると誰もいない。

“ なんだよ、もう行ったのか。
せっかく出てやったのに。
もう1回寝よう。”

と再び2階の自分の部屋で横になった。
すると、

“ ピンポ~ン、ピンポ~ン。”

また鳴った。
窓から見るとまたあの親子だ。

“ なんなんだ一体!”

俺は半分キレぎみで下へ駆け下りた。
 その間もず~と一定のリズムで鳴り続けるチャイム。
玄関のドアをバ―ンと開けて、怒鳴りつけようとした。
 誰もいない。
ドアを開ける直前まで確かに鳴っていたのに。
 隠れる場所なんてどこにもないし、どんなに足が速くても一本道の突き当たりにある家から見えなくなるはずがない。
 しばらくポカ~ンとその場で立っていると、

“ ピンポ~ン、ピンポ~ン。”

目の前のインターホンに誰もいないのにチャイムが鳴り響いた。

“ えっ、誤動作・・、いや・・・・。”

俺はダッシュで家に入り鍵を閉め、部屋のカーテンをして布団に入って震えつづけた。
 それからしばらくチャイムは鳴り続けた。
もう1回窓から玄関を見下ろすことはどうしても出来なかった。


 次の日の朝、親にたたき起こされた。

「 あんたに手紙、女の人からみたいよ。」

にやにやしている。
 新聞を取りに行って見つけたらしい。
白い封筒に名前は書いていない。

“ なんでこれで女だって分かるんだよ!”

取り敢えず開けて見ると綺麗な文字で、

“ なにかがあなたの家へ入ろうとしています ”

とだけ書いてあった。











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日々の恐怖 12月9日 ご先祖様

2015-12-09 18:21:57 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月9日 ご先祖様



 自分の話で何だけど、今年の夏に難病にかかってしまい、3ヶ月程入院しました。
入院する数ヶ月前から凄く具合が悪くて、ほとんど食事も摂れない状態でした。
 検査漬けの結果、とある難病と診断され、もう2度と治らないだろう、と宣告され酷く絶望的な気持ちになりました。
体は勿論だけど、精神的にかなりきつかったです。
 治療の副作用で3日3晩、40度を超える高熱を3回出しました。
自分でも、

“ もうだめかな・・・?”

と覚悟した時、祖母が迎えに来てくれました。
 祖母は、

「 可哀想に、こんなに苦しい思いをして。
ばあちゃんと一緒に行こう。」

と私を抱き抱えてどこかに行きました。
 その後意識が途切れて、私の意識は高い窓のような所から、座敷と思われる風景を見ていました。
映画の犬神家に出てきたような古い座敷で、2~30人程の老人が会議のようなものを開いているようでした。
 一番末席に私の肉体を抱いた祖母が座っていて、

「 可哀想だ!」

と、大泣きして上座の方に訴えていました。
 祖母の隣には腕を組んで目を閉じ、じっと下を向いた祖父が座っていました。
他の人はよくわかりませんでしたが、上座に行くほど時代掛かって、服装から髪型から古くなっているようでした。
 祖母は私をここに連れて来たいと皆に訴えましただ、皆ただだ渋い顔をして俯くばかり。
しばらくすると一番上座の方(私には光の塊で顔が見えない)から、

「 その子はまだ寿命じゃない!勝手な事するな!」

という声が聞こえました。
その途端、病院のベッドの上に戻っていました。
 それまでの私はウツを患っていた事もあり、生きることに何の執着もなかったのですが、

“ 私にもあんな風に会議を開いてくれるご先祖様がいるんだなぁ。”

と思ったら何だかとても感動してしまって、考え方というか、生死感がガラッと変わりました。
 その後医師も驚くような回復をして、半年位かかるかもと言われた入院も3ヶ月で済み、ウツまで治ってしまったようです(主治医に言われました)。
熱にうかされて夢を見ただけかもしれませんが、怖いような不思議な体験でした。










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日々の恐怖 12月8日 詳しくは言えないんです

2015-12-08 19:54:11 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月8日 詳しくは言えないんです



