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ぽかぽか春庭「杉本博司ロストヒューマン展in東京都写真美術館」

2017-05-23 00:00:01 | エッセイ、コラム

杉本博司ロストヒューマン展ポスター

20170523
ぽかぽか春庭アート散歩>調和と崇高(3)杉本博司ロストヒューマン展in東京都写真美術館

 2016年に2度見に行った展覧会、ゴッホとゴーギャン展のほかはひとつだけ。東京都写真美術館のリニューアルオープン記念の杉本博司展を、2度見ました。9月21日第3水曜日65歳以上無料の日、ミサイルママといっしょに。10月1日都民の日、無料。ひとりでもう一度見ました。開館20周年記念&リニューアルオープン記念にふさわしい、よい展示であったと思います。




 杉本博司(194~)は、ニューヨークを拠点として活動を続けてきた写真家。出発がジオラマや蝋人形を撮影した作品であり、「時間の流れ」を写真に定着させる、といった、写真の概念を超える作品を発表しています。
 ロストヒューマン展は、写真、人形、道具など、さまざまなモノを並べることによって、滅びへと向かう人類の運命を時間の流れの中に明示しています。
 これまで写真を展示してきた写真美術館の中に、「モノ」が置かれた空間。コンセプチュアルアートとも違う、不思議な空間でした。
 2度見に行く価値のある展示だったと思います。

3階エントランスロビーは撮影許可。


 3階展示。「ロストヒューマン」展。「今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない」という杉本の文に続けて、各界の作家や画家、哲学者などが33章の文章を書いています。会場には全テキストが印刷されたパンフレットが配布されていましたが、展示といっしょに苦労してテキストを読むのが、いっそロストヒューマン気分になれます。

 古いトタン板で囲った廃墟のようにしつらえたブースに、杉本は、≪理想主義者≫≪比較宗教学者≫≪宇宙物理学者≫などのタイトルで、古美術、化石、書籍、歴史的資料、人形などを展示しています。おどろおどろした展示だったり、ばかばかしかったり、滑稽だったり。
 最先端のコンセプチュアルアートかもしれないし、江戸末期の見世物小屋の雰囲気もあって、とても面白かった。

 大阪万博太陽の塔をディスる?パロる?いやいや、リスペクトっす。


 ラブドール「アンジェ(天使)」背景にはジオラマ風景写真。人工の恋人と人工の自然。


 梵字の卒塔婆の前に置かれた人形たちがこわかった。りかちゃんやバービー。東欧だったけの民族人形など。


 フィデルカストロ肖像写真。台風だか津波だかに襲われてぼろぼろになっている。ロストヒューマン展が2016年11月13日に終了した10日後にフィデル死去。できすぎている滅亡予想。


 出口に来るときには、「そうさ、人類は滅びるっきゃないね」という気分になっていて、「どんと来い、人類滅亡!」と、もういっそさわやか晴れ晴れ。
 滅びるのは明日かもしれないと思っているところが滑稽で、実はもう昨日のうちに滅亡しているんじゃないか、と、確かに思うのです。共謀罪多数派与党の強行採決で衆院通過しても、国民はヘラヘラと「紅旗征戎非吾事」と平気でいるしね。確かに、もう亡んでいる。
 杉本博司、イイネ。

 2階展示。廃墟劇場&仏の海。
 廃業した映画館。すでに興業は終了した映画館の中で、映画フィルムを映写してもらい、その映写の灯りだけで、映画館を撮影する。廃墟となった映画館。ぼろぼろの客椅子が残されていたり、壁や天井が崩れかかっていたりする。
 映画のタイトルはあるが、長時間露光だから、スクリーンには白い画面しか写っていない。映画のタイトルは、「渚にて」や「ゴジラ」「デープインパクト」など、人類が厄災にみまわれてあたふたする映画。どうやっても人類滅亡するんだけれど、画面はただ、白い。


京都 蓮華王院本堂(通称、三十三間堂)の千手観音 


 ど~んと並んだ、千手観音。ワラワラと。雨後の筍、孵化する蟷螂。。
 こんなにワラワラいっぱいいる観音様、どなたかひとりくらいは、私を許し守ってくれるに違いない。なんていう感想を述べたら、杉本は「観客にそんな安直な気分を持たせるために撮った写真じゃない!」って、怒り出すのか。いやいや杉本は千手観音像の撮影意図を次のように述べている。
 「滅亡の33話を3階で見て、実際に滅びていく姿を2階の『廃墟劇場』で見て、裏側を見ると千体仏が待っている。救われて帰っていただくということです」

 この千手観音で救われる人類ならば、まだ滅びるまでには百年くらいはあるだろう。とりあえず、あと50年ほどは、北のおデブさんも、壁好き大統領も、核ボタン押さないでほしいな。

<つづく>

引用について。
東京都写真美術館のサイトの中に「なお、ブログやSNS、写真共有サービス等でのご掲載は、利用者の責任においてお願いいたします。当館は一切の責任を負いません」という一文が掲げられています。むろんのこと、春庭のサイトに出ている文章も写真も、春庭の責任において掲載しています。

 確信犯とは「政治的・思想的または宗教的信念に発して、それが正しい事だと確信して行う犯罪」を、刑罰覚悟で実行する人のこと。春庭には、何らの政治的宗教的信念もないので、正しいことだと確信してイケナイ事をしているのではなく。写真を撮ってはいけない、と書いてあるのに写真を撮るのはイケナイことです。

 ウォーホールの「キャンベルのスープ缶」をパロっているこの展示をコピーしようとカメラを出したら、たちまち係員にとがめられました。大犯罪者になった気分。シルクスクリーンで摺り出せば、ポップアート。芸術。コンパクトカメラを出せば犯罪。

美術手帖より引用


 ただ、公共的美術館博物館で、著作権が切れている作品については、商業利用目的出ない限り、写真撮影等は許可されるべきだ、という考えは持っています。海外美術館などで、インターネット上にデジタルアーカイブを公開していることを歓迎しています。
 日本の美術館、たとえば、埼玉県立近代美術館では「著作権が切れている作品でも、当館に作品管理権があるので、その権利によって撮影を禁止している」というところもあります。狭量です。

 このページの借り物写真は「美術手帖」などからのコピペです。引用元を明らかにするというルールのもと、非商業利用をしています。
 美術手帖編集部及び杉本博司から削除要求があった場合は、削除します。日付が入っている春庭撮影の写真、ラブドールなどは、美術手帖の同じものより、よく捕れているように思います。どなた様にも引用許可ですが、作品著作権者は杉本博司であることを確認。 
コメント (4)
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