つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

薔薇のささやきⅡ

2010-05-22 04:32:36 | ちょっとした出来事
会社の玄関に飾られた薔薇が数日経ってやや弱ってきた。薔薇を飾ってくれている
女性役員の方に、「この深紅の薔薇が枯れて捨てる時は、いただきたいのですが…」と
お願いしたら、「何なら新しいの幾つかもって来てあげましょうか」と言ってくれたのだが、
むしろ枯れかかったのがいいので、丁重に断って、いただいてきた。

ちょっと紫がかった深紅の色に魅せられたからである。いただくときに初めて知ったのだが、
この深紅の薔薇は黒薔薇のことだというのである。後で調べてみるとどうやら「黒真珠」という
和名のようだ。

一茎に2輪咲いているのだが、1輪はすでに茎からプッツリ切れていて、枯れがすすんでいた。
自宅に持ち帰り一輪ざしに2輪とも挿したが、1輪はあまりに短く切れていたので水に届かず、
そのまま乗せているだけであった。

薔薇を描くイメージの一つに、剝がれ落ちてゆくのがあるので、茎の無い花ビラを一枚一枚
剥がしてジーッと観察してみる。すると今まで見たことがなかった薔薇の蘂がくっきりと現われて
きた。やはり実物を見ると確かな手答えを感じ取れる。

もう少し元気な薔薇ではどうか…と、茎にしっかり付いているほうの花ビラを剥がすべく引っ張って
みると、なんとしっかり付いて離れないのである。こっちだっていい加減弱っているはずで、花弁の
先っぽは色が褪せているのだ。さらに引っ張ったら途中から切れてしまった。花ビラの根っこは
しっかり付いているのである。わたしはこの時、「痛い!何するの!」という叫びにも似た声を
聞いた気がして、ハッと手を引っ込めた。その時薔薇が必死で生きてるけなげさと、強い生命力を
感じたのである。

先日この薔薇から「わたしをよく見てよ」というメッセージを受け取ったのを思い出したのだが、
このことだったのかも知れないと思った。1つの花瓶に数種の薔薇が活けてあったが、一花一花
匂いが違うのである。つまり一本一本違う命が宿っているということなのだ。

きっと深紅の薔薇は、「このわたしをちゃんと見てよ」と言いたかったのしれない。
以後、毎日花瓶の水を代えてやっている。日に日に色は褪せて行くものの、1週間経った今も
元気で花ビラ一枚落とさずにいる。わたしはもはや花ビラを剥がす気は失せていた。

黒薔薇の 死してくれない 燃え残す
                        issei
      
                         
コメント
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