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ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>再録・日本語教師日誌(4)アンガウル島の日本語
春庭コラムの中、日本語教師養成講座の記録を再録しています。
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2008/05/31
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日誌>虹をかける授業(7)アンガウル島の日本語
英語を話せるから日本語教師としてやっていける、と思っているような日本語教師もかっては多かったのですが、「英語第一主義の日本語教師」なんて、これからの時代に生き残っていけません。英語圏の国で英語を全員が話せるという環境で日本語を教えるには、英語がネイティブと同じくらいに使えることは重要ですが、日本国内でさまざまな国籍の学生が混在する教室で、英語を知っていてもつかえません。日本語だけで日本語を教える直接法が授業の中心だからです。
日本語教師養成コースの学生達には「日本語を知っていると同時に、自分たちの文化アイデンティティをしっかりもっていることが大事。そのためは、日本文化のひとつとして、アイヌ文化やアイヌ語への理解をもっていてください。
「共生」とか「他文化主義」というかけ声は大きくなりましたが、まだまだ日本は閉鎖社会です。世界へ向かって開かれる日本語教師をめざしましょうね。
以上のような問題は、社会言語学のなかで、言語政策として詳しく学ぶことができますが、この日本語概論ではこれ以上詳しくは扱いません。
また、異文化交流や、自国内の文化理解についても、他の講義プログラムがありますから、受講してください。社会言語学は、標準語と方言、敬語など、社会のなかにことばがどのような様態であらわれるかを見ていきますので、興味がある人は、後期開講の「社会言語論」の授業をうけてください」と話しています。
日本語は、1億2千万人の母語話者がおり、大人数が話している言語です。話者数の多さで言ったら、世界の3000以上ある言語のなかでは、十指に入る大言語。
でも、母語話者以外の日本語を第二言語として話す人は、ごく少ない。
英語は、母語話者以外に、第二言語として話す話者が世界に10億人以上います。英語を公用語にしている国も数多い。
フランス語を母語として話している人は、8~9千万人で、日本語母語話者より少ないけれど、フランス語を公用語としている地域の話者を入れると、約4億人の話者がいます。
日本語を法律上の公用語にしているのは、ミクロネシア・パラオ共和国のなかの小さな島、人口200人足らずの「アンガウル島」だけです。しかし、たったひとつの島(州)でも、日本語を「地域で通用する言語」としてみなす地域があることはうれしいことです。
私は、太平洋地域では、西サモア、パプアニューギニアやソロモン諸島などからの留学生を担当したことがありますが、パラオ出身の学生には教えたことがありません。
パラオは、自然豊かで親日的な国。元大統領は日系のナカムラ氏でした。いつか行ってみたい国のひとつです。
じゃんぼ!の挨拶や、「に、じ」の聞き取りをしている間は、おもしろそうって思った人も、いよいよこれから、日本語学イントロダクションの授業中継をはじめるってことで「対照言語学」「言語政策論」だの「公用語」だのっていう専門用語が並びだして、眠くなってしまったかも知れません。
言語学には、音声学、音韻論、統語論、形態論、意味論、遂行論、命名論など、さまざまな研究分野があります。
個別言語学とは、「いわゆる各国語」の言語学です。「日本語学」とは、個別言語学の中の一分野です。
春庭の日本語学紹介、にほんごイントロ・コースは、「専門的に日本語学を教える」というより、「できる限り楽しく日本語の諸相を紹介して、日本語学に興味をもってもらう」というほうを優先しています。
だから、「こんな教え方では、日本語学の専門知識が身につかないではないか」という批判もあろうかと思います。
私の方針は、「日本語に興味をもつきっかけを提供し、興味を持ったら、自分で専門書を読むようになってくれればいい」ということです。
音声学も形態論も敬語論(待遇表現論)も、よい入門書がたくさん市販されているので、一冊手にとって読み終えれば、日本語のさまざまな現象が体系的にわかります。
「日本語学イントロコース」、食前のアペリティフで、七色ジュース「にじのしずく」を飲んでもらい、前菜の「公用語のはなし」がおわると、いよいよスープ、メインディッシュへと話がすすみます。
