20170826
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>家族映画、愛という名の(3)淵に立つ・永い言い訳、他
家族を描いた映画、最近の映画は、単純に「家族っていいな」みたいなストーリーは少なくなったという気がします。家族の中になんらかの欠落、喪失、そういうものがないとリアルな家族には見えないっていうほど、現実の家族も「家族はつらいよ」という要素が増えてきたのかも。以下ネタバレを含む映画の感想です。
「家族の絆」とか軽く口にできる人は、きっと幸せな人。でも、世の中は幸福な人ばかりではなく、家族が不幸の元凶になるときもある。
「淵に立つ」の家族、「永い言い訳」の家族。どちらも、とてもつらいつながりです。
「淵に立つ」脚本・監督:深田晃司 出演:浅野忠信 筒井真理子 第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞を受賞
英語タイトル「Harmonium」。ハーモニウム、別名はリードオルガン。鈴岡家の娘が練習している教会のオルガンであり、家族のハーモニー調和をも意味する。
しかし、映画は、「ささやかだけれど、それなりに平穏な家庭」が、一人の侵入者によって調和が崩れ、崩壊していくお話です。
小さな金属加工の工場を経営する利雄と、妻章江、娘の蛍10歳。そこへ利雄の旧友八坂が11年の刑期を終えて出所し、当然のように鈴岡家に住み込みで働くようになります。利雄には、八坂を迎え入れるべき理由があるのです。
初めは警戒していた章江も、八坂に急接近。章江を我が物にしようとする八坂。思いを遂げられない八坂は出ていきます。が、あとには、けがを負った蛍が残されます。八坂が蛍の怪我になんらかの関与があったと推察されますが、真実は闇の中。
蛍は脳の損傷のため、話すことも歩くこともできなくなり車椅子とベッドのほかには居場所もなく、10年が過ぎます。
利雄の工場で働きだした山上孝司(太賀)は、実は八坂の息子だったことがわかり、一家は破局へと向かいます。
川原に横たわる孝司、章江、蛍。かって川原でのピクニックで八坂、章江、利雄、蛍が並んで横たわり写真を撮った、その姿と構図はいっしょです。
外形は同じでも、中身は異なるたくさんの家族。川の字に寝そべるのも、ひとつひとつが違う文字。
「永い言い訳」原作・脚本・監督:西川美和 出演:本木雅弘 竹原ピストル
衣笠幸夫は、雪国のバス旅行へと妻を送り出した後、不倫にふける。妻が友人とともにバス事故で亡くなったあと、妻の友人家族を支えることで、欠落を埋めようとします。自分の罪悪感を薄めようとする、罪滅ぼしの気休め。本当の家族ではない存在であることを突きつけられた後に、ようやく幸夫は、妻の不在に向き合う。
「湯をわかすほどの熱い愛」脚本監督:中野量太 出演:宮沢りえ、杉咲花 オダギリジョー
双葉は、夫が家出した後、ひとりでは切り盛りできなくなった銭湯を閉め、パン屋でパートをして一人娘安澄と暮らしている。ちょっとした体調不良と思って受診した病院で、余命3ヶ月の宣告を受けた後、自分がいなくなったあとの世界を構築しようと奮闘する。イジメを受けていた娘が強くなれるよう背中を押してやり、家出中の夫が自分の子かどうかもわからなまま押しつけられて同居している女の子もひきとる。銭湯を再開して夫と安澄が暮らしていける基盤を固めたのち、ホスピスに入る。
ほんとうにあざやかな「人生集大成」で、私なんぞ、余命3ヶ月と言われても、およよと泣き言を言っている間に3ヶ月たってしまうと思います。今年見た「家族を描く」の中では一番「向日性」なのだけれど、見終わった後、「ファンタジーやねぇ」と思ってしまう。映画にリアルさだけを求めているのではないのだけれど。
たぶん、我々は、「家族のリアル」というものが、溶解していく時代に生きている。やさしい母と強い父とけなげな子ども達。そんな家族を描いたら、当然「うそっぽい」と思ってしまうような時代。現実にはそういう理想的家族だって、世の中にはいるんだろうけれど。
ま、最初から崩壊している我が家は、リアルそのもの。
リアルな私は、今週いっぱい続いた咳のために、火曜日金曜日土曜日、3回もジャズダンス練習を休んでしまいました。ひどい咳をしながら洗濯物を干し、寝たりおきたりしながらごはんを作る。これが私の夏のリアル。
<つづく>
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>家族映画、愛という名の(3)淵に立つ・永い言い訳、他
家族を描いた映画、最近の映画は、単純に「家族っていいな」みたいなストーリーは少なくなったという気がします。家族の中になんらかの欠落、喪失、そういうものがないとリアルな家族には見えないっていうほど、現実の家族も「家族はつらいよ」という要素が増えてきたのかも。以下ネタバレを含む映画の感想です。
「家族の絆」とか軽く口にできる人は、きっと幸せな人。でも、世の中は幸福な人ばかりではなく、家族が不幸の元凶になるときもある。
「淵に立つ」の家族、「永い言い訳」の家族。どちらも、とてもつらいつながりです。
「淵に立つ」脚本・監督:深田晃司 出演:浅野忠信 筒井真理子 第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞を受賞
英語タイトル「Harmonium」。ハーモニウム、別名はリードオルガン。鈴岡家の娘が練習している教会のオルガンであり、家族のハーモニー調和をも意味する。
しかし、映画は、「ささやかだけれど、それなりに平穏な家庭」が、一人の侵入者によって調和が崩れ、崩壊していくお話です。
小さな金属加工の工場を経営する利雄と、妻章江、娘の蛍10歳。そこへ利雄の旧友八坂が11年の刑期を終えて出所し、当然のように鈴岡家に住み込みで働くようになります。利雄には、八坂を迎え入れるべき理由があるのです。
初めは警戒していた章江も、八坂に急接近。章江を我が物にしようとする八坂。思いを遂げられない八坂は出ていきます。が、あとには、けがを負った蛍が残されます。八坂が蛍の怪我になんらかの関与があったと推察されますが、真実は闇の中。
蛍は脳の損傷のため、話すことも歩くこともできなくなり車椅子とベッドのほかには居場所もなく、10年が過ぎます。
利雄の工場で働きだした山上孝司(太賀)は、実は八坂の息子だったことがわかり、一家は破局へと向かいます。
川原に横たわる孝司、章江、蛍。かって川原でのピクニックで八坂、章江、利雄、蛍が並んで横たわり写真を撮った、その姿と構図はいっしょです。
外形は同じでも、中身は異なるたくさんの家族。川の字に寝そべるのも、ひとつひとつが違う文字。
「永い言い訳」原作・脚本・監督:西川美和 出演:本木雅弘 竹原ピストル
衣笠幸夫は、雪国のバス旅行へと妻を送り出した後、不倫にふける。妻が友人とともにバス事故で亡くなったあと、妻の友人家族を支えることで、欠落を埋めようとします。自分の罪悪感を薄めようとする、罪滅ぼしの気休め。本当の家族ではない存在であることを突きつけられた後に、ようやく幸夫は、妻の不在に向き合う。
「湯をわかすほどの熱い愛」脚本監督:中野量太 出演:宮沢りえ、杉咲花 オダギリジョー
双葉は、夫が家出した後、ひとりでは切り盛りできなくなった銭湯を閉め、パン屋でパートをして一人娘安澄と暮らしている。ちょっとした体調不良と思って受診した病院で、余命3ヶ月の宣告を受けた後、自分がいなくなったあとの世界を構築しようと奮闘する。イジメを受けていた娘が強くなれるよう背中を押してやり、家出中の夫が自分の子かどうかもわからなまま押しつけられて同居している女の子もひきとる。銭湯を再開して夫と安澄が暮らしていける基盤を固めたのち、ホスピスに入る。
ほんとうにあざやかな「人生集大成」で、私なんぞ、余命3ヶ月と言われても、およよと泣き言を言っている間に3ヶ月たってしまうと思います。今年見た「家族を描く」の中では一番「向日性」なのだけれど、見終わった後、「ファンタジーやねぇ」と思ってしまう。映画にリアルさだけを求めているのではないのだけれど。
たぶん、我々は、「家族のリアル」というものが、溶解していく時代に生きている。やさしい母と強い父とけなげな子ども達。そんな家族を描いたら、当然「うそっぽい」と思ってしまうような時代。現実にはそういう理想的家族だって、世の中にはいるんだろうけれど。
ま、最初から崩壊している我が家は、リアルそのもの。
リアルな私は、今週いっぱい続いた咳のために、火曜日金曜日土曜日、3回もジャズダンス練習を休んでしまいました。ひどい咳をしながら洗濯物を干し、寝たりおきたりしながらごはんを作る。これが私の夏のリアル。
<つづく>