大聖堂を出てサンタンジェロ城に向かおう。先ほど歩いてきた道を、そのまま引き返せば城に到着する。目的は城の前にある橋の像だ。
サンタンジェロ橋には両側にズラリと天使像が並ぶ。これらの像はベルニーニの構想によって彼とローマの彫刻家たちが共同製作したものだ。
天使たちはそれぞれに何かの持ち物を抱えている。それらはキリストの受難を表す品々だ。例えばこちらは磔にされた十字架。
その十字架にキリストを打ち付けた釘。
これはキリストを突き刺した槍だ。
そして、これは磔刑の時に身に着けていた聖なる衣。
晴れた日にこれらの像を1つ1つ見て行くと、空の青を背景にした像たちが神々しいくらいに美しく輝くのを目にすることが出来る。
ベルニーニはこの10体の制作全体を統括したが、自らが制作したのは2体だけ。他の8体は当時のローマで活躍していた8人の彫刻家に委任した。
ベルニーニ本人が制作した像は、時の教皇クレメンス九世が、外にさらすのはもったいないと教会の中に保存、橋にはコピーが展示されている。
その像がこちら。スペイン広場のすぐ近くにあるサンタンドレア・デッラ・フラッテ教会に行けば本物に出会うことが出来る。INRIの銘を持つ天使像が、主祭壇の横に安置されている。
サンタンジェロ橋は、当時バチカンと市中を結ぶ唯一の道だった。そこで橋の整備を任されたベルニーニは、ここを「受難の道」とすることを構想する。巡礼者たちがこの橋を通るとき、キリストが味わった受難を、橋にある天使たちの姿を見ることで疑似体験し、心を清めてサンピエトロ大聖堂に向かうーーという通過儀礼をここに完成させた。
つまり、巡礼者たちはこの「受難の道」を通過してからバチカン地区に入り、彼らを抱きかかえるかのようなサンピエトロ広場の柱廊に迎えられ、聖堂内では巨大なバルダッキーノを通して司教座のあるカテドラペドリを参拝する。こうした巡礼の最終場面における劇的興奮を、すべてベルニーニによって造られた世界の中で体験することになった。
もし夕方にここを訪れて時間が許せば、サンタンジェロ城の屋上に上ることをお勧めする。屋上からは大聖堂の背後に沈む夕日のドラマを間近に目撃することが出来る。
そして、大聖堂のクーポラが真っ赤な夕空の中でシルエットに浮かび上がる瞬間。ぞくぞくするような興奮に包まれたことを覚えている。
晴れた日の夕方、ぜひ一度お試しを!
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