<つづく>
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>再録・日本語教師日誌(4)アンガウル島の日本語
春庭コラムの中、日本語教師養成講座の記録を再録しています。
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2008/05/31
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日誌>虹をかける授業(7)アンガウル島の日本語
英語を話せるから日本語教師としてやっていける、と思っているような日本語教師もかっては多かったのですが、「英語第一主義の日本語教師」なんて、これからの時代に生き残っていけません。英語圏の国で英語を全員が話せるという環境で日本語を教えるには、英語がネイティブと同じくらいに使えることは重要ですが、日本国内でさまざまな国籍の学生が混在する教室で、英語を知っていてもつかえません。日本語だけで日本語を教える直接法が授業の中心だからです。
日本語教師養成コースの学生達には「日本語を知っていると同時に、自分たちの文化アイデンティティをしっかりもっていることが大事。そのためは、日本文化のひとつとして、アイヌ文化やアイヌ語への理解をもっていてください。
「共生」とか「他文化主義」というかけ声は大きくなりましたが、まだまだ日本は閉鎖社会です。世界へ向かって開かれる日本語教師をめざしましょうね。
以上のような問題は、社会言語学のなかで、言語政策として詳しく学ぶことができますが、この日本語概論ではこれ以上詳しくは扱いません。
また、異文化交流や、自国内の文化理解についても、他の講義プログラムがありますから、受講してください。社会言語学は、標準語と方言、敬語など、社会のなかにことばがどのような様態であらわれるかを見ていきますので、興味がある人は、後期開講の「社会言語論」の授業をうけてください」と話しています。
日本語は、1億2千万人の母語話者がおり、大人数が話している言語です。話者数の多さで言ったら、世界の3000以上ある言語のなかでは、十指に入る大言語。
でも、母語話者以外の日本語を第二言語として話す人は、ごく少ない。
英語は、母語話者以外に、第二言語として話す話者が世界に10億人以上います。英語を公用語にしている国も数多い。
フランス語を母語として話している人は、8~9千万人で、日本語母語話者より少ないけれど、フランス語を公用語としている地域の話者を入れると、約4億人の話者がいます。
日本語を法律上の公用語にしているのは、ミクロネシア・パラオ共和国のなかの小さな島、人口200人足らずの「アンガウル島」だけです。しかし、たったひとつの島(州)でも、日本語を「地域で通用する言語」としてみなす地域があることはうれしいことです。
私は、太平洋地域では、西サモア、パプアニューギニアやソロモン諸島などからの留学生を担当したことがありますが、パラオ出身の学生には教えたことがありません。
パラオは、自然豊かで親日的な国。元大統領は日系のナカムラ氏でした。いつか行ってみたい国のひとつです。
じゃんぼ!の挨拶や、「に、じ」の聞き取りをしている間は、おもしろそうって思った人も、いよいよこれから、日本語学イントロダクションの授業中継をはじめるってことで「対照言語学」「言語政策論」だの「公用語」だのっていう専門用語が並びだして、眠くなってしまったかも知れません。
言語学には、音声学、音韻論、統語論、形態論、意味論、遂行論、命名論など、さまざまな研究分野があります。
個別言語学とは、「いわゆる各国語」の言語学です。「日本語学」とは、個別言語学の中の一分野です。
春庭の日本語学紹介、にほんごイントロ・コースは、「専門的に日本語学を教える」というより、「できる限り楽しく日本語の諸相を紹介して、日本語学に興味をもってもらう」というほうを優先しています。
だから、「こんな教え方では、日本語学の専門知識が身につかないではないか」という批判もあろうかと思います。
私の方針は、「日本語に興味をもつきっかけを提供し、興味を持ったら、自分で専門書を読むようになってくれればいい」ということです。
音声学も形態論も敬語論(待遇表現論)も、よい入門書がたくさん市販されているので、一冊手にとって読み終えれば、日本語のさまざまな現象が体系的にわかります。
「日本語学イントロコース」、食前のアペリティフで、七色ジュース「にじのしずく」を飲んでもらい、前菜の「公用語のはなし」がおわると、いよいよスープ、メインディッシュへと話がすすみます。
<つづく>