以前A郵便局で作品展示をさせていただいたとき、置かせていただいた感想帳に、
気に入った作品名が書かれてあり、「今度展示会などひらくときは案内をください」
と記され、住所氏名それに店の屋号らしきものが書かれてあった。その住所の店を
見つけたので1度だけお邪魔したことがある。
店の表にはエスニック料理や飲み物・デザートの案内のポップが、失礼ながら、ほとんど
中・高校の学園祭のノリのように描かれてあった。店に入るとプーンと強い
東南アジア系の香の匂いが立ち込め、異国に踏み入った感じがした。
キョロキョロと店内を見渡すと、30代とおぼしきママがいて、わたしに鋭い一瞥をくれると、
ニコリともせずメニュー表を置いて立ち去った。まるで「エスニック料理を知らない奴が何しに
来たの」と言わんばかりの態度である。確かに初めてなので、メニュー表を見てもさっぱり
わからず、戸惑ってママに質問しても、つっけんどんな返事と態度にますます戸惑って、これなら
何とか…と「タイ風焼きそば」なるものを頼んだ。
しかしその態度とは裏腹に料理は見事で、ほぼ完ぺきな味だった。わたしは食べ物を一欠けらも
残さず平らげ、「旨かったッス」と言うとやっとニッコリといい笑みを見せてくれたのだった。
わたしは自分のことは伏せたまま、ただの一見客として立ち去った。
その店が無くなっていたのだ…。ポップはすべて剥がされ、閑散とした空家になっていた。正直
「ああ…」とガックリきてしまった。多少なり縁ある方なので、応援していたのである。
なんとなくいやな予感がしていて、「がんばってよ」と前を通る度に願っていたのだ。
事の仔細は知らないが、わたしのように、一度食べただけの一見客でもこんなに惜しむのに、
常連にいたってはなおのことだろう…。それほどの味だったのだ。
老婆心ながらママに言いたいのは、あれほどの味をもっと大切にしてほしいということである。
一人でも多くの人にそれを味わせてほしいのである。「そんなのわたしの勝手でしょう」と
言われればそれまでなのだが、料理に真摯に向かっている姿勢を、客にもとってほしい
のである。食べていただく…という謙虚な気持ちの大切さも知ってほしいのである。
いずれ、またどこかで店を出すとき、あるいはすでに出しているかもしれないが、自分の料理を、
それを食べてくれるお客を尊敬し、もてなせばそれが自分に返ってくる。そういうものだと思う
のである。わたしが最後に見たあの笑顔…惜しみなく最初から見せていただきたいものである。
謙虚さは決して損はしません、わたしが保障致します。デス、ハイ。
気に入った作品名が書かれてあり、「今度展示会などひらくときは案内をください」
と記され、住所氏名それに店の屋号らしきものが書かれてあった。その住所の店を
見つけたので1度だけお邪魔したことがある。
店の表にはエスニック料理や飲み物・デザートの案内のポップが、失礼ながら、ほとんど
中・高校の学園祭のノリのように描かれてあった。店に入るとプーンと強い
東南アジア系の香の匂いが立ち込め、異国に踏み入った感じがした。
キョロキョロと店内を見渡すと、30代とおぼしきママがいて、わたしに鋭い一瞥をくれると、
ニコリともせずメニュー表を置いて立ち去った。まるで「エスニック料理を知らない奴が何しに
来たの」と言わんばかりの態度である。確かに初めてなので、メニュー表を見てもさっぱり
わからず、戸惑ってママに質問しても、つっけんどんな返事と態度にますます戸惑って、これなら
何とか…と「タイ風焼きそば」なるものを頼んだ。
しかしその態度とは裏腹に料理は見事で、ほぼ完ぺきな味だった。わたしは食べ物を一欠けらも
残さず平らげ、「旨かったッス」と言うとやっとニッコリといい笑みを見せてくれたのだった。
わたしは自分のことは伏せたまま、ただの一見客として立ち去った。
その店が無くなっていたのだ…。ポップはすべて剥がされ、閑散とした空家になっていた。正直
「ああ…」とガックリきてしまった。多少なり縁ある方なので、応援していたのである。
なんとなくいやな予感がしていて、「がんばってよ」と前を通る度に願っていたのだ。
事の仔細は知らないが、わたしのように、一度食べただけの一見客でもこんなに惜しむのに、
常連にいたってはなおのことだろう…。それほどの味だったのだ。
老婆心ながらママに言いたいのは、あれほどの味をもっと大切にしてほしいということである。
一人でも多くの人にそれを味わせてほしいのである。「そんなのわたしの勝手でしょう」と
言われればそれまでなのだが、料理に真摯に向かっている姿勢を、客にもとってほしい
のである。食べていただく…という謙虚な気持ちの大切さも知ってほしいのである。
いずれ、またどこかで店を出すとき、あるいはすでに出しているかもしれないが、自分の料理を、
それを食べてくれるお客を尊敬し、もてなせばそれが自分に返ってくる。そういうものだと思う
のである。わたしが最後に見たあの笑顔…惜しみなく最初から見せていただきたいものである。
謙虚さは決して損はしません、わたしが保障致します。デス、ハイ。