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ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩夏(2)浮世絵風景画―広重・清親・巴水 三世代の眼」展 in 町田市立国際版画美術館
7月10日に町田市立版画美術館に出かけたのは、新しい展示のオープン日は 「誰でも無料」というお知らせを見たからです。無料と半がくが大好きな春庭、これを見逃さず、娘と出かけました。今まで遠いと思っていた町田ですが、駅前から美術館行きのバスがているのも便利だし、これから新しい展示のたびに来たいかも。
江戸期の浮世絵を見る機会は数多くありましたが、小林清親や川瀬巴水など明治から昭和にかけて活躍した版画家を最近になって見るようになった娘、「浮世絵風景画―広重・清親・巴水」という次回展示のタイトル見て、「母は無料が好きだから、見に行くでしょ」と誘われました。同時開催の「浮世絵モダーン 橋口五葉と伊東深水を中心に」という展示も、伊東深水の展示はまとめて見ることがあったけれども、橋口五葉のまとまった展示をみたことがなかったので、見たかったです。
美術館の口上
浮世絵風景画―広重・清親・巴水 三世代の眼―
2021年7月10日(土)~9月12日(日)
江戸、明治、そして大正から昭和という三つの時代に、伝統木版画の技術を用い風景版画を制作した三人の絵師・画家、歌川広重(1797-1858)、小林清親(1847-1915)、川瀬巴水 (1883-1957)を紹介します。それぞれの表現を対比しながら、時代を超えて響きあう風景観や叙情性に着目。どこか懐かしい、百年にわたる日本の風景版画を旅するようにご堪能ください。
展示は撮影禁止マークがある作品以外は、撮影OK。
作品は心の目でじっくり見て、心のカメラに刻むべきという意見もわかりますが、私はあとで気に入った作品を思い出すときに、タイトルや作者を絵と対照したい方なので、撮影許可の美術館の方が気楽に見ていけます。作品目録を配っている美術館もありますが、私は、作品タイトルを見て、パッと絵柄を思い出せない雑な鑑賞しかできない目と頭なので、作品の次にタイトル作者を書いたプレートを写しておくと便利なのです。
広重が描いた江戸の町を、後代の小林清親や川瀬巴水川瀬巴水がどのように 表現しているか、とても面白い企画です。
第1章 江戸から東京
「雨の大橋」を3人3様に描いている絵を並べてあったり、亀戸天神の藤棚を3つ比べて見ることができたり、面白い展示でした。
歌川広重が描いた江戸の芝増上寺雪中ノ図(天保末期)

小林清親が描いた明治の増上寺(1984明治17)

川瀬巴水が描いた大正の増上寺(1925大正14)
第2章 歌川広重-江戸の名所絵
東海道五拾三次のうち30か所の絵が展示してありました。
歌川広重「東海道五拾三次之内 が 庄野 白雨」天保7年(1836)頃、町田市立国際版画美術館蔵

第3章 小林清親-明治の光線画
清親は江戸浮世絵の伝統に洋画の光の表現をとりいれ、「光線画」と名付けられた清親流の版画を制作しました。
江戸時代にはなかった乗り物を、明治の新しい風景として光の明暗の中に描きだしました。
本町通夜雪1880(明治13)

小林清親「高輪牛町朧月」1879(明治12)

神田川夕景

両国花火 1884(明治17)(田口米治補筆)

江戸の浮世絵に比べて、光の表現がすばらしいと思います。
江戸の浮世絵が西洋の絵に影響を与え、明治の絵は版画も油絵も洋画から多くの技法を取り入れました。
第4章 川瀬巴水-大正・昭和の新版画

大正・昭和の風景を描いたのは川瀬巴水の版画です。
深川上の橋1920(大正9)

娘が展示の中で、一番気に入った版画は、巴水の「馬込の月」です。
馬込の月1930(昭和12)

巴水の版画によって、大正・昭和の風景が残されました。むろん油絵 や水彩でも描かれてきましたが、一般の人にも買える価格の版画によって広く「風景」の感じ方」知らせたとも思います。風景というものが、画家でもない私たちの楽しみとなったのは、 志賀重昂『日本風景論』らの高等な文章によるというよりも、雑誌などに掲載された版画によるところが大きかったのではないかと、今風景版画を見て思いました。

<つづく>