 詳しくは言えないんですけど、病棟って言うのは患者さんの症状によって部屋割りが決まっていたりするんです。
例えば目の離せない状態の患者さんはナースステーションの近くみたいな感じです。
 冬になると多いんですが、ある日スノボで骨折した若い男性の患者さんが入って来たんです。
だいたいは6人部屋や8人部屋なんかへ入ってもらうんですけど、たまたま空いてなくて個室へ入ってもらうことになったんです。
始めの内その若い患者さんは得をしたみたいな感じで喜んでいたんです、まだ陽のある内は。
 深夜勤務でナースステーションで雑用捌いていると、昼に入って来たその患者さんが訪ねてきたんです。

「 ハイ、どうされましたぁ?」
「 あの~、言いにくいんですけど・・・。」
「 ハイ?」
「 病室なんですけどぉ・・・。」
「 病室?どうかされましたぁ?」
「 変えてもらいないですか?」
「 何かありましたぁ?」
「 いやぁ、あのぉ~、つ~か出たんですけど・・・。」
「 はぃ?」
「 夜中に何か息苦しくて目が覚めたんですよ。
そしたら部屋の四隅に人が立ってるんですよぉ。」
「 えっ?」
「 気がついたら、その人達が自分のベッドの脇に立ってるんです。」
「 ・・・・・・。」
「 それで、言うんです、此処は未だお前の来る場所ではないって・・・。」

“ 嫌だなぁ・・・・。”

と思いながらも仕方が無いし、こういうことは初めてでもないので、

「 取り敢えずちょっと見て来ますから、ここ入って構わないので、そこに掛けててもらえますか・・・。」

 一応見には行くんですけど、何時もと変わらない病室です。
仕方が無いので、その日だけナースステーションのそばの処置部屋にベッド移動しました。
 その患者さんを始めに入れた部屋は、普段はそういう部屋として使っていたので、

“ そのようなことを言われたのかなぁ・・・。”

と思います。










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日々の恐怖 12月7日 5階の子供

2015-12-07 20:30:19 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月7日 5階の子供



 石川県の加賀市の外れに県営団地が立っている。
今から15年ほど前、早朝の新聞配達のバイトの高校生がイヤホンで音楽を聴きながら5階まで駆け上ってくると、小学校低学年くらいの男の子が、ある部屋の一室のドアを何か言いながら叩いていた。
 その部屋は新聞を配達する部屋ではなかったし、こんな早朝にこんな子供が家の外に出されている異常な光景に、高校生はどう関わって良いのか分からず、その子供を無視して配達する部屋に向かった。
 戻る時も、まだその子供はドアを叩いていた。
イヤホンで音楽を聴いていたから、その子がなんて言っているかわからなかったし、そんな子供の声なんて聞きたくもなかった。
 その朝、学校に向かう途中、その県営団地の5階の一室を焼く火事があった。
ニュースによると若い夫婦二人の焼死体が上がったそうだ。
ただ、子供のことは何も報道がなかった。









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日々の恐怖 12月6日 喫煙室のオッサン

2015-12-06 18:14:13 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月6日 喫煙室のオッサン



 何年か前に入院してた時の話です。
今はその病院の敷地内でタバコは吸えなくなりましたが、その当時は喫煙室という場所が病院内にありました。
 その喫煙室で凄く顔色の悪いおじさんが、私の隣の席に座りタバコを吸い始めました。
そして私に、

「 俺はどの薬を試しても全然効かないんだ。
もうすぐ死ぬと言われた。
どうせ死ぬなら他の奴等を道連れにしようかな・・・・。」

と、ぽつりとつぶやきました。
 その病院はそこそこ大きい総合病院で、外来患者も多く、そのおじさんはつぶやいた後に、

「 明日は外来も多いしな・・・。」

それを聞いた私は、

“ 危ねぇオッサン!”

と思いながらも、タバコを吸っていましたが、おじさんが喫煙室から出た後、喫煙室にいた他の入院患者さんに話しました。
 その入院患者さんもそれを聞いて、

「 あいつマジで危ないで。」

と言うので、

“ もし本当に、そのおじさんがマジでやったらまずい!”

と思い、病棟に戻った時に看護師さんに伝えました。
 その次の日、そのおじさんの姿を見かけましたが、その翌々日からそのおじさんの姿を見る事は無かったです。
 私がその話をした看護師さんは、

「 一応全部の病棟に連絡しておきます。」

と言ってました。
あのおじさんはどうなったのか今はわかりませんが、その病院に来月入院します。










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日々の恐怖 12月5日 隣からの声

2015-12-05 18:44:24 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月5日 隣からの声



 高校生の時、俺は腸が弱かった。
ゆえに、学校に行く時は少し早く出て、途中の汚い公衆便所で用を足す事が多かった。
 その公衆便所は駅を降りて、通学路からは少し外れた公園の森(森と呼べるのか分からないが)の中にある。
そして、必ず一番手前のドアが閉まっていた。
 無論その中にはいつも、ちゃんとした人間がいるのは知っていた。
くしゃみや咳、新聞を広げる音などがしていたからだ。
しかし、それを気にしている暇もなく、学校に遅れないように、大量のウンコをすることで精一杯だった。
 いつも同じ場所で、俺が行った時にいつも用を足している人間がいる事を、まだその時は不自然には思わなかった。
ま、そういうヤツもいるだろう、と思っていた。
 俺が朝、家を出て、電車の中で腹が痛くなり、その公衆便所で用を足し、学校へ行く。
そんなサイクルも一年以上続いた高校二年のある日、やはり俺は朝、腹が痛くなり、例の便所へ駆け込んだ。
そして、いつものように閉まっている手前の個室を通り過ぎ、用を足し終わった。
 その時、その個室から声がした。

「 いいですね、いつもお腹の調子良さそうで・・・。」

学生、とは言えないが、若そうな声だった。
 一年以上俺と同じタイミングで用を足していた、そいつの声を初めて聞いた。
だが、いつもとはどういう事か?
 とりあえず、

「 え、あ、まあ・・・・。」

とぐらいしか返事を返せなかった。
 そして次にヤツが言った、不気味な言葉。

「 私なんかね、もうね、ずっとお腹の調子悪いんですよ、ほんとに。
出てないんですよ、ずっと。
私ねこの場所から全然出てないんですよ、ほんとに。
お腹の調子、悪いからね、出れないんですよ。」

手を洗いたかったが、これ以上ない寒気に負け、学校で洗うと決め、早足でその場を出た。
 心臓がバクバクと鳴っていた。
後ろを振り向く事が出来なかった。
 いつもという言葉。

“ 個室から出ていないのに、なぜ俺がいつも用を足している事を知っているのか?”

 そして、この場所からずっと出ていないという言葉。

“ 一年以上、ヤツはずっとあの場所にいたのか・・・?”

考えれば考えるほど、訳が分からなくなった。
 その日からは、いくら腹が痛くても我慢して学校まで耐えるか、遅刻覚悟で家で用を足して行くかにした。
ヤツが何かは、分からない。











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しづめばこ 12月4日 P410

2015-12-04 19:08:42 | C,しづめばこ


しづめばこ 12月4日 P410  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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小説“しづめばこ”




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日々の恐怖 12月3日 夜間せん妄(2)

2015-12-03 20:11:51 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月3日 夜間せん妄(2)



 その病室に入院する方々は、病名も性別もバラバラです。
確かに高齢者であることに変わりはないのですが、認知症ではない方も同じ幻覚の話をするのです。
 その幻覚とは、ふと気が付くと女性がドア付近に立っているというものでした。

「 はっきりとは見えなかったが、あれは誰か?
夜に誰かきたのか?」

と、その病室の方によく聞かれました。
 これだけ同じ目撃証言があると、これは幻覚ではなく本物ではないかと思ってしまいます。
そこで先輩職員になぜその病室だけ同じような目撃証言があるのか聞いてみたのですが、原因ははっきりしませんでした。

「 この病院古いし、どの部屋でも亡くなってる人いるし。
原因なんてわかんない。」

と、怖いことをさらっと言われてしまいました。
 ところがその後、他の先輩に聞いてみると、

「 その女の人、確かにたまに見るわ。」

との衝撃発言が返ってきました。
 私は思わず、

「 やっぱり、あれは本物ですか!?
てか、見えてたんですか!?
教えてくださいよ!」

と詰め寄ってしまいましたが、その先輩職員曰く、

「 何かするわけでもないし、仕事には差し支えないでしょ!」

とベテランならではの頼もしい返答がかえってきました。
 それからしばらくは夜の病棟を歩くときが怖くて仕方ありませんでしたが、結局私が見ることはありませんでした。
そのうち、確かに仕事に支障はないことを理解して、慣れって怖いなと思ったものです。
 その後病院の建物があまりに古いので、建て直して新しくなりました。
すると、入院している方からその女の人の話はぱったりと聞かなくなりました。
 ふと会話のネタで先輩職員に、

「 そういえば、あの女の人の話聞かなくなりましたね。」

と言うと

「 確かにね。
まぁ、今度は病室にはいないからじゃない。」

とのお答えでした。
 場所は教えてくれませんでしたが、どうやら今はあまり目立たない場所にいらっしゃるようです。












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日々の恐怖 12月2日 夜間せん妄(1)

2015-12-02 19:17:11 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月2日 夜間せん妄(1)



 病院に勤める看護婦のHさんと話をする機会がありました。

 私は病院に勤めています。
これは、その病院に就職してまだ2~3年くらいの時の話です。
 その病院は増築を繰り返しており、古い建物と新しい建物が繋がってできていました。
その中でも私は一番古い建物の病棟に配属されていました。
 その病院には様々な方が入院されてきましたが、やはり多いのは高齢者です。
転んで骨を折ったとか、脳梗塞になったなど理由は多様ですが、ほぼ高齢者でベッドが埋まっている状態でした。
 突然ですが,夜間せん妄って知っていますか?
夜間せん妄は簡単に言うと、夜に意識がもうろうとして幻覚や錯覚がみられる状態のことです。
多くは認知症の高齢者にでる症状で、人によりその状態も様々です。
体調次第で一時的に症状が出てしまう方もいます。
 私の勤める病院に入院しているのは体調の悪い高齢者です。
もちろん認知症の方も大勢いるわけです。
そうなると、必然的に夜間せん妄の方がでてきます。

「 お~い、お~い、誰か~・・・・。」

誰が呼んでいるか分かっていても、薄暗い廊下に響く声はちょっと怖いです。
だいたいこういう場合に、幻覚が見えているとその方も怖いのでしょう。
 よく、

「 誰かそこにいる。」

とか、

「 あの黒いのは何?」

とか、自分が見たものを訴えてきます。

“ これは幻覚を見てるんだ!”

ということがわかっていても、

「 ほら、そこにいる。」

とか言われるとめちゃくちゃ怖いです。
 実際は全く何も見えないのに、人間の脳って不思議です。
ある時など、ふらふらと病室からでてきたおばあちゃんに、

「 どうしたの?」

と尋ねてみると、

「 窓ガラスに、たくさん生首がいたのよ~。」

と、淡々と報告されました。
 ぼんやりした状態でも、テンションは普段と変わりません。
普通そんなもの見たらもっと慌てるでしょうに。
 これでその窓ガラスの向こうには墓地が・・・、とかオチがあれば本物でしょうが、残念ながらあるのはまったく普通の民家です。
 びびりながらも一緒に窓ガラスを確認して、そのおばあちゃんも見間違いと納得されていました。
こういったケースなら、

“ この人、幻覚見ちゃったんだな。”

と思うところなのですが、ある病室に入院する方の幻覚症状は少し違ったのです。











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