大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 4月15日 おい(2)

2016-04-15 20:52:10 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 4月15日 おい(2)



 彼は私の前では取り乱した様子は見えませんでしたが、明らかに憔悴していました。

『 それで最近は、授業中でもあの声が聞こえてくるんじゃないかと、それが怖くて・・・。』
『 でも君、それは声だけで、何も悪さはしないんだろう?
ただの空耳というやつだよ。』

私はそう言って彼をなだめようとしましたが、効果がありませんでした。

『 最近は、自宅の書棚に這い回る無数の手が見えるんです。
まるでクモみたいに、さらさらと本の背表紙を触っているんです。』

その生徒はそう言っていました。」

オチとして、

「 あまりに研究に没頭しすぎるとこのように幻聴や幻覚が聞こえるようになるから、まあほどほどに励んでくださいね。」

と、教授の話はここでおしまいでした。
 その生徒が以降どうなったのかは、知る機会はありませんでした。
それでも何となく気味の悪い思いで、記憶に残していた程度です。
 その後3年が過ぎ、私は卒業論文の製作に心血を注いでいました。
とにかく大好きな研究分野だったこともあり、自分の全てを注ぎ込んで資料の収集と整理に励んでいた頃です。
 それは薄暗さが迫る晩秋の夕方で、私は図書館の閲覧室にいました。
個人ブースに書籍を積み上げて読書にふけっていた私の耳元で突然、誰かが、

「 おい!」

と言ったのです。
図太く低い、男性の声でした。
 職員の人が何か咎めたのだろうか、とすぐに顔を上げましたが、そこには誰もいません。女子学生がちらほら、私と同様にブースで読書に励んでいるだけでした。
私はすぐに、あの数年前の教授の話を思い出しました。
 あくる週末、私は遠方の実家に帰り、休息をとることにしました。
幸いにも、私にその声が聞こえたのは後にも先にもあの時一回だけでしたが、熱心に事を成す際は、ほどほどになさってください。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月14日 おい(1)

2016-04-14 18:52:34 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 4月14日 おい(1)



 大学生になりたての頃の話です。
いくつか教養科目をとるなかで、一つ心に残った授業がありました。
 その授業を担当していた教授は、とても優雅な老紳士で、いつも和服で教壇に立っておられました。
話すこともかなり古めかしく、少し前の昭和・大正の世の中を生きているような、そんな雰囲気を身にまとっておられました。
その教授が、こう話すのです。

「 大学生ともなりますと、自主的にでも強制的にでも、かなりの量の本を読まなければいけなくなりますね。
皆さんはまだ、あまり意識がないかもしれないが・・・。
 私の古い生徒の話なんですが、ひとりちょっと変わったのがいました。
彼は非常に勤勉で意欲もあり、私が授業の内外で話題にする本を、ほぼ全て読んで知っているような人だったんです。
 その生徒が学業に励み、課題に出した以上のことをノートなりレポートなりで提出してくるのです。
本当に、精力あふれる青年でした。
私も授業に気合いが入りましたしね、この子はきっとよい研究者になり、日本の学界の権威になるんだろうなと期待もしていました。
 ですがその彼が、ある夏休みを境に変わってしまったんですね。
質問もしなくなり、授業中何かにおびえるような態度を見せるようになった。
レポートなどの提出は相変わらず精力的でしたが、どうも精彩を欠いているような、そんな感じでした。
 私は疲れているんだろうな、と思ったくらいでさほど気に留めなかったのですが、ある時彼と、私の研究室で懇談をする機会があったんです。
その時、ようやく彼は打ち明けてくれました。

『 先生、はじめは声が聞こえたんです。』

彼はそう言いました。

『 声ってなんだね?』

と聞くと

『 誰もそこにいないのに、声だけが聞こえてくるんです。
はじめは大学図書館でした。
 おい○○、と男性が僕を呼ぶ声がきこえたんです。
静かにしなければいけない図書館で無礼だな、と思って振り返りましたが、そこには誰もいませんでした。
一番近くには女子生徒がいましたが、何も聞こえなかったように書架で本を探しているんです。
 そういうことが図書館で何度か続いて、それがしまいに、下宿先の部屋にも聞こえてくるようになったんです。』










