2021026
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>2021日本語学校夏(8)口頭表現発表会
昨年11月に来日し、2週間のホテル待機を経て、12月7日に授業を開始した
(2021年4月入校予定だったが、8か月も遅れて来日)3期生(2021年10月入学)。
ゼロスタート組と初級前半終了組みに分かれて日本語学習をスタートさせました。
初球前半を終了したと認定され、初級後半からのスタートした学生と言っても、初級前半は、2020年夏のコロナで来日不可の間にオンライン授業で学んだ学生たちなので、文法知識は自学自習と合わせてまあまあ理解しているのですが、日本社会で通じるような日本語発話はほとんどできない状態でのスタートでした。
コンビニへ行っても、店員が客に何を言っているのかまったくわからず、何でも「はい」と答えていたという笑い話を作文に書いた学生もいます。
店員「お弁当、温めますか」学生「はい」。これはなんとかOK。「お箸はなんぜんおつけしますか」「はい」。「あの、おはし、いくついりますか」「はい」。「あの、おはしいらないんですか」「はい」。店員あきれ顔で「わかりました」
という具合。来日当初は、買い物にも不自由な数ヶ月でした。
7ヶ月たって、ようやく買い物もなんとかできるようになってきました。教師の指導がいいから?いえいえ、アルバイトに出かけた先で、日本人パートさんたちが、親切にいろいろ教えてくれたおかげも大きいと、学生は作文に書きました。「日本のしゃいんは、みなしんせつです。」
教科書の試験をしてみると、文法理解力は大学入試大学院入試に備えて勉強ひとすじの学生のほうがいい点数をとるのは当然でしょう。しかし、日本社会への適応力や発話力は、アルバイトで必死に学費生活費を稼いでいる学生のほうが勝っていることも多い。
夏休み前に期末試験を実施しました。思ったような成績がとれなかった学生も。どの学生もこれまで学んだ日本語についてある程度の「達成感」を持たせて夏休みにしたいと、夏休み前、授業最終日は「口頭表現発表会」ということにしました。これまでに授業で書いた作文を自分でアレンジし、ネットなどから作文に関連した画像を選んでモニターに映し、表現力の足りない分を画像で補います。
「ベトナムの古い建物」の発表では、観光名所にもなっているお寺の写真、「ネパールのたべもの」では、ネパールで大人気のおやつセルロティ(米粉の揚げドーナツ)の紹介など。それぞれのお国自慢もかねて、できるだけ各人の発表に同じテーマが重なならないように作文をピックアップして、発表会まで「作文清書」「口頭表現練習」とすすみました。
まず中国人は、自分が書いた作文が読めない。中国人の強みは、日本語中国語共通の意味を持つ熟語なら、ほぼ意味が通じ、苦労せずに熟語を理解できること。たとえば「必要」は中国語でも同じ「必要」。なかなか日本語の音読み「ヒツヨウ」が覚えられない学生は、発音は「Bìyào」のままでも、読解のとき意味は通じる。 「成績」「玩具」「管理人」「市場調査」など、少し漢字字形が違う場合でも、意味はわかる。
そこで、作文には中国読みのまま理解して作文に書いてしまって、自分で書いたのに、日本語の音読み訓読みができなず、「新聞」と書いて「シンウェン」と読んでしまう。「法律」を「Fǎlǜ」と読んでしまう。
ほとんどをひらがなで書いたネパールの学生のほうが、すらすら読めたりするのです。まずは、全部の漢字にふりがなをふらせることから始めました。漢字学習の復習です。
発表会当日。みな真剣に日本語表現に取り組みました。


発表後、先生方が入賞者をだれにするか協議している間、ハル先生は夏休み中の諸注意などを述べて時間稼ぎ。「コロナが増えているから、遊びに出るな」と、学生には注意。ハルせんせは、もうワクチン2回目打ったからいいんだけどね、と自分に甘い先生です。

上手に発表できた学生もいたし、途中でつかえてしまった学生もいました。「原稿を見ずにスピーチし、忘れたときだけ原稿に目を落とす」という注意をしていたのを守って発表していたのですが、途中で次のことばを忘れた時、原稿に目を落としても、どこに書いてあるかわからなくなったのです。
ともあれ、7か月の日本語学習の成果を発表できて、各学生は大いに達成感を感じたようです。
学生たちも先生も、満足して夏休みに突入です。学生は8月1日~23日の3週間の夏休み。教職員の夏休みは8月10~13日の4日間だけ。でも、土日と山の日を加えると9日間の夏休みなります。
7日8日は、テレビで五輪観戦。「これさ、五輪終わったらぜったいコロナ増えてるね」と言いながらの応援。
9日から15日まで、東京は雨がちでしたが、あちこち美術館巡りをしてのんびりできました。雨の日の美術館、私と娘のほかは観覧者も少なく、ゆっくり落ち着いて観覧できました。大雨に被害にあったり、コロナ感染者が増えたりしている中の夏休み遊覧は申し訳ない気もありましたが、これからも働き続ける鋭気を養うことができました。
<つづく>