モデナへはパルマからの帰り道に立ち寄った。まずはドゥオモへ。
街の大まかな地図は持参したものの、ドゥオモまでのルートはよくわからない。そこで普段着のカジュアルな服装の女性に尋ねると、「私の家と同じ方向だから、一緒に行きましょう」と、同行してくれた。
この日はとにかく暑い。まだ5月だというのに汗がダラダラと流れる。たまたま街頭にあった温度計は37度を指していた(写真は帰りに撮ったもの。数時間後だったがそれでも34度あった)。
その道すがら「私たちの宝よ」と自慢げに話してくれた大聖堂の鐘楼=ギルランディーナ が見えたところで彼女にお礼を言ってさようならをした。
大聖堂に続く道。カラフルな傘が道路沿いに一杯吊り下げられた一種のインスタレーションに出会った。
ドゥオモ、つまり大聖堂はグランデ広場の中心にある。この街の守護聖人ジミニャーノに奉納されたロマネスク様式の建築だ。
建築家ランフランコと彫刻家ヴィルジェルモによって13世紀に完成した。
そしてギルランディーナ。大聖堂の横にすっくとそびえる鐘楼は、白大理石で造られ、88mの高さを誇る。
1310年の完成で、途中まではロマネスク様式だが、最上階と八角形の塔の部分は13~14世紀のゴシック様式になっている。
先端には青銅製の花飾り(ギルランダ)があり、そのために塔全体が親しみを込めてギルランディーナと呼ばれる。
周囲には高い建物がないため、昔からこの塔は遠方からでも見ることが出来た。エミリア地方を旅したスタンダールは
「果てなく続く地平線。西にそびえ立つモデナの塔だけがこれを見えなくさせる」と書いている。
まずは大聖堂の入口の中央扉から見て行こう。ヴィルジェルモが手掛けた浮彫がすぐ目に飛び込んでくる。
ここに4つの枠に分かれた「創世記」のエピソードが描かれている。
「左端」から見ると、まず神が土から男(アダム)を造り、「中央」アダムのあばらの骨からイヴを造る。「右」その2人は禁断の木の実を食べてしまう。
木の実にかじりつくアダムの顔。まるでわんぱく小僧みたい!
ここはカインとアベルの物語だ。神に対してカインは農作物を(右)、アベルは太った羊を(左)捧げものとして差し出した。 だが、神はアベルの羊だけを受け取る。
これに嫉妬したカインはアベルを殺してしまう。人類初の殺人だ。
この絵を見ると,アベルは棒で殴られたようだ。「右端」この結果、カインは労働と放浪の人生に追いやられてしまう。
神はノアの箱舟を造ることを命じる。「中央」ノアたちはその箱舟に乗る。「右」そして生き延びた子孫たち。
このように、文字を詠めない庶民たちにも一目でわかるように、教会の正面入口に聖書の物語を掲げるということが行われた。
ロマネスク時代の代表的彫刻とされる作品だが、かなり悲劇的な内容にもかかわらず、なかなかユーモアたっぷりの絵に見える。
正面を見上げればバラ窓も備わっている。13世紀、アンセルモが手掛けたものだ。