暮れ落ちた 並木道ゆき 見つけたる トラットリアで 分け合うパスタ
くつろぎて きみ口ずさむ イマジンに 秋の日差しと 茶屋に漂う
アメリカで 聴くジョン・レノン 海のごとし民族は さびしい船である / 小島ゆかり
国道145号線から佐久市に入り141号線の平原から軽井沢に到着するしたのは、夕暮れ刻の
7時。目的の万平ホテルにチックインせずに、軽い夕食を取ろう言うことで、以前訪れた
「離山房」(『リバプールと軽井沢』)に走らせたがやはり夜はやっていないと引き返す
もののナビだけではどこを走っているのかわからず、たっぷりと暮れ落ちた並木道をとば
していると灯りに照らし出されたイタリア国旗のディスプレイを見つけ空腹を満たすこと
に。降りるなり彼女は目眩を起こしたらしく、着席するなり彼女は薬を飲む。やはり長時
間のドライブはこたえたのだ。メニューをみても細かな文字が滲み、イタリアンサラダと
ペスカトーレとアイスティーを注文。というより余裕なく面倒で、二人で分け合い空腹を
満たすことに。例によってわたしが無道さに食べ残した蟹を、もったいないじゃないかと
いい、身を解し食べろと勧める。こんなに疲れていてもそんな細かな気遣いができるのが、
女子力ということに感心する。そういえば店内はほとんど女性客なのだから。と、そんな
歌を読む。
※別館の室内(船底天井:数奇屋建築や茶室、昔の浴室などに用いられた形状で、平らな天井よ
りも部屋が広く感じたり、独特のムードを醸し出す面白い天井)
※軽井沢町の建築規制条例で三階、13メートル以下の制限があるとのこと。
チェックインするとボーイが255号室まで案内してくれた。なにか話しかけたそうだった
が実務の案内で手一杯という感じだ。翌朝のチェックアウトの刻も丁寧に送ってもらった
が、わたしたちの間には未来を暗示するなにか秘められているようなものを感じたのは、
このクラシックホテルに宿る何かがあるのかなと思ったりした。「万平ホテル」。一度は
宿泊したいと思っていたが実現できた。ジョン・レノンが1975年~79年まで毎年長期滞在
していたホテル。彼と家族が宿泊したアルプス館 128号室という。翌朝の朝食後に参観し
た資料館に彼と家族の写真などが掲示されていた。宿泊簿には、三島由起夫が1950年に文
士として記帳の自筆も見られたが、ジョンが存命ならことしで72歳ということになる。そ
う思って展示してあるピアノの鍵盤を弾いてみた。
1980年12月8日22時50分、ダゴタ・ハウス前でマーク・チャップマンに射殺される。そして、
32年の月日が経つ。いま、彼と家族がこのホテルでリゾートしていることをイメージする。
1971年、ヨーコとともにお忍びで来日したジョンは、ヨーコの両親に会った。歌舞伎座で
『隅田川』を観劇、言葉もわからないのに涙を流し俳句にも感銘を受け、「今まで読んだ
詩の中で一番美しいもの。僕の詩も俳句のように短く簡潔になっていく」と予感したが、
ジョンのロックン・ロールは英語圏の韻律に大変化をもたらしたろう。もう少し踏み込ん
で言うと、キリスト教を乗り超えて、あるいは止揚し普遍性を獲得していただろう。それ
を恐れ無意識下に阻止(反動)したのがこの事件の本質ではなかったか。現実はそれを許
さなかった、が。その流れは遅れたものの、デジタル革命(第三則:ボーダレス)は科学
技術的側面からそれを乗り越えようとしていると、そんな風に思えた。
Paul McCartney - Here Today
All Those Years Ago (1981) - George Harrison
John Lennon - Woman
John Lennon - #9 Dream (1974)
水車小屋と万水川とケショウヤナギの大木を撮影
軽井沢を後にして一路信濃路、小布施へと向かう。スケジュールを車中で相談の上決
め、小布施は二度目(「北斎から千波へ」)ということで、マロンアイスクリーム(
350円)の堪能だけに絞る。途中、デジカメを落とすというトラブル。駐車場の係員
に拾って届けて頂き事なきをえ、安曇野のスイス村、日本一の大王わさび農園へと晴
天の中央道を走る。わさび農園には映画『夢』の「水車のある村」のロケ舞台の水車
が残っていてこれが評判を呼び、団体でスケッチをしている人たちで賑わっている。
映画のストーリーでもある「旅先で、静かな川が流れる水車の村に着き、壊れた水車
を直している老人に出会い、村人たちが近代技術を拒み自然を大切にしていることに
興味を惹かれ、老人の初恋の人であった老婆の葬式が行われ、村人が良い人生を最後
まで送ったことを喜び祝い行進する」と言うもの。
写真の大王わさび農場の水車小屋から見える川と対岸のヤナギの大木。手前の流れは
万水川と大王農場の間を流れる湧水。陽射しを浴びながら散策していると、写真では
見えないが、ヤナギ(ケショウヤナギ)の花粉綿毛(柳絮)が空間一面に浮遊し見事
で、一瞬にて歌の世界に入るかのようだ。
櫂(かい)の雫も花と散る/ながめを何にたとふべき/見ずやあけぼの/露浴
びて/われにもの言ふ櫻木を/見ずや夕ぐれ手をのべて/われさしまねく青柳
を/錦をりなす長堤に/暮るればのぼるおぼろ月/げに一刻も千金の/ながめ
を何にたとふべき
滝廉太郎 『花』
春は名のみの風の寒さや/谷の鶯歌は思へど/時にあらずと声も立てず/氷解
け去り葦は角(つの)ぐむ/さては時ぞと思ふあやにく/今日もきのふも雪の
空/春と聞かねば知らでありしを/聞けば急(せ)かるる/胸の思ひを/いか
にせよとのこの頃か
吉丸一昌 『早春賦』
そうして、わさびアイスクリーム(330円)を二人で分け合い堪能し帰路につく。大変
欲張った約一千キロの旅路を楽しんだ。
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