19世紀半ばのパリは、無秩序に造られた家並みと垂れ流し状態の汚水にまみれた都市だった。それを一挙に刷新しようとしたのが、ナポレオン3世の命を受けたオスマン・セーヌ県知事のパリ大改造だった。
凱旋門のあるドゴール広場を中心に大通りを星形に配置し、建物の高さをそろえ、そして1875年にはオペラ大通りの終点にランドマークとなるオペラガルニエを建設して、パリは花の都に生まれ変わった。
そのオペラ座(オペラガルニエ)を見てみよう。
天井の中央にはアポロ像。詩と音楽の神だ。
屋根の両端には巨大な黄金の像。
入口右側の彫刻はジャン・バティスト・カルボーの「ダンス」。中心にタンバリンをたたく神がいる。
中に入ってみた。正面に大階段がそびえる。高さ30m。優雅な曲線を描いて人を内部に招き入れる。
大理石の手すりに触れ、モザイク装飾で覆われた天井を見上げながら階段を一段ずつ踏みしめる瞬間、
まさに人は観客としてだけではなく、
これから展開される舞台の主役としての‟仮想興奮”をさえ、味わうことが出来てしまう場所だ。
54mの長さを持つホワイエには、シャンデリアが輝いている。
ここの天井には33枚のモザイク絵が飾られている。その華やかさは、ヴェルサイユ宮殿の鏡の間にも匹敵する特別のハレの間と言えそうだ。
階段の踊り場付近に、バレエシューズがオブジェのようになって飾られていたのが面白かった。
舞台は幅31m、奥行き32m、高さ20mの馬蹄形。
中心に吊るされるシャンデリアは6トンの重さがあるという。
座席数は約2000席。
各所に装飾が施されている。
ここの天井画を描いたのはシャガールだ。
その円形の絵の中には、実はシャガール特有の浮かぶ人達だけでなく、パリならではの風景を描き込んだ。ここにはエッフェル塔。左手に小さくパンテオンも。
凱旋門もある。
そして、ここオペラ座もちゃんと描かれていた。
私は階段好きなんで、オペラ座の階段は舞台そのものよりも憧れの場として観てしまいます。本当は無人状態の階段を見たいのですが、それはかないませんね。
19世紀半ばという時期は、ウイーンもリンクの城壁を無くして今の街が造成されましたし、イタリアは1861年がイタリアという統一国家になった時期ですよね。ヨーロッパの姿が大きく変わったわけで、そんなことを思いながら街を歩くと旅が少しだけ重層的になる感じがします。
いろいろなことを知っていると見方が変わりますね。
楽しくなります