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ぽかぽか春庭「啓蟄の労働裁量制」

2018-03-06 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180306
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記春盛り上がる(4)啓蟄の労働裁量制

 立春を季節の第1とする二十四節気の季区分では、第2の雨水につづく3番目の季節のことばが「啓蟄」です。2018年は3月6日。

 「蟄」は、虫が冬ごもりのために穴にもぐること、「啓」は、開くこと。よって啓蟄とは、「土中に隠れ閉じこもっていた虫などが、冬ごもりを終えて這い出てくること」
 中国では、よつ足ではない動物、蛇なども虫の仲間でしたから、冬の間見かけなかったものどもが土の上をうろちょろするのを見たら、冬の終わりを実感し、春気分も盛り上がってきたことでしょう。

 中国周代の官制をしるした『周礼』という書物には、「蟄始聞雷声而動」と出ていて、啓蟄のころ立春後の初雷を聞くことによって季節を知った、ということが書かれています。 

 二十四節気の4番目「春分」が祝日となってカレンダーに載っているのに比べれば、認知度は高くないけれど、たとえば、芒種とか処暑なんていう二十四節気の語句よりは浸透している気がする啓蟄。これも、春分のひとつ手前の季節のことばで、春よ来い、と待たれている気分のことばであるからいいのです。春気分を盛り上げる々の心に浸透してきたものなのでしょう。

 なじみになった季節のことば、とは言っても、このことばが人口に浸透してきたのは、明治以後のことで、江戸時代に一般の人にはなじみの薄いことばであったことは、知りませんでした。
 自分の使っていることば、カタカナ語なら近年のものとおもうけれど、漢字やひらがなの語句ならば、大昔から使われていたものと思いがちです。

 文献をあたってみるならば、「啓蟄」は、江戸初期の歳時記にも載っているのに、『近世俳句大索引』に「啓蟄」を季語として詠まれた句はひとつもないのだそうです。
 以上は、暉峻康隆の『季語事典』をぱらぱらめくっていたら、出てきた「啓蟄」の項のまとめ。 暉峻康隆先生、教室で教えを受けていた遙か昔、江戸文学について習ったような気もするのですが、当時は「女子大生亡国論」に反発していたので、まともに授業を聞かなかった覚えあり。ちゃんと聞いて勉強しておけばよかった。

  明治俳句の時代「ホトトギス」の俳人たちが季語として読み始めたのが、啓蟄流布の端緒らしい。現代では多くの人に詠まれる語になっています。

啓蟄の蟻が早引く地虫かな 高浜虚子
啓蟄の風さむけれど石は照り 加藤楸邨
啓蟄のすぐ失へる行方かな 中村汀女
啓蟄の大地月下となりしかな 大野林火
啓蟄の童女を抱く羅漢あり 山口青邨
啓蟄の夜気を感ずる小提灯 飯田蛇笏
啓蟄の庭とも畠ともつかず 安住敦
啓蟄の地の面濡らして雨一と日 稲畑汀子

 なにやら虫でも蛇でもゾロゾロとはい出てくる趣で、近代俳句では人気の啓蟄です。

 3月4日は東京21度、5日は18度まで最高気温が上がり、虫たち穴から顔をのぞかせたと思いますが、さて、5日午後からは雨、再び冬並みの気温に戻る予報。
 三寒四温とはいうけれど、高齢者には体調管理も不安定になってきてしまいます。

・啓蟄も春分もなく労働は裁量制なりぢっと手を見る 春庭

 年金抑えるために「70歳まで働ける社会」と、政府が言い出しました。はい、68歳春庭、政府の政策先取りして、残業代なしに働いております。

・啓蟄の丸の内線もほの暗き穴より出でて四谷に止まる 春庭
 アハハ、啓蟄じゃなくても、地下鉄電車丸ノ内線は四ツ谷駅では必ず穴からはい出るんですが。

<つづく>
コメント (2)
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