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月13日 お通夜

2016-04-13 19:49:17 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 4月13日 お通夜


 15年くらい前、不思議な体験をしました。
福井の田舎で高校生の僕は、友人の母親のお通夜に行きました。
崖くずれか何かの急な事故で亡くなったとのことでした。
 葬儀場は木造の古い公民館で、友人の学校関係者ばかりが目立つ寂しい葬儀でした。
会場に入るとき、入り口横のガラス窓を何気なく見上げると、ガラスいっぱいに顔を近づけている中年の瘠せた女性と目が合いました。
喪服を着ているようなので、親戚か近所の人が手伝いに来て台に乗っかって、上にあるものを取ろうかしていると思いました。
 公民館の中に入ると中央に写真があって、さっきの人が写っていました。
でも、式場だから親戚で似た人ぐらいいると思って、あまりピンと来ませんでした。
 しかし会場を出るとき、まさに背筋が凍りついたですね。
女の人が写っていた窓の内側には、村の祭礼用の道具がびっしり仕舞ってあって、とても人の入れるスペースなどありません。
 その後10年ほどは、怖くて怖くてずっと自分の胸にしまっていましたが、今から考えると、彼女はあそこに立ってずっと列席者を見ていたんですね。
色白の頬と、くっきりした眉毛がいまでも脳裏に焼き付いています。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月12日 二段ベッド(2)

2016-04-12 19:17:15 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 4月12日 二段ベッド(2)



 気味が悪い二段ベッドだった。
使いたくはなかったが部屋のスペースの問題もあり、その日もベッドで寝ることになった。
 夜中、誰かの泣き声で友人は目が覚めた。
姉の声だ。
階段で下に降りようと思ったが、どちらに壁があるのか確認するのが怖かった友人は、頭に布団を被ったままベッドから右側に手を伸ばしてみた。
 壁の感触がある。
安心した反面、なにか嫌な予感がした友人は、左側にも手を伸ばしてみた。
 壁の感触がある。
驚いた友人は布団から頭を出して周りを見てみた。
 部屋の横方向がベッドの幅に圧縮されているように、左右に壁があった。
友人は頭パニックになりながら、とりあえず足元のほうからベッドのヘリを使って下に降り、下の段の姉の布団に飛び込んだ。
 姉も顔をグシャグシャにしながら泣いていて、姉弟は抱き合いながら布団を被って夜を明かした。
 翌朝、目が覚めると母親の顔が目の前にあった。
しかもかなり怒っている。
何を怒っているのかわけもわからず、友人は姉とベッドから出て周りを見て目が点になった。
 部屋のドアを塞ぐように、ベッド本体が移動していたのだ。
母親は2人が夜のうちにイタズラをして移動させたと思ったらしい。
部屋のドアは内開きだったので、寝ている2人をベッドごと跨ぐ様にして母親は部屋に入ったとの事だった。
 姉弟は泣きながら昨夜の出来事を話した。
初めはイタズラか、2人で寝ぼけたのかと笑っていた両親だったが、ベッドを元の位置に戻す段階でおかしい事に気が付いた。
どう考えても小学生の2人が移動させられるベッドの重さではなかったからだ。
 結局、そのベッドは家からは消えた。
親父さんが返品したのか、捨てたのかは知らない。
曰く付きだったのかもわからない。
友人の家では二段ベッドの話はタブーとなっているので、未だに真相は闇の中だ。









童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しづめばこ 4月11日 P427

2016-04-11 19:10:03 | C,しづめばこ


しづめばこ 4月11日 P427  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
大峰正楓小説書庫


童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月10日 二段ベッド(1)

2016-04-10 18:58:07 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 4月10日 二段ベッド(1)


 Sさんの友人が子供の頃に体験した話です。
小学生の頃、家に帰ったらこげ茶色の立派な二段ベッドが部屋に置かれていた。
 親父さんが知り合いから格安で譲ってもらったらしく、友人は前からベッドが欲しかった。
友人は大喜びで、その日から友人が上の段、友人の姉が下の段で寝ることになった。
 ところがその夜、夜中に寝返りをうって友人は目を覚ました。
寝る前は右側に壁があったのはずなのに、今は左側にある。
いつの間にか寝ている位置が左右逆になっていた。
 寝ぼけていた友人は、自分が寝相が悪くベッドの中で頭と足の位置が入れ替わったのだろう、と思ってそのまま寝た。
 翌朝、起きてみると壁はちゃんと右側にあり、友人はきちんと布団に入って寝ていた。
友人は不思議な事があるもんだと思ったが、せっかく買ってもらったベッドなので両親にはその出来事は話さなかった。
 その日の夜、友人は夜中にトイレに行きたくて目が覚めた。
二段ベッドの梯子を降り、半分寝ている頭でドアのほうに向かって歩くと、顔面から壁にぶつかった。
 よく見ると、ドアがあるのは反対方向の壁だった。
どうやらまた寝ている位置が逆になっていたようだったが、眠かった友人は深く考えず、トイレを済ませてからまた寝た。
 翌朝、さすがに2日連続不可解なことが続いたので、友人は今までの事を両親に話してみた。
 案の定、両親は、

「 気のせいか夢でも見たんだ。」

と笑ったが、下の段に寝ている姉も同じ体験をしたらしく、青い顔で、

「 本当だよ。」

と言った。
 このベッドで寝ていると、寝ている位置が夜中に目が覚めたときに変わっていて、朝に気が付くと元に戻っているらしい。
普段は仲が悪い姉弟も、この時は結託して両親に訴えてみたが一笑で終わった。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しづめばこ 4月9日 P426

2016-04-09 17:21:38 | C,しづめばこ


しづめばこ 4月9日 P426  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
大峰正楓小説書庫


童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月8日 村の神様

2016-04-08 18:16:30 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 4月8日 村の神様



 私の母方の親戚に脳に障がいがある子がいて、その子の話です。
去年のお盆に実家に帰省していた時、その子達家族が我が家へ遊びに来ました。
その子は13才になるけれど、知能は幼児レベルしかなく、私の横にぴたっとくっついて座り、おもちゃとかテレビ漫画とかについてつらつらと喋っていたんだけど、ふと、

「 ねえねえ、ちっちゃい○○ちゃんはどこ?」

と言うのです。
○○は私の名前です。
 私が、

「 ○○ちゃんは、ここにいるじゃない。」

と言うと、

「 ううん、ちがうちっちゃい○○ちゃん。」

とやっぱり言うので、私も調子を合わせて、

「 あらら、どこにいたの?」

と聞いてみました。
 すると、その子は、

「 あっち。」

と、私の使っていた子供部屋を指差しました。
 その子と私は20近く年が離れているし、私は高校進学で学校の寮に入ったため、15才までしかその家に住んでいませんでした。
ですから、その子が小さい頃の私を知っている筈がないし、子供部屋は物置になっていましたから、ひと目ではその部屋が子供部屋とはわかりません。
 私はびっくりして、

「 今はもういないの?」

と聞くと、

「 さっきまでいたんだけど、隠れちゃったかなあ・・・。」

と言ったきり、その子はまたおもちゃの話を始めてしまいました。
続きが聞きたかったけど、あんまり根掘り葉掘り聞くのもあれだし、それ以上のことは聞けませんでした。
 私は子供の頃とても神経質で過敏で、友達が少ない子供だったんですが、今はとても図太くなり、社交的だと周囲によく言われる大人になりました。
勿論、環境の変化や出会った友人達のおかげだとは思いますが、私は子供の頃の自分を、あの家に置いてきたのかもしれません。
 実家から戻る時、

「 一緒においで、置いてきぼりにしてごめんね。」

と思いながら家を出ました。
彼女が今も私の中にちゃんといてくれると良いなあと思います。
今ならきっとその子を抱きしめてあげられると思うからです。
 この話をあとで母にした時に、母が、

「 あの子は神様みたいなもんだから。」

と言いました。
 私の母は特に信仰心が篤いわけでもなく、珍しいこと言うなあと思って更に聞くと、なんでも母の生まれた村では、そういう障がいのある子供が各家に持ち回りの様にして生まれてくるということでした。
複数いることはなく、大概は村にひとりなんだそうです。
 それで、村のひと達は

「 この子は神様がつかわしてくれた子なんだなあ。」

と、そういった子供をとても大切に思っているそうです。
 その親戚は母の実家の後を継いでいるので、その家にその子が生まれた時に、母は、

「 うちの順番なんだなあ。」

と思ったと言っていました。
 閉鎖的な田舎でそういった子を持つ家を除け者にしないための知恵だとは思いますが、ちいちゃい私を見つけてくれたあの子は、やっぱり神様に近い所にいるのかも知れないなあと納得しました。











童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しづめばこ 4月7日 P425

2016-04-07 19:06:10 | C,しづめばこ


しづめばこ 4月7日 P425  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
大峰正楓小説書庫


童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月6日 青い袖(7)

2016-04-06 20:49:41 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 4月6日 青い袖(7)



 その時は怖くてそれ以上何も聞けなかったが、どうしても気になって寝る前に、

「 お母さんの方は?」

と尋ねると、

「 さあ?知らないけど、先に帰ったんじゃない?」

と言っていた。

“ 帰った?何処に?”

と思ったが、とにかくその日から私のベッドは二段ベッドの下になった。
 弟が先生に、何をどう話したかはわからないが、後日私はまた先生に呼び出されて、今度はお礼を言われた。
それから私と弟は先生ととても仲良くなり、家族ぐるみの付き合いになった。
 だが、これは私が中学に入ってから家で先生に聞いた話だが、転んだ子は転んだ二ヶ月後に、慢性硬膜下血腫で亡くなっていた。
それを聞いた時あの憎たらしい顔を思い出して、すぐに可哀想とは思えなかったが、やはり死んでしまうのは悲しいと思った。
 弟に、

「 先生に聞いたけど、○○死んじゃったんだってね。」

と言ったら、弟はちゃんとそれを知っていて、沈んだ顔で、

「 ん・・・・。」

と小さく頷いただけだった。
私は言わなきゃよかったと、少し後悔した。











童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しづめばこ 4月5日 P424

2016-04-05 19:59:02 | C,しづめばこ


しづめばこ 4月5日 P424  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
大峰正楓小説書庫


童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月4日 青い袖(6)

2016-04-04 20:15:56 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 4月4日 青い袖(6)



 弟は私の話を黙って聞いていたが、女の子の話でやっと少し驚いて、

「 そっか、先生見えたんだ・・・・。」

と言ったが、あまり興味なさ気だったので、私が先生に嫌われたらダメだと食い下がると、弟は笑いながら、

「 大丈夫、俺が明日先生に言うから。」

と言った。
しかしそれでは先生との約束をやぶってしまうので、

「 ダメだよ、言わないでって言われたんだから・・・。」

と、いま考えればとても自己中な事を私は言ってしまった。
だが弟は、先生がそこまで怖がっているなら、全部話した方がいいと言った。
私が恐る恐る、

「 何を?」

と尋ねると、弟は、

「 みんなのことはホントに知らないこと、あの子のこと。
あの子遊んでるだけで、全然関係ない。
声は俺も聞こえたけど、先生が怖がりだからからかったんだと思う。」

と、二段ベッドの上の私の方を見て言った。
私は、

“ そこに誰かいるの?”

と思って少し怯えたが、それよりもあの子が誰か気になって、

「 あの子って?」

と尋ねた。
弟がすぐに、

「 神社の子。」

と言ったので、思わず弟の腕を掴んでいた。
弟は、

「 大丈夫だよ、沢山遊んだらそのうち帰るから。」

と笑っていた。











童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月3日 青い袖(5)

2016-04-03 18:14:12 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 4月3日 青い袖(5)



 悲鳴に驚いた弟が先生に近づいた時、もう一度、

「 許さない。」

と聞こえた。
 耳を両手で塞いでいてもハッキリ聞こえたという。
声を信じられなかった先生は次の日病院で目と耳の検査をした。
しかし、検査結果は特に異常なしだった。
 正直言って私は逃げたいほど怖かったが、それよりも妙な気分だった。
こんな子供じみた話を、大人の先生が子供の自分に真剣な目で話すのが、とても奇妙に感じたのだ。
 今思うと私は、母以外の大人は幽霊なんて信じやしない、と勝手に決めつけていたからだろうと思う。
 先生は、今度は死体遺棄事件の話をはじめた。
そこで私は、もう引っ越してしまった神社で一緒に遊んでいた友達の一人が、実は先生の姪だったと知ってとても驚いた。
 その子は私と弟の幼馴染みで、弟の不思議な言動をよく知っていた。
友達はそれを、叔母である先生に時々話していたのだ。
つまり先生はずっと以前から、姪から弟の話を聞いていたのだった。
 しかし先生は姪の話に出てくる不思議な男の子が、弟だとは知らなかったし、当然子供の戯れ言だと思って全く信じていなかった。
最近姪と話した時に突然弟の名前が出た事に驚いて、それで男の子と弟が同一人物であることを知ったと言うのだ。
 そして今までデタラメだと思っていた、
アイスを6回も連続で当てたり、財布を拾って一割もらったり、車の中に死にそうな人がいた話が、全部本当の事に思えてきたのだと言った。
 もちろん私はそれが全部本当の事だと知っていたので、先生にそう言った。
すると先生は、担任になって弟と接する内に、弟が落とし物の持ち主をすぐに言い当てたり、なくし物を探し当てたりと、弟の勘が異様に鋭い事には気が付いていたのだと言った。
先生自身も弟に、車の鍵と財布を拾ってもらった事があると。
 だが先生は眉間に皺を寄せて、とにかく弟には不思議な何かは感じているが、それを認めてしまうと、あの声が気のせいだと思えなくて、それが怖いと言った。
その時私は、弟が誰かに怖がられるのがとても怖いと思った。
 このままでは先生にまで怖がられてしまうと考えて、その日の夜に、覚えている事のすべたてを弟に話した。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月2日 青い袖(4)

2016-04-02 20:04:32 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 4月2日 青い袖(4)



 それは実はいま、弟をイジメていたグループの七人全員が、事故や病気などで学校を休んでいるという話だった。
五人目が交通事故に遭った時点で、先生はふと気になっていたのだが、六人目が理科の実験中、顔に全治二週間の火傷を負ったと言うのだ。
 その話だけは私も知っていたので、内心いい気味だと思っていた。
弟の鼻を折った子だったからだ。
 だがその子は病院で、

「 ○○の呪いだ!」

と自分の母親に訴えたそうだ。
 まるで弟が悪いみたいに聞こえたので、私は頭にきて、

“ バカじゃない?やっぱりサイテーなヤツ!”

と心で罵った。
 そもそも最初から少し苛ついていたので、私はもう家に帰りたいと言ったが、先生の話は終わりではなかった。
同じ日の昼休みに、七人目の子が転んで怪我をしたというのだ。
 その子は弟をイジメた七人のリーダーで、先生は倒れた瞬間を見たと言った。
何もないところで突然倒れたらしく、はじめ貧血か何かだと思ったそうだ。
その子はすぐに保健室に運ばれたが、転んだ事は覚えてなくて、軽い脳しんとうという診断だった。
 私は少しゾッとしたが、やはり馬鹿馬鹿しいただの偶然だと思って、もう関係ないから、ホントに家に帰らせて欲しいと願い出た。
だが先生は、帰りは自分が車で送るので、もう少し話を聞いて欲しいと言った。
 いま思い起こせば、おそらく先生はその時相当怯えていたのだと思う。
先生は、これはイジメと無関係だが、どうしたらよいのかわからない、できれば誰にも話さないで、内緒にして欲しいと言ってから話し始めた。
 それは4日前、放課後先生と弟がインコ小屋の掃除をした時の事だった。
掃除が始まってすぐ事務に呼び出された先生は、一度事務へ行って戻ってきた時だった。
弟の隣に4~5歳の女の子が立っているのが見えたので、

“ 誰かな・・・?”

と思ったが、その女の子はパッと消えてしまったのだ。
 その時はとても驚いたが、先生は自分の見間違いだと思った。
でもその女の子は見間違いではなく、その後すぐにまた現れた。
小屋の掃除が遅くなったので、先生は弟を車で送ることにして、弟を正面玄関に待たせておいたが、戻ると弟は玄関にいなかった。
 トイレだろうと思って少し待っていると、水を流す音が聞こえた。
すると弟は戻ってきたが、弟の後ろにさっきの女の子がいたのだ。
その子はまたすぐに消えたが、同時にすぐ後ろから小さな声で、

「 許さない。」

という声がして、先生は悲鳴をあげた。











童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------