日々の恐怖 4月2日 青い袖(4)
それは実はいま、弟をイジメていたグループの七人全員が、事故や病気などで学校を休んでいるという話だった。
五人目が交通事故に遭った時点で、先生はふと気になっていたのだが、六人目が理科の実験中、顔に全治二週間の火傷を負ったと言うのだ。
その話だけは私も知っていたので、内心いい気味だと思っていた。
弟の鼻を折った子だったからだ。
だがその子は病院で、
「 ○○の呪いだ!」
と自分の母親に訴えたそうだ。
まるで弟が悪いみたいに聞こえたので、私は頭にきて、
“ バカじゃない?やっぱりサイテーなヤツ!”
と心で罵った。
そもそも最初から少し苛ついていたので、私はもう家に帰りたいと言ったが、先生の話は終わりではなかった。
同じ日の昼休みに、七人目の子が転んで怪我をしたというのだ。
その子は弟をイジメた七人のリーダーで、先生は倒れた瞬間を見たと言った。
何もないところで突然倒れたらしく、はじめ貧血か何かだと思ったそうだ。
その子はすぐに保健室に運ばれたが、転んだ事は覚えてなくて、軽い脳しんとうという診断だった。
私は少しゾッとしたが、やはり馬鹿馬鹿しいただの偶然だと思って、もう関係ないから、ホントに家に帰らせて欲しいと願い出た。
だが先生は、帰りは自分が車で送るので、もう少し話を聞いて欲しいと言った。
いま思い起こせば、おそらく先生はその時相当怯えていたのだと思う。
先生は、これはイジメと無関係だが、どうしたらよいのかわからない、できれば誰にも話さないで、内緒にして欲しいと言ってから話し始めた。
それは4日前、放課後先生と弟がインコ小屋の掃除をした時の事だった。
掃除が始まってすぐ事務に呼び出された先生は、一度事務へ行って戻ってきた時だった。
弟の隣に4~5歳の女の子が立っているのが見えたので、
“ 誰かな・・・?”
と思ったが、その女の子はパッと消えてしまったのだ。
その時はとても驚いたが、先生は自分の見間違いだと思った。
でもその女の子は見間違いではなく、その後すぐにまた現れた。
小屋の掃除が遅くなったので、先生は弟を車で送ることにして、弟を正面玄関に待たせておいたが、戻ると弟は玄関にいなかった。
トイレだろうと思って少し待っていると、水を流す音が聞こえた。
すると弟は戻ってきたが、弟の後ろにさっきの女の子がいたのだ。
その子はまたすぐに消えたが、同時にすぐ後ろから小さな声で、
「 許さない。」
という声がして、先生は悲鳴をあげた